2014年6月30日月曜日

■ザ・オーディエンス

脚本:P・モーガン,演出:S・ダルドリ,出演:H・ミレン
■日本橋東宝シネマズ,2014.6.27-7.2
歴代英国首相が君主エリザベス二世に謁見をする作品である。 謁見は毎週一回火曜日にある。 この慣習は初めて知った。 これは非公開のため芝居内容は現実に近い想像ということになる。
各首相と女王の対話はユウモアとウィットがある。 これが作品の決め手だが対話間の余白も面白い。 娘アン?や側近との話、警備員の動きや街の雑踏も唸らせる演出である。 エリザベスの衣装が首相ごとに変わるのも素晴らしい。
また対話の裏にはセラピストと患者の関係もあるとピータ・モーガンが言っていた。 君主は最後には首相に従うため多くは女王がセラピストになるはずだ。 この関係も舞台の面白さを増している。
現首相名が直ぐに出てこないくらいだから、チャーチル、ブラウン、ブレア、サッチャアしかわからなかった。 首相と君主の位置関係、国民への対応、他国間外交、法律上の権限や制約等々が現実的に論じられる。 作品に重量感も出ている。
日本で首相と天皇を登場させ真面目ながら笑いを誘う舞台を作るのは並大抵ではないであろう。 さすがNTというより英国の舞台力をみせつけられた。
*NTLナショナル.シアター.ライブ作品
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/80136/

2014年6月29日日曜日

■ムシノホシ

振鋳・演出・鋳態:麿赤兒,鋳態:大駱駝艦
世田谷パブリックシアタ,2014.6.26-29
ヤカンを頭から被る、シャモジをメガネにして顔にかける、縄を体に巻き付ける。 昆虫の楽しさが出ていました。 ヤカンの雄が雌を足で転がす場面も生き物としての虫の姿がみえます。 笑ってしまいました。
木が風に揺れている映像風景は生物が住む星の異様さが表れていました。 金粉ショーならぬ銀粉はまさに昆虫の光です。 そしていつもながらのカーテンコールも素晴らしい。
しかし踊りがマンネリ化しています。 衣装としてのカムフラージュが表面に浮遊するだけで身体を射抜いていません。 麿赤兒もついにムシに見離されてしまったのでしょうか?
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/theater_info/2014/06/post_362.html

2014年6月26日木曜日

■マノン・レスコー

作曲:G・プッチーニ,指揮:A・パパーノ,演出:J・ケント,出演:K・オポライス,J・カウフマン,C・モルトマン
■イオンシネマ,2014.6.25(ROH収録)
若者の群衆で始まったからちょっと戸惑ってしまったわ。 時代は現代。 でもボルテージが上がりぱなしの二幕は最高よ。
マノンとデ・グリュの濃密ベッドシーンは老人たちを観客にした劇中劇に仕立ててはぐらかしたけど、さすがジョナサンン・ケント。 スーパーマンの養父だけあるわね。 そしてパパーノも今が一番脂が乗っていて稼ぎ時のよう。
ケントとパパーノの力で引っ張ったけど3幕以降は下り坂。 カウフマンだけどプッチーニは似合わない。 歌唱時はもっとマノンを優しく見つめなきゃ。 硬すぎるぅ。 オポライスは肉体が少し先行してる感じが良かった。 楽しく観られたわよ。
*英国ロイヤル・オペラ・ハウス2013シネマシーズン作品
*劇場サイト、http://www.roh.org.uk/productions/manon-lescaut-by-jonathan-kent

2014年6月23日月曜日

■劇的舞踊「カルメン」

演出・振付:金森穣,出演:NOISM,奥野晃士
■KAAT・ホール,2014.6.20-22
■パントマイムダンスを多く取り入れてより演劇に近づいている。 語りも上手い。 カルメンの原作は読んでいない。 この舞台は読んで来い!と言っているようだ。 ストーリが掴めなかった場面が出てしまい、劇的要素の一つが欠けてしまったからである。
イリュージョンは素晴らしい。 木々や机の細かいところまで目配り気配をしている。 でも建物の壁は動かすのでリズムが狂う。 それよりもこのホールは広すぎる。 これで劇的気配が薄くなってしまっている。 劇的に迫るほど劇場の質が問われる。
そしてダンサーたちは鍛えられている。 観客の抑圧された心身をも解き放ってくれる。 「劇的」を真正面から受け止めてくれる舞台人は少ない。 金森穣はこれを真摯に受け止めてくれる。
彼は1年前に原作を読み劇的感動が見えたと言っている。 と言うことで原作を読んでからもう一度舞台を観てみたい。
*劇場サイト、http://www.kaat.jp/d/CARMEN

