投稿

11月, 2021の投稿を表示しています

■DANCE to the Future 2021 Selection ダンス・トゥ・ザ・フューチャー

■監督:吉田都,アドヴァイザー:遠藤康行,振付:木村優里,木下嘉人,高橋一輝,柴山紗帆ほか,貝川鐵夫,上島雪夫,出演:新国立劇場バレエ団 ■新国立劇場.中劇場,2021.11.27-28 ■7作品で構成されている。 2011年再演の「ナット・キング・コール組曲」を除いた6作品の中で気に入ったのは下記の2点。 一つは「コロンバイン」(高橋一輝振付)。 3組のペアが登場しバレエ、ダンス、パフォーマンスを混ぜコミカルな動きも取り入れている。 少し荒いところもあったが・・。 衣装は昭和時代の若者風で背景のボヤケた花模様や音楽がレトロ感を漂わせている。 タイトルは植物のオダマキを指らしい。 アメリカ合衆国の国花でもある。 「アメリカン・グラフィティ」を思い出してしまった。 過去の記憶が次々とやって来て舞台を想像で広げることができた。 二つめは「神秘的な障壁」(貝川鐵夫振付)。 天女のような姿のダンサーが一人踊る作品。 タイトルの障壁とは逆に、自然の中を自由に滑らかに飛び回る気持ち良さがある。 音楽にのったリズムも心地よい。 作品の多くは断片を抜き出したような舞台が多く中途半端な感が否めない。 照明が暗くなり(カーテンコールの)拍手のあと再び明るくなって続きを踊る作品も幾つかあった。 納得ができる終わり方が必要である。 観客の拍手も早すぎる。 義務義理に縛られ過ぎているからだ。 余韻を楽しむこともできない。 *NNTTダンス2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dtf/ *「ブログ検索」に入れる語句は、dance to the future

■ニュルンベルクのマイスタージンガー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:大野和士,演出:イェンス・ダニエル・ヘルツォーク,出演:トーマス・ヨハネス・マイヤー,アドリアン・エレート,林正子ほか,演奏:東京都交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2021.11.18-12.1 ■場内は・・満席に近いかな? 昨年の中止の反動もありそう。 開幕が14時で終了は20時。 関係者の体力維持は大変ね。 カーテンコールの指揮者をみてもそれが分かった。 作品を劇中劇に仕立てたらしい。 舞台上には客席もみえるから劇場中劇場の構造なの。 でもその効果は薄かった。 劇場中劇場はなんとか保ったが、劇中劇は物語が混ざりあい一つにみえてしまったからよ。 二つの劇の間を行き来する驚きがやって来なかった。 そして、ザックスの仕事場や事務室はあまりにもモノに溢れていたわね。 彼の世界は修飾し過ぎで身動きが取れない。 でも彼はヴァルターが新しい世界の人間だと確信してエーフェへの愛を諦める。 オチはヴァルターが自身のマイスター肖像画を破り捨てエーファと退場する終幕。 これは古い殻を破ろうとするザックスより過激だわ。 演出家の意図が現れていた。 解説的舞台に陥る可能性が大きい作品だけど今回はこれにハマってしまったかな? 躍動感がなかった。 劇場中劇場のマイスターやコロスの動きが煩雑で骨太のワーグナーと合わない。 ひと塊の群衆に括れない。 字幕の詩の説明が本格的でリズムに乗れない。 演出家の考え過ぎよ。 3幕、結婚の承認とダーヴィットの職人昇進の4場からやっと楽しくみることができたけど。 歌唱では若さを発揮していたダーヴィットが前半目立っていた。 ザックス、ボーグナー、ヴァルター、ベックメッサーは無難に熟していた。 舞台上に作られた舞台での歌唱は減衰しているように聞こえる。 舞台の奥と前との差が大きい。 劇場が広いから? エーファは存在感を増せばより華やかになったかしら? ワーグナーは緊張感を維持して観ないとつまらない。 その緊張感が途中で固まってしまった舞台だった。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/diemeistersingervonnurnberg/

