■ニュルンベルクのマイスタージンガー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:大野和士,演出:イェンス・ダニエル・ヘルツォーク,出演:トーマス・ヨハネス・マイヤー,アドリアン・エレート,林正子ほか,演奏:東京都交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2021.11.18-12.1
■場内は・・満席に近いかな? 昨年の中止の反動もありそう。 開幕が14時で終了は20時。 関係者の体力維持は大変ね。 カーテンコールの指揮者をみてもそれが分かった。
作品を劇中劇に仕立てたらしい。 舞台上には客席もみえるから劇場中劇場の構造なの。 でもその効果は薄かった。 劇場中劇場はなんとか保ったが、劇中劇は物語が混ざりあい一つにみえてしまったからよ。 二つの劇の間を行き来する驚きがやって来なかった。
そして、ザックスの仕事場や事務室はあまりにもモノに溢れていたわね。 彼の世界は修飾し過ぎで身動きが取れない。 でも彼はヴァルターが新しい世界の人間だと確信してエーフェへの愛を諦める。 オチはヴァルターが自身のマイスター肖像画を破り捨てエーファと退場する終幕。 これは古い殻を破ろうとするザックスより過激だわ。 演出家の意図が現れていた。
解説的舞台に陥る可能性が大きい作品だけど今回はこれにハマってしまったかな? 躍動感がなかった。 劇場中劇場のマイスターやコロスの動きが煩雑で骨太のワーグナーと合わない。 ひと塊の群衆に括れない。 字幕の詩の説明が本格的でリズムに乗れない。 演出家の考え過ぎよ。 3幕、結婚の承認とダーヴィットの職人昇進の4場からやっと楽しくみることができたけど。
歌唱では若さを発揮していたダーヴィットが前半目立っていた。 ザックス、ボーグナー、ヴァルター、ベックメッサーは無難に熟していた。 舞台上に作られた舞台での歌唱は減衰しているように聞こえる。 舞台の奥と前との差が大きい。 劇場が広いから? エーファは存在感を増せばより華やかになったかしら?
ワーグナーは緊張感を維持して観ないとつまらない。 その緊張感が途中で固まってしまった舞台だった。
*NNTTオペラ2021シーズン作品