2014年6月20日金曜日

■デズデモーナ

作:岸田理生、演出:林英樹、出演:テラ・アーツ・ファクトリ
絵空箱、2014.6.17-20
朗読劇のようにセリフに集中できました。 役者は激しく動き感情を露わにする場面もあります。 でも喋り方が直裁でしかも白衣装のためか諄くありません。
「デズデモーナ」「歳月の恵み」「ダナイード」の三作品を幾つかにスライスして一つにまとめてあります。 スライス間に違和感はありません。 リズミカルな舞台でした。
父と母、父と子、祖父母、叔父・・、血の繋がりの中に死と生を詩的に演じていきます。 硬いオセローと緩い王の声の対比が面白かったですね。 雪・月・花も彩りを添えていました。
でも何か物足りない感じです。 言葉と身体の間に熟成感がない。 やはり三作品で密度が薄くなってしまったのでしょうか? サッパリ感はあります。 6月の気候に合う、気持ち良さの残る舞台でした。

2014年6月17日火曜日

■西部の娘

作曲:G・プッチーニ,指揮:C・リッツィ,演出:N・レーンホフ,出演:N・ステンメ,M・ベルティ,C・スグーラ,パリ・オペラ座
東宝シネマズ日本橋,2014.6.12-19
■予想外の展開だわ。 西部劇の匂いは一欠片も無いの。 一幕は革スーツ黒メガネの男たちが屯している高層ビル地下のバー。 二幕はトレーラーハウス。 それも室内は驚きの桃色で統一。 三幕は廃棄自動車が積み重なっている車体置き場。
ここまで凝らなければ作品の牽引力が発揮できないのかしら? でもこの凝りを背景に、不協和音が歌詞を異様に変化させて現実世界との差異を出している。 これが面白さを倍増しているのは確かね。
ラメレスが死刑直前「故郷へ帰ったとミニーに言ってくれ、もう戻ってこない・・」と歌う場面は、鉱夫たちが故郷の思いを歌い初めた一幕を思い出す仕掛けになっている。 この円環構造にはシンミリするわね。
ミニーは歳をとり過ぎていて、<西部の娘>の生きの良さは失われていたわ。 そしてフランスの米国への辛辣さはいつもながら感心ね。 終幕MGMのライオンが咆哮する中、宝塚大階段を使った舞台は過剰と言うしかない。
*パリ.オペラ座ライブビューイング2013
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/79956/

2014年6月16日月曜日

■パゴダの王子

振付:D・ビントレ,指揮:P・マーフィ,出演:小野絢子,福岡雄大,湯川麻美子,新国立劇場バレエ団
新国立劇場・オペラパレス,2014.6.12-15
■シーズン最終公演は最高傑作のはず、ということで初台に行ったが残念ながら好みに合わなかった。 開幕早々ダンサーが平安貴族衣装で登場して仰天! ・・時代が遡り過ぎるのでは!? しかも次々奇抜な衣装が繰り出すので混乱してしまう。
兄の蜥蜴衣装はカッコイイが、「くまもん」の崩れたようなハリボテにはマイッタ。 和服の多くは朝鮮風、扇子や傘などの小道具は中国風である。 二幕回想場面では音楽や衣装はガムランのインドネシア風に変わる。 しかもパゴダと言えばミャンマーだ。
唐草文様やトロピカル感のある花など周辺の飾りも含めてアジアを総動員したような舞台だった。 たとえファンタジーでもこれがグローバル時代の外から見た日本の姿かもしれない。 というより未来の日本の姿を先取りしているようにも見えてしまった。
逆に日本人監督が欧米の歴史を踏まえた舞台を作ればやはり同じだろう。 肝心のバレエだが桜姫と王子がまとめて踊った終幕場面しか覚えていない。 ダンサーたちはとても巧い。 音楽は物語の起伏まで入り込んでいて面白い
目は楽しめたが、それより先へ行けなかった舞台である。 綺羅びやかな美術・衣装のわりには物語力が弱かった。 これが理由の一つである。
*NNTTバレエ2013シーズン作品