■桜の園

■作:アントン・チェーホフ,演出:ダニエル・ジャンヌトー,ドラマツルギー:ママール・ベンラヌー,出演:鈴木陽代,布施安寿香,ソレーヌ・アルベル他,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2021.11.13-12.12 ■役者のマスク姿を見たとたん2月の「ハムレット」を思い出してしまった。 顔半分の表情は諦めるしかない。 それにしても変わった舞台です。 暗みがかった何もない舞台、背景に雲を映し出し、遠方に雷光も、ときどき鳥が飛んでいくのがみえる・・。 この暗さはマスクを意識させない? そして役者の動きと喋り方に間(マ)を効かせ独特な存在感を作り出している。 どこか近未来的ですね。 私の好みです。 しかも舞台の下に字幕があり目の動きが楽に感じる。 横壁は字幕を見るときに舞台から目が離れてしまう。 中央下を標準にして欲しい。 でも舞台を一段高くして距離を取ったので可能になったのでしょう。 コロナ予防にもなり一石二鳥ですね。 今回も神西清訳を読んでから静岡に向かいました。 このため台詞は既知として耳に入る。 しかしロパーピンとワーリャの破談は胸に迫ってこなかった。 当時の階級を意識した舞台だったからでしょう。 帰りの新幹線内で安達紀子の解説を読んで分かりました。 ロパーピンとラネーフスカヤにあった階級の 深い溝がそのままワーリャに続いていたということですね。 3年前に演出家の「ガラスの動物園」を観ていますが今回のほうが完成度が高い。  それにしてもチェーホフは本より舞台が何故こんなにも面白いのか? マスクがなければ言うことなしでした。 *劇場、 https://spac.or.jp/au2021-sp2022/thecherryorchard_shizuoka

■十一月歌舞伎「一谷嫩軍記」

*「一谷嫩軍記 いちのたにふたばぐんき」から序幕「御影浜浜辺の場」,二幕目「生田森熊谷陣屋の場」を観る。 ■作:並木宗輔,出演:中村芝翫,中村錦之助,中村松江ほか ■国立劇場・大劇場,2021.11.2-25 ■「熊谷陣屋」の演出・演技には芝翫型と団十郎型がある。 今回は上演機会が少ない前者らしい。 気にしないでみていたが、ダイナミックな感が一段とある。 御影浜から始まる舞台は弥陀六が物語をサンドイッチにしてまとめている印象が強い。 弥陀六役鴈治郎の演技も平家側の緊張感が出ていた。 ところで敦盛の存在を感じさせる舞台だが能「敦盛」にはご無沙汰している。 舞台をみながら思い出してしまった。 好きな作品だが長らく観ていない。 能や歌舞伎へ再び接近しだしたのでスケジュールに入れたい。 *国立劇場開場55記念作品 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2021/3110225.html?lan=j

■The New Gospel 新福音書

■監督:ミラ・ロウ,出演:イヴァン・サニェ,パパ・ラティア・フェイ,サミュエル・ジェイコブス他 ■vimeo・配信,2021.11.13-28 ■東京芸術祭4本目の配信を観る。 舞台を撮影した映像ではなく映画として作られていました。 ・・アフリカからイタリアへやってきた移民労働者の政治活動をドキュメントした内容のようです(?) イエス・キリストを主人公とした映画の作成過程を映しているようにもみえる? 役者イエスは活動家らしい? この映画はパゾリーニ監督「奇跡の丘」に似ている? なんと本物の「奇跡の丘」の断片まで挿入してある! イタリア市民と移民たちに取り囲まれながら、最後の晩餐、ペテロの裏切り、そしてイエスの磔へと進んでいく・・。 複雑な構造を持っています。 これらが溶け合い一つの流れになっていく。 現代の移民とイエスの時代が重なって立ち現れてくる。 革命家イエスはいつの時代にも我々の隣にいる。 久しぶりに骨のある映画に出会いました。 *東京芸術祭2021参加作品 *芸術祭、 https://tokyo-festival.jp/2021/program/newgospel/

