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■能楽堂五月「俊成忠度」「宗論」「綾鼓」

*国立能楽堂五月特別公演の下記□3作品を観る。 □能・観世流・俊成忠度■出演:観世喜正,観世淳夫,中森健之介ほか □狂言・大蔵流・宗論■出演:茂山千五郎,山本泰太郎,松本薫 □能・宝生流・綾鼓■出演:金井雄資,小倉健太郎,工藤和哉ほか ■国立能楽堂,2022.5.28 ■現代人にとっても身につまされる内容だ。 ・・「俊成忠度」は評価の不服を唱え、「宗論」は流派争いが延々と続き、そして「綾鼓」は老いて女性問題に悩む。 しかも能では死んでも恨み、老人は女御の胸ぐらをも掴む。 狂言では理性を失っていき、さいごは踊り狂う・・。 見所はシテ忠度が突然の登場場面だろう。 修羅出立ちで面は業平。 これは清々しい、予想が少し外れたが。 ここで囃子と地謡が一斉に唸りだし「前途程遠し、思ひを雁山の夕べの雲に馳す、・・」。 劇的だ。 演劇の醍醐味だろう。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/5119.html?lan=j

■オルフェオとエウリディーチェ

■作曲:C・W・グルック,指揮:鈴木優人,演出・振付・美術・衣装・照明:勅使川原三郎,出演:ローレンス・ザッゾ,ヴァルダ・ウィルソン,三宅理恵,ダンス:佐東利穂子ほか,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラハウス,2022.5.19-22 ■「 エウリディーチェ 」は2月にも会っているの。 また会えて嬉しい。 しかも今回は指揮鈴木優人、演出勅使川原三郎コンビでバロックオペラ、オペラバレエを十分に堪能でき、しかもハピーエンドで物語が終わるから重ねて嬉しい。 当時を再現した器楽が入っているためか慎み深い世界が広がる。 オルフェオのカウンター・テナーがそれに被さり静寂が生れる。 あらためて劇場の広さを感じるわね。 でも美術と照明は舞台空間と均衡が取れていた。 その中でバッハとモーツアルトに挟まれたグルックの揺らぎが伝わってくる。 少し物足りないところもある。 歌手の少なさも一因ね。 ダンサーも同じ。 でも、この薄味が作品の深みに近づけてくれる。 「歌手の技巧誇示を抑えて歌を平明にし、伴奏付レチタティーヴォで劇の緊張を維持しながらドラマをスムーズに進め、雄弁な管弦楽を採用する」(作品ノート)。 グルックのオペラ理念がはっきりと舞台に現れていた。 腹八分の充実感が心身に気持ち良い。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023383.html

■ブック・オブ・ダスト、美しき野生

■作:フィリップ・プルマン,演出:ニコラス・ハイトナー,出演:サミュエル・クリーシー,エラ・ディカーズ,ナオミ・フレデリック他 ■TOHOシネマズ日本橋,2022.5.13-(ブリッジ・シアター,2022収録) ■「ライラの冒険」は読んでいない、観てもいない。 でも密接に繋がっているらしい。 それはストーリーが追えないから。 イギリスの大学街を背景に疑似科学や心身二元論に近い魔法やダイモンが登場するの。 「ハリー・ポッター」も読んでいない、観てもいないけど同類かしら? この種の作品はどうも苦手なの。 科白はとても聴き易かった。 でも子供向け舞台のようで・・、そうとも言えない。 中途半端な感じがする。 誰の為に作った舞台なの? この質問に答えられない。 パペットの使い方や川の流れの映像技術は認めてもいいわね。 でも映画にすると効果が薄れる。 やはり生舞台に接しないと分からない。 原作シリーズを知らないと面白半減な舞台になることは確かだわ。 *NTLナショナル・シアター・ライヴ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/96679/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ハイトナー  ・・検索結果は9舞台.