2014年6月13日金曜日

■十九歳のジェイコブ

作:中上健次,脚本:松井周,演出:松本雄吉,出演:石田卓也,松下洸平,横田美紀,奥村佳恵
新国立劇場・小劇場,2014.6.11-29
セックスやドラッグ、終わりに殺人もある舞台は暗い流れが充満している。 しかし湿った感じが少ない。 原作は読んでいないがもっと日本的湿度のある小説にみえる。
こうならなかったのはジャズや松井周と松本雄吉の成果物が舞台に表れていたからだろう。 もう一つ、なぜジェイコブが高木一家の殺人を遂行するのか? この理由が見えないからである。 断片的行為が連なる抽象化の激しいストーリーである。
街の雑音と大阪弁?のセリフが幾つかの場面にあったがとても活きていた。 しかし中途半端である。 全編大阪弁にしたほうが生活の匂いが舞台により感じられるはずだ。
途中一度だけ眠くなってしまった。 ある種のリズムがあるからだろう。 芝居が終わりカーテンコールが無かったので拍手もおきなかった。 観客からみて好き嫌いのはっきり出る芝居である。 硬さのある叙事詩を観ているようで結構面白かった。
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_005522.html

2014年6月9日月曜日

■関数ドミノ

作・演出:前川知大,出演:イキウメ
■シアタートラム,2014.5.25-6.8
少しブレていたけどスピードとリズムがありました。 ブレは役者の歩き方がギクシャクしていたからです。 でも一気通貫で上がった気分ですね。 交通事故に遭っても無傷だった<奇跡>の話です。 信じれば叶えられる?
<宗教>のことも考えてしまいました。 でも舞台は宗教に踏み込まず人間関係や社会現象のことなど、例えばヒトラーなどが議論される。 <信じる>現実と<奇跡>の超現実の境界に漂えるかが芝居の面白さのようです。
観ながら映画「10億分の1の男」を思い出してしまった。 大惨事を奇跡的に生き延びてきた人の話です。 他人の<運>を奪い取る超能力物語でした。 超自然現象を操る特定の話は芝居にするには楽ですが何でも有りでツマラナクなります。 SF小説やSF映画で代替できてしまうからです。 しかしこれを乗り越える力がこの劇団にはあります。 最後まで緊張感のある舞台でした。

2014年6月8日日曜日

■ダンス・アーカイヴinJAPAN-未来への扉ー

新国立劇場・中劇場,2014.6.7-8
■岩手郷土芸能「鹿踊り」から創作した江口隆哉振付「日本の太鼓」、洋舞100年を振り返る復元8小品、平山素子・柳本雅寛振付「春の祭典」の全10作品の上演である。 途中、片岡康子の挨拶が入る。 「春の祭典」を除き初演は20世紀前半である。
復元上演の小品の多くは庶民的な盆踊りや田植えなどを思い出させる。 最初に「日本の太鼓」を持ってきた理由もこの流れに沿っている。 気に入った作品は宮操子振付・中村恩恵出演「タンゴ」と石井漠振付、新国立バレエ団出演「白い手袋」の二点。
普段は感情を表に出さない中村恩恵が嬉しそうに踊ったこと、後者は形而上絵画から抜けだしたような作品で印象に残った。
いきなり21世紀に飛んだ「春の祭典」は別物に見えた。 出演は平山素子と大貫勇輔である。 この劇場で観るのは二度目だが今回も素晴らし踊りであった。
次回の予告をみると再び20世紀前半の作品を上演するらしい。 20世紀後半はアーカイブがまだ熟成していないのだろう。 洋舞のアーカイブはワインと同じである。
*NNTTダンス2013シーズン作品

2014年6月6日金曜日

■トーマの心臓

原作:萩尾望都,演出:倉田淳,出演:劇団スタジオライフ
紀伊国屋ホール,2014.5.24-6.22
観客のほとんどが女性、しかも舞台は総てが男優! よくあることですが初めての劇団なので驚きの連続でした。 原作が少女コミックの連載漫画で男子中高校の寄宿舎生活が舞台と言えばなんとなしに分かります。 原作は読んでいません。
漫画の<コマ>を意識している面白い舞台でした。 漫画は<コマ>と<コマ>の間は「無」ですが、この舞台は<場面>と<場面>が「謎」で繋がっているのです。 多くは男色趣味というか少年愛の雰囲気が漂っています。
謎というのは、この雰囲気が日本的ではないことです。 「愛してる・・」や「好き・・」というセリフに理解し難い何かが付着しているように見えます。 もう一つの謎がユリスモールの過去です。 舞台はこの二つの謎を持っていつまでも進みます。
後半「ルネサンス云々」のレポートを書いて退学した生徒(名前を忘れました)の二度目の登場で自分なりに謎が解けました。 トーマは神に近い存在=天使だったのではないか? そして退学生徒は悪魔なのでは? しかし芝居の核心は未決のままでした
神と繋がっている「少年愛」はどういうものか経験的に理解できないからです。 トーマは天使なのか等々も不明のままです。 劇場で公演プログラムを買うべきでしたね。 疑問点が少しは解決したかもしれません。 でも面白い芝居でした。
*作品サイト、http://www.studio-life.com/stage/toma2014/