■更地

■作:太田省吾,演出・美術:杉原邦生,出演:濱田龍臣,南沢奈央,カンパニ-:KUNIO ■世田谷パブリックシアター,2021.11.7-14 ■日常の些細な喜怒哀楽を積み重ねながら・・、いつしか振り返るとそこに人生の幸せが確かにあったと思える。 更地の舞台に日常を運び入れて過去を語り始める男と女・・。 でも二人称の経験は幻想だったかもしれない? 違和感があったのは二人が若すぎるからでしょう。 振り返る余裕は無い。 でも乾いた舞台のためか若さを越えて人生のカラッとした染み染み感は伝わってきました。 大きな布を舞台に覆うのは人生を一新させる為でしょうか? 「なにもかも、なくしてみる」。 満点の星空もです。 日常を詩にしたような、賑やかさもある、舞台でした。 記録をひっくり返したら1996年に藤沢市民劇場で観ていました。 でも記憶がまったく無い。 出演は岸田今日子と瀬川哲也で当時はたぶん60代。 今日の舞台も歳が過ぎれば忘れてしまっているでしょう。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202111sarachi.html

■能楽堂十一月「無布施経」「忠度」

*国立能楽堂十一月定例公演の下記□2作品を観る。 □狂言・無布施経 ふせないきょう■出演:小笠原由祠,野村万蔵(和泉流) □能・忠度 ただのり■出演:塩津哲生,殿田謙吉,大日方寛ほか(喜多流) ■国立能楽堂,2021.11.10 ■「忠度自身の行動に敬語が多く用いられている・・」と天野文雄の著にあるが舞台上にその理由がみえる。 忠度は一ノ谷で六弥太に首を落とされるが、そこでシテ忠度に六弥太が乗り移ったかのようになって死んだ忠度を実検する。 つまり一人二役を演じているからである。 それも混ざり合ったような二役になっている。 六弥太が短冊を確認した後「行き暮れて・・」を詠みながらぼやけていくからだ。 そして何故に忠度は幽霊として現れたのか? それは藤原俊成に仕えていた僧に会えて忠度は単純に懐かしさが抑えられなかったのだと思う。 千載集に「詠み人知らず」として採られたからではない。 それは謡の抑揚から分かる。 詞章の上では理解していたが舞台をみて身体的に納得した。 能や歌舞伎は感動や疑問の箇所がいつも微妙に替わる。 それは謡・舞・囃子の毎次の差異からくる。 *公演チラシ(表)、 https://www.ntj.jac.go.jp/assets/images/02_koen/noh/2021/R0311_omo.jpg *同(裏)、 https://www.ntj.jac.go.jp/assets/images/02_koen/noh/2021/R0311_ura.jpg

■カルメン

■作曲:ジョルジョ・ビゼー,指揮:大野和士,演出:アレックス・オリエ,出演:ステファニー・ドゥストラック,村上敏明,アレクサンドル・ドゥハメル,砂川涼子ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■OperaVision・配信,2021.10.18-  2022.1.18 (新国立劇場,2021.7.8収録) ■カルメン役ステファニーは適役ね。 彼女が出演するから観ることにしたのは正解だった。 ドン・ホセの村上敏明、ミカエラ役砂川涼子も存在感があったわよ。 エスカミーリョはもう少しハリが欲しい。 警官がたくさん登場して「事件でもあったのかしら?」という雰囲気の舞台。 前半のジプシー周辺は昭和のバーやクラブのようでレトロな感じがする。 彼らをヤクザに見立てたのかしら? でも後半の工事現場は盛り上がらないわね。 特にカルメンが殺される場面は索漠としている。 この劇場が持っている希薄な空間がそうさせたのかもしれない。 演出の狙いかもね。 ところでカルメンや女性たちの入墨がマジックで描いたようで安っぽい。 ここは入墨より衣装などで修飾したほうが映えたかな? それにカード占いの女性陣のトレーナー姿も場違いにみえ、ドン・ホセのスーツも地味過ぎる。 衣装はまとまっていなかった。 演奏と歌唱で勝負した舞台だった。 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/news/detail/6_021138.html

