■城塞

■作:安部公房,演出:上村聡史,出演:山西惇,椿真由美,松岡依都美,たかお鷹,辻萬長
■新国立劇場・小劇場,2017.4.13-30
■牢獄のような薄汚い部屋は両側の壁が遠近法で造られていて安定感ある砦のようにみえる。 そして奥窓の赤いカーテンへ目が落ちて行きます。
男は男の父が朝鮮脱出劇をなぜ演じて来たのか明快に応えます。 戦争と企業の関係、そこから見えてくる国民の戦争の立ち位置をです。 男の妻や踊り子も男の裏を暴き出す。 謎は一つも無い。 昨年観た眞鍋卓嗣演出と思わず比較してしまいました。 面白さの質が違うのです。 今回ここまでハッキリ言い切っているのは社会に余裕が無くなっているからでしょう。
50年代のSF、「砂の女」から始まる衝撃の60年代作品、70年代「箱男」から「方舟さくら丸」の80年代中頃までのヒット小説を面白く読んだ時期があったが、「城塞」の二公演をみて安部公房が大きく一回転して始まりに戻ってしまったように感じる。 「終わりの始まり」の一つの形かもしれません。
*NNTTドラマ2016シーズン作品
*劇場、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007980.html