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■ミクスチュア

■作・演出:山田由梨,音楽:金光佑実,美術:山本貴愛,衣装:小髙真理,出演:大竹このみ,田島ゆみか,青山祥子ほか,劇団:贅沢貧乏 ■東京芸術劇場.シアターイースト,2019.9.20-29 ■舞台は白床、小道具もシンプル、照明もブラックライトがあり美術に拘っているようです。 床に映像も映す。 ブラックライトは流行りですか? スポーツセンターのヨガ教室が舞台です。 世間話が続いていく。 町に得体のしれない動物が出現したとか、大学院生の論文が書けないとか、欝の話や菜食主義者のSNSとか・・。 小道具を組み合わせた役者の動きにリズムがあります。 動物を演じる役者二人の俊敏な動きが舞台をより活性化している。  同棲?している口数の少ない清掃員二人が隠れ主人公のようです。 その男性モノは欲望を表に出さず黙々と仕事を熟している。 女性ヤエはそのようなモノを好いている。  人間関係は浅く止めて余韻を残す方法を取っています。 深いところを想像できないことはない。 会話の中身を追っていくと社会の動きに繋がっていくからです。 規則性の有る、詩的で淡泊な舞台がそれをさせない。 面白い文体の芝居でした。 日常生活の中にある詩を思い出させるような舞台でした。 *劇場サイト、 https://www.geigeki.jp/performance/theater216/

■幽玄

■演出・出演:坂東玉三郎,出演:太鼓芸能集団鼓童,花柳壽輔ほか ■東劇,2019.9.27-10.17(博多座,2017.9収録) ■玉三郎は<楽しい幽玄>を創った。 「羽衣」「道成寺」「石橋」を繋げた構成だ。 鼓童の打楽器が前面に出ている。 先ずは「羽衣」を見て、何だこれは!?と唸ってしまった。 能のようで能ではない、歌舞伎のようで歌舞伎ではない、パントマイムにもみえる。 「羽衣」は能に近い舞が長いから違和感があったのだと思う。 しかし「道成寺」で俄然面白くなってきた。 白拍子が鼓童とリズムが同期しだした。 蛇のヌメッとした色艶も迫力がある。 続いての「石橋」の獅子舞は打楽器の豪快さを取り込んでいく。 5頭の連獅子(?)だ。 幽玄世界が激しいリズムで吹き飛んでしまったようにもみえる。 笛や箏が入ると和む。 コロスとしての地謡も動きが規則的すぎる。 しかし玉三郎の豪華な装束と舞がこのリズムを捕らえて見たことのない舞台を出現させた。 これを<楽しい幽玄>と名付けてもよい。 *シネマ歌舞伎特別編 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/41/

■あつい胸さわぎ

■作・演出:横山拓也,出演:辻凪子,枝元萌,田中享,橋爪未萌里,爪生和成 ■こまばアゴラ劇場,2019.9.13-23 ■シングルマザーとその娘、二人の失恋を描いた話です。 日常の出来事や心の動きを大阪弁がコミカルにしていきます。 声を出して笑うほどではありませんが、役者が喋っている間は観客は心から笑顔になっているのが分かる。 次の科白が待ち遠しい。 じゃりン子チエを一瞬思い出しました。 母は東京を知らないらしい。 でも風景の味付けはサッパリしています。 夏の暑さも母の職場も東京の下町と同じですね。  「もう夏や・・」。 天井に張めぐされている赤い糸が意味深です。 母は東京から来た会社上司が気に入ります。 大学に進学した娘は子供時代からの友達が好きだったことに気が付く。 そして母娘が相手から片思いだった言葉を聞かされるクライマックスがやってきます。 二人にとっては厳しい言葉です。 母の同僚が登場します。 上司はその同僚を見つめる場面が二度ほどある。 表情や仕草から上司はこの同僚が好きなんだと思いました。 これで後半のストーリーが想像できましたね。 ・・しかし違った。 娘の友達は心が読めません。 彼は娘の前で(母の同僚との)失恋を話してしまう。 この舞台は母娘の心の襞まで表現できています。 上司と娘友達は、母と娘の些細な心の揺れを感じ取れなかったのでしょうか?  彼らは好かれていることが分かっていたはずです。 母娘は言葉で巧く描かれているのに上司と娘友達は言葉で省いてしまった。  作品の要である科白の鋭さに頼り切ってしまい、科白の無い時の表情や心の動きを疎かにしてしまったようにみえます。 客席からすすり泣きが多く聞こえましたが、心に刺さる素晴らしい舞台には違いありません。 *演劇ユニットiaku公演 *劇場サイト、 http://www.komaba-agora.com/play/8496