■廻る礎

■脚本・演出:中村ノブアキ,出演:谷仲恵輔,福田真夕,宮越麻里杏ほか,劇団:JACROW ■座高円寺,2021.114.11 ■吉田茂の回顧録のような内容だった。 十数人のキャストには、鳩山一郎、片山哲、芦田均、岸信介、山口シズエ、田中角栄、園田直、池田勇人、佐藤栄作など当時の政治家がズラリと並び、吉田茂率いる自由党の活躍で新憲法を軌道に乗せるため戦後からサンフランシスコ講和条約までを描く。 特に天皇戦争責任、芦田修正、警察予備隊などの節目が印象に残る。 そして憲法護持と改正の垂れ幕が下り終幕となる。 日本の民主主義の礎を腐らしている要因は天皇・皇室の位置付けにある。 憲法改正ならば一条から八条の廃止つまり天皇・皇室を解体すべきである。 舞台でも天皇の戦争責任は通底に響いていたが政治家は触れたがらない、GHQはそれを利用したが。 八条迄と九条は表裏の関係として作られている。 九条を骨抜きにするなら八条迄を同時に廃止する。 これが改正の必要条件だろう。 初めて観る劇団だ。 客席を見渡すと・・、40代から60代男性が6割を占める。 劇団のHPをみると・・、「大人が楽しめる小劇場」とある。 舞台幅がある劇場の特徴を巧く使ってのスピーディーな展開で、途中ゆるむことなく最後まで走り切った舞台だった。 *劇場、 https://za-koenji.jp/detail/index.php?id=2544

■歌舞伎座十月「天竺徳兵衛新噺」「俄獅子」

*10月大歌舞伎第一部の2作品(下記□)をWEB経由で観る。 ■MIRAIL・配信,2021.10.30-11.19(歌舞伎座, 2021.10収録) □天竺徳兵衛新噺,小平次外伝 てんじくとくべえいまようばなし ■作:四世鶴屋南北(「彩入御伽草」より),出演:市川猿之助,坂東巳之助,中村米吉ほか ■小平次の女房おとわをよく見ると猿之助に似ている!?、・・配役リストを開くと一人二役だった。 夫婦を一人で演ずるとはさすが猿之助。 しかも亭主を惨たらしく殺してしまう女房おとわの恐ろしさが出ている。 小平次は幽霊になっても女房との早替りは尋常ではない。 替わるのがいつもより0.2秒も速い。 まさか映像編集ではないと思うが。 他作品ではこれほど速くない。 加えてこの作品はセックス&バイオレンス系に近い。 江戸時代の日常の延長としての性と暴力が描かれている。 これらを1時間に詰めているからスピード感ある娯楽作品になっている。 尾形十郎役の尾上松也が悪漢を成敗し幕が下りるのも後味が良い。 □俄獅子 にわかじし ■出演:尾上松也,坂東新吾,市川笑也 ■「小平次伝」では脇役だった尾上松也が鳶頭となり芸者と楽しく踊る舞台だ。 手獅子や「おかめ」「ひょっとこ」の面などを持ち出す。 これは「吉原俄」と言ってよいのかな? 吉原を描いたしゃれた歌詞だが字幕を入れて欲しい。 *歌舞伎座、 https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/728

