■能楽堂十一月「無布施経」「忠度」

*国立能楽堂十一月定例公演の下記□2作品を観る。
□狂言・無布施経 ふせないきょう■出演:小笠原由祠,野村万蔵(和泉流)
□能・忠度 ただのり■出演:塩津哲生,殿田謙吉,大日方寛ほか(喜多流)
■国立能楽堂,2021.11.10
■「忠度自身の行動に敬語が多く用いられている・・」と天野文雄の著にあるが舞台上にその理由がみえる。 忠度は一ノ谷で六弥太に首を落とされるが、そこでシテ忠度に六弥太が乗り移ったかのようになって死んだ忠度を実検する。 つまり一人二役を演じているからである。 それも混ざり合ったような二役になっている。 六弥太が短冊を確認した後「行き暮れて・・」を詠みながらぼやけていくからだ。
そして何故に忠度は幽霊として現れたのか? それは藤原俊成に仕えていた僧に会えて忠度は単純に懐かしさが抑えられなかったのだと思う。 千載集に「詠み人知らず」として採られたからではない。 それは謡の抑揚から分かる。
詞章の上では理解していたが舞台をみて身体的に納得した。 能や歌舞伎は感動や疑問の箇所がいつも微妙に替わる。 それは謡・舞・囃子の毎次の差異からくる。