■死と乙女

■作:アリエル.ドーフマン,翻訳:浦辺千鶴,演出:小川絵梨子,出演:宮沢りえ,堤真一,段田安則 ■シアタートラム,2019.9.13-10.14 ■厳しい舞台です。 でもポーリーナ役宮沢りえが踏ん張りました。 それは彼女に血肉が付いてきたからだと思います。 でも作品が血肉を使わせてくれない。 結局は骨だけで勝負せざるをえない。  主人公ポーリーナに拷問・強姦した医師ロベルトを私的裁判に掛けるストーリーです。 彼女はロベルトを捕らえますが、彼は最後まで白を切る。 彼女に拷問強姦をしたのか? 真相は分からない・・。 舞台は独裁政権下での出来事ですが、「身近な社会でも被害者が声をあげられないでいる事件や状況は山ほどある・・」(小川絵梨子)。 舞台は現代性暴力の告発まで視野に入れているので考えさせられます。 それにしても舞台は索漠としています。 ダイニングルームも冷たい。 宮沢りえが余計にキツク感じられます。 でも最後のカクテルドレスで逆転しましたね。 やっと血肉を通わせてくれました。 この後にストーリーを付け加えても芝居になりそうです *シス・カンパニー公演作品 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/shitootome20190910.html

■タウリスのイフィゲニア

■作曲:C.W.グルック,指揮:パトリック.サマーズ,演出:スチィーヴン.ワズワース,出演:プラシド.ドミンゴ,スーザン.グラハム,ポール.グローヴス他 ■東劇,2019.8.19-20,9.17-18(MET,2011.2.26収録) ■1幕初め、イフィゲニアの歌唱で時間が遡り両親の殺害やギリシャ悲劇の多くの場面が脳裏に浮かび始めるの。 演出家ワズワースはインタビューでそのように仕向けたと言っていたわね。 コロス衣装が暖色系でブリューゲルの農民風景を思い出させてくれる。 ダンスもあるからよ。 でもそれは一瞬だけ、主人公たちの黒系衣装が物語に戻してくれる。  ナタリ・デセイのインタビューがやらせ見え見えで楽しい。 スーザン・グラハム、プラシド・ドミンゴは共に風邪を引いているようね。 彼女はメゾソプラノでよかったと言っていた。 歌詞に反復が多いが振幅があるからリズミカルでない。 グルックは初めてだけど素朴の中に豊かさが感じられる。 牢獄や生贄台があるギリシャの中心は悲劇だけど周辺は長閑なはず。 どちらも取り込んでいた演奏に聴こえる。 姉と弟が再会した終幕のダンスもホッとさせてくれた。 スタッフ特に演出家がグルックを上手に料理した舞台だった。 *METライブビューイング2010作品 *作品サイト、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2010-11/#program_0あるけど7