■フタマツヅキ

■演出:横山拓也,出演:モロ師岡,杉田雷麟,清水直子ほか,劇団:iaku ■シアタートラム,2021.10.28-11.7 ■父子の確執が激しい芝居です。 ここまでいくのは珍しい。 その前に息子は家を出る。 この舞台も息子が家を出ることで確執が解けた。 これしか方法が無い。 確執の原因が母にあると考えたが結局は分からなかった。 舞台の時間が二重に動いていたのが見えなかった。 父の克(すぐる)がギャラリーをクビになった場面で過去と現在の両夫婦の名前が一致していることに気が付きました。 嬉しい驚きです。 この並行して進む時間が鹿野夫婦の人生を浮かび上がらせてくる。 二人の結婚から息子が離れていく間の30年という年月をです。 妻雅子(まさこ)は夫に尽くしてきたが彼はそのことに疲れ切ってしまった。 「家族とは単なる入れ物だ」「己自身が好きなように生きろ」。 どちらも疲れた言葉です。 二人の人生を初めさせ、人生を壊し、人生を再生させる要因が夫の職業(落語家)だったのも驚きでした。 職業は人生を左右させますが、主役を人生にさせる職にしたいものです。 二人は苦闘の末にこれを獲得した。 感無量です。 ところで舞台に門のような額縁が作られていた。 これは何なのでしょうか? *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202110iaku.html

■Learning from the Future  ■「映像のパフォーマンス」オンラインディスカッション

□Learning from the Future ■振付:コレット・サドラー,出演:リア・マロイエヴィッチ ■vimeo・配信,2021.10.29-11.8(イギリス,2019) ■東京芸術祭3本目の映像作品です。 舞台は暗く中央に直方体らしきものが置いてある。 「宇宙の旅」モノリスですか? 一人のダンサーがその回りを踊り続ける。 ダンサーの表情や衣装そして頭部を動かさず胴体や手足を等速度で動かし歩く姿はアンドロイドを思い出させます。 加速度は生物的ですが等速度は無生物に近づいていく。 幾何学的振付が入ると尚更です。  直方体のモノリスが効果を発揮していますね。 まるでモノリスが主でダンサーのアンドロイドが従のようにもみえる。 この主客逆転が交互にやってくる。 面白い舞台でした。 *東京芸術祭2021参加作品 *東京芸術祭、 https://tokyo-festival.jp/2021/program/learning/ □「映像のパフォーマンス」 ■司会:長嶋確,,出演:岡田利規(演劇),竹下暁子(パフォーマンス),深沢晃司(映画) ■東京芸術祭・配信,2021.10.29-11.30 ■生舞台とそれを撮影した映像は何が違うのか? これを議論しています。  出席者の印象に残った言葉を列挙すると・・。 カメラのファインダーに見える像が全てである。 役者が自分自身を見ることができる。 目の機能はカメラと比較できないくら優秀だ。 カメラは観客だ。 ダンスは鏡をみて作成するから映像で見ても違和感が少ない。 ・・等々。 感動した芝居を映像で見たらツマラナカッタ、それは何故か? 答えは3次元舞台空間の役者達の表情や動きの全てを2次元カメラは捕えることができないから。 生舞台では空間全てに張めぐされた関係性を観客は一瞬で掴める。 ほんの些細な視線のズレなどをです。 目が脳と合体している為でしょう。 また舞台は空間、映像は時間の芸術とも言える。 <場所>という言葉が議論になったが、これは空間と解釈しました。 6月のブログ「室伏鴻」で写真家金村修は「なぜ室伏鴻のダンス映像は新鮮なのか?」を問うています。 室伏は自身の肉体を記号化・物質化できる力がある。 映像は生命と非生命を区別しない特長がある。 室伏はこれに合致するから新鮮にみえる。 このことも思い出してしまいました