■能楽堂五月「富士松」「小袖曽我」

*国立能楽堂五月普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・富士松■出演:野村萬,野村万蔵 □能・観世流・小袖曽我■出演:上野朝義,上野雄三,野村昌司ほか ■国立能楽堂,2022.5.14 ■プレトーク「兄弟の絆・母の愛」を聞く。 「小袖曽我」では、母がなぜ弟時致(ときむね)と会わないのか? 詞章を読んでも分からなかったが坂井孝一の話を聞いて納得した。 兄祐成(すけなり)と弟時致が一緒にいると父の仇討ちを話しているのではないか? 周囲に怪しまれるのを恐れて母は弟を遠ざけたらしい。 もう一つ、詞章に登場しない小袖の件だが、父の仇を討った後に兄弟の形見の小袖を母のもとに届けられるところまで話が続くことで、これも納得。 どちらもトークのタイトルに繋がる。 これらは「吾妻鏡」や「曽我物語」を開けばわかることだがそこまで趣味は広くない。 舞台後半は兄弟が男舞を相舞で見せてくれる。 父の仇、工藤祐経(すけつね)を討つ意志が感じられた。 迫力は十分にあった。 狂言「富士松」は和歌の付合をしていく話だがシテ・アドのテンポが速くて吟味できなかった。 「それは教養が無いからだ」と坂井孝一に言われそうだ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/5116.html?lan=j

■ロビー・ヒーロー

■作:ケネス・ローガン,翻訳:浦辺千鶴,演出:桑原裕子,出演:中村蒼,岡本玲,板橋駿谷,瑞木健太郎 ■新国立劇場・小劇場,2022.5.6-22 ■チラシの粗筋も読まないで劇場に行ったのは正解でした。 4人の対話に集中できました。 喋り過ぎの緩みから心の中を見せてしまい人間関係を損ねてしまう。 よくあることですね。 フェイクが多いなか事実はとても貴重です。 事実に沿った真実を作れるか? その真実は正義なのか? これらを対話で見せる面白さが舞台にある。 事実は物理現象に近い。 真実は事実に自身の主観・主張を塗りこんだもの、これに社会の調和を塗りこむと正義ができあがる(と勝手に考えています)。 事実は動かないが真実も正義も時と場所で変わっていくはず。 物語りは、自身の食い扶持と身内共同体の維持に見合った真実を作り上げていく・・。 終幕、駆け出しのジェフとドーンの二人は事実に絡みつく真実と正義の関係を止揚したようにみえたが定かでない。 古参ウィリアムとビルはこれを<社会の調和>つまり正義で解決するしかない。 喋り過ぎの楽しさを堪能しました。 *NNTTドラマ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_023358.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、桑原裕子 ・・ 検索結果は6舞台 .

■私のコロンビーヌ

■作:ファブリス・メルキオ,演出・出演:オマール・ポラス ■静岡芸術劇場,2022.5.3-4 ■コロンビーヌとは何(誰)か? コロンブス、コロンビア・・。 意味から始まり国や部族、植物や動物の話が続きます。 一人芝居の演出家でもある役者はコロンビア出身と知る。 この国の内戦は何十年も続いている(いた?)。 ・・舞台は彼の子供時代へ。 家族や学校の話には月がいつも寄り添う。 そしてコロンビア軍に入隊・・。 「敵は誰だ!?」。 人づてを頼りにパリヘ・・。 「生まれながらの道化はいない」「笑いは笑い」。 食うための道化をメトロで演じながら多くの人々に出会う。 アルベルト、リリアナ、パシャママ・・。 ついに<劇場>を発見! 月がここに運んでくれた。 ・・というような役者の身の上話でした。 舞台上のオマール・ポラスは初めてです。 彼の即興を感じさせる俊敏な動きや発声からは豊かな経験がにじみ出ている。 コメデア・デラルテのパワーでしょう。 コロンビアとパリの組み合わせが新鮮です。 