■ルイ・ルイ

■演出:快快,脚本:北川陽子,出演:大道寺梨乃,野上絹代,山崎皓司,毒蝮三太夫(声)ほか ■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2019.9.8-15 ■電波ジャックされたラジオのDJ番組を体験するストーリーです。 DJのように1曲ごとに話題が変わっていく。 オムニバスに近い。 そして場面の合間には曲ルイルイが流れていきます。 床下の骨組みが見える舞台でL字の客席になっている。 演奏や歌、ダンスが多かったのでフェスティバル会場にいるようです。 照明も張りがあった。 劇場の広さもちょうどいい。  オムニバスの為か舞台は途切れる感じです。 間延びしています。 役者も素人のようなフリをする。 売れないコントを見ているようで一瞬ですがシラケる。 これらが独特な雰囲気を作り出していく。 客席に骨を回すのもバカバカしいが面白い。  この雰囲気は好きなのですが、加えて寂しさについての話題が多かったので少し湿りました。 寂しさを科白で表さず空気感で表現できればより深まったと思います。 ところでDJの声が毒蝮三太夫とは、終わってからチラシをみて知りました。 客席には子供たちが多くて賑やかでしたが、間延びの雰囲気が尾を引いていたのでカーテンコールの観客拍手も力が無かったですね。 でも観た後に不思議感が身体に残りました。 *劇場サイト、 https://www.kaat.jp/d/louielouie

■演出家鈴木忠志、その思想と作品

■著者:渡辺保,出版社:岩波書店 ■2019.7.25発行 ■柄本明の記事が朝刊で連載中である。 昨日、読んでいたら鈴木忠志演出「どん底における民俗学的分析」のことが詳しく書いてあった。 この「どん底・・」はタイトルの本「演出家鈴木忠志、・・」を読んだ直後だったのですぐに分かった。 鈴木忠志の舞台を初めて観た時の衝撃は忘れられない。 柄本も演劇の道に入るきっかけの一つになったはずである。 鈴木忠志は「理論・実践・教育・組織運営における代表的演劇人」(Wiki)であることは今もかわりない。 それは「劇団創設・劇場創築・俳優創生の三つを<一体>にした第一人者」(菅孝行?)でもある。 しかしこの本は読み易くない。 14作品を解説しているのだが舞台を観ていないと入り難い。 14作品は以下の通り・・ 1.どん底における民俗学的分析 2. 劇的なるものをめぐって  3. 夏芝居ホワイト・コメディ  4. トロイアの女  5. バッコスの信女 (ディオニュソス?) 6.王妃クリテムネストラ 7.桜の園 8. リア王  9. シラノ・ド・ベルジュラック  10. 別冊谷崎潤一郎  11. 帰ってきた日本  12. サド侯爵夫人(第二部)  13. 世界の果てからこんにちわ  14.人生の冬景色  当ブログでは演出家の舞台をこれまで26回(2010年以降、映像含む)載せている。 *書店、 https://www.iwanami.co.jp/book/b457230.html

■リチャード二世

■作:W.シェイクスピア,演出:ジョー.ヒル=ギビンズ,出演:サイモン.ラッセル.ビール,レオ.ビル他 ■シネリーブル池袋,2019.9.6-12(アルメイダ劇場,2019.1.15収録) ■同じような作品名「リチャード三世」はよく上演される。 でも二世はあまり見ることができないわね。 舞台では2002年シアターコクーンのベルリーナ・アンサンブルで、ライブビューイングでは2014年RSCが最後だった。 DVDでは「ホロウ・クラウン」等々があるけど見ていない。 密閉された戦艦内のような舞台だから緊張感が漂う。 今風のラフな衣装の役者8人は舞台に居続けるの。 おのずと科白に集中できる。 シェイクスピアの中でも詩的で科白密度が高いから尚更ね。 リチャードがボリングブルックに王冠を渡す直前からグッと面白くなる。 それはリチャードが王を失う理由が形式的だから。 そして王が王で無くなる心の揺れがこの作品の見所だから。 サイモン・ラッセルは体を掻く癖が又でていた。 「リア王」の時も気にかかったけど。 しょうがないわねぇ。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ2019年作品 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/90571/