■シャルリー、茶色の朝

■作:フランク・パヴロフ,作曲:ブルーノ・ジネール,演出:クリスチャン・レッツ,出演:アデール・カルリエ,アンサンブルK ■神奈川県音楽堂,2021.10.30-31 ■プログラムは・・、 第1部アンサンブルKによる室内楽コンサート 第2部フランク・パヴロフ作「茶色の朝」にもとづくポケット・オペラ 第3部作曲家ブルーノ・ジネールを囲むクロストーク 先ずはクルト・ヴァイルに始まりパウル・デッサウ「ゲルニカ」で終わる第一部はそのまま第2部へ繋がっていくの。 「茶色い朝」では犬も猫も服も全てが茶色に染まっていく・・。 「1984年」や「アンネの日記」を思い浮かべながら観てしまった。 内容がシンプルなため第1部の<前奏曲>が効いているわね。 近未来の話だけど20世紀の狂乱の時代が入り混じり舞台に深みがでたわよ。 第3部はアフタートーク。 やなぎみわの名前が載っていたので楽しみにしていたが今日は高橋哲哉だった。 ブルーノ・ジネールはオンライン参加。 以下よりトーク内容。 質問(高橋)・・「ゲルニカ」を発見した経緯は? 答(ジネール)・・作品の消滅を避けるため採用した。 我が家族がスペインから亡命してきた過去もある。 問・・「セーヌ哀歌」「ユーカリ」を選択した理由は? 答・・フランスの反ユダヤ主義はドイツより酷かったから。 クルトは2年後米国へ逃げた。 問・・近衛秀麿を知っているか? リサーチをお願いしたい。 答・・知らない。 調べてみる。 問・・本では登場人物は男性だが? 答・・異化効果を出すため女性にした。 しかし重要なことではない。 問・・作者パヴロフの評価は? 答・・好奇心を持った人だ。 翻訳本がカラフルだったのを誉めていた。 問・・フランスはソフトな極右が伸びているが? 答・・ヴィシー政権やアルジェリア戦争をみて分かる通り昔から一定数はいる。 フランスは二面性がある。 問・・日本でも学術会議任命や愛知トリエンナーレで問題が起きている。 ソフトな極右は注意してくれ。 答・・芸術は最期の砦になる。 以上のような内容だったかしら? 欧州極右が増えた一つに難民問題があると思う。 解決できないと混乱が続くはずよ。 そして極右はいつの時代でもフレンドリーに近づいてくる。 よーく見極めないとね。 ところでこの劇場は舞台両脇に時計が掛けてあるの。 目障りだわ。 次回までに

■能楽堂十月「頼政」「飛越」「三井寺」

*国立能楽堂十月特別公演の下記□4作品を観る。 □能・頼政■出演:浅井文義,飯冨雅介,井上松次郎ほか(観世流) □狂言・飛越■出演:佐藤友彦,今枝郁雄(和泉流) □一調・遊行柳■出演:山本順之(謡),三島元太郎(太鼓) □能・三井寺■出演:高橋忍,中村優人,宝生欣哉(金春流) ■国立能楽堂,2021.10.30 ■床几に腰かけたままの頼政が交える所作は時折激しくなる。 面「頼政」も目をカッと見開いていて感情が高ぶっているのがわかる。 終幕、床几から立ち上がり刀を捨て次に扇を捨て消えていく。 そういえば前ジテは杖を捨てて立ち去っていたことを思い出す。 「三井寺」を観ながら「頼政」のことを考えてしまった。 「三井寺」のざわつく感じは登場人物の多さからきている。 しかも、まとまっていない。 そして生身の子役が現実の母子の姿に近づける。 「頼政」は頼政の表層でざわめく。 辺りは静かだ。 床几にかけたままの姿もそれを抑制したのだろう。 「頼政」は後味が残らない。 唯一、枯れはてた感覚だけがやってくる。 *公演チラシ(表)、 https://www.ntj.jac.go.jp/assets/images/02_koen/noh/2021/R0310_omo.jpg *公演チラシ(裏)、 https://www.ntj.jac.go.jp/assets/images/02_koen/noh/2021/R0310_ura.jpg