2014年6月5日木曜日

■アラベラ

作曲:R・シュトラウス,指揮:B・ビリ,演出:P・アルロ,出演:A・ガブラ,W・コッホ,A=N・バーマンン
新国立劇場・オペラハウス,2014.5.22-6.3
物語に寄り添っていて映画音楽のようね。 しかも意味を問う歌詞が多いから物語を浮き出させることができた。 意味を問うとは「結婚」「婚約」などの祝祭的な言葉を噛みしめること。 「ばらの騎士」を卒業した作品にみえる。
舞台はクリムトの絵が映える素晴らしい青の世界。 沢山の青で表現するウィーンは珍しいかもね。 アラベラは理想と現実を持っていてとても複雑にみえる。 でもその複雑さをきちっと表現している。 それはマンドリカの真摯な対応があるからよ。
でもウィーン世紀末の退廃感は無かったの。 理由は父親の賭博癖が強すぎて滑稽だから。 アラベラ役ガブラーが若すぎるから。 ズデンカのズボン役が反宝塚的だから。 青の世界も過剰かもね。 それでもアラベラの若さは物語の中では光っていた。
終幕に近づくにつれて、家系や結婚など制度としての保守性を越えて真実に向かっていく面白さが増していったの。 フィアカーミリも楽しめたわ。 ホフマンスタールとの共同作業が長く続いた理由を理解できるわね。
*NNTTオペラ2013シーズン作品

2014年6月4日水曜日

■2014年METライブビューイング・ベスト3


*並びは観劇日順。 選出範囲は2013 ・14シーズンの、トスカ、ファルスタッフ、ルサルカ、イーゴリ公、ウェルテル、コジ・ファン・トゥッテと上記ベスト3の計9作品が対象。

2014年6月3日火曜日

■忠臣蔵・武士編  ■忠臣蔵・OL編

作・演出:平田オリザ,出演:青年団
こまばアゴラ劇場,2014.5.31-6.15
忠臣蔵を二本観てきました。 男優だけの武士編と女優だけのOL編です。 大石内蔵助と家臣たちが赤穂藩の今後を議論するのですが中々決まりません。 そして有志による自由参加の討ち入りとする結論を出します・・。
一観客として最良の結論だと納得しました。 なぜなら観ていてホッとしたからです。 運命を変える会議の場合、逃げ道が多い選択をするでしょう。 一人ひとりの価値観を直截に喋れただけ幸せです。 現代日本の現実の会議との違いが表れています。
OL編は昼休みの食堂の為か気にならなかったのですが、それにしてもよく食べる舞台ですね。 武士編は気が散ってしまいました。 これがあとから観たOL編に響いてしまった。 武士編は食べないほうが差異が出て両作品の面白さが増したとおもいます。

2014年6月2日月曜日

■ラ・チェネレントラ

作:G・ロッシーニ,指揮:F・ルイージ,演出:C・リエーヴィ,出演:J・ディドナード,J・D・フローレス
東劇,2014.5.31-6.6(MET,2014.5.10収録)
いつも心をウキウキさせてくれるロッシーニ。 しかも最強の物語「シンデレラ」だから文句の付けようが無い。 舞台や演出は形而上学的な雰囲気もある。 これもロッシーニに合うのよね。
ディドナードとフローレスは「理髪師」、「オリー伯爵」から続くMETコンビ。 ディドナードはインタヴィューで最後にしたい(何を?)と言っていたけどちょうどいい時期かもね。
今シーズンが終わったけど、いつのまにかライブビューイングで一杯ね。 ROH、ボリショイ・バレエ、パリオペラ座、RSC、NT。 舞台に興味のある人にはたまらない。 でも年40本もあると悩むわね。
*METライブビューイング2013作品

2014年6月1日日曜日

■遊機体

演出・振付:向雲太郎,舞描:鉄秀,音楽・演奏:築山建一郎
森下スタジオ,2014.5.30-6.1
「遊びの始まり」とありましたが、絵を描くのが楽しいようにはみえませんでした。 苦しみの表現です。 ところで音楽、特に照明や映像はサイケ調で激しさが有りますね。
舞踏とサイケデリックは合うはずです。 でも最新の音響や照明・映像技術が、身体を吹っ飛ばしてしまったようにみえます。 これでエントロピーが増大したのでしょう。
ここから「生命力や遊び、芸術を取り戻す」ことをしなければならないのにそれができなかった。 その前の状況説明で終わってしまった舞台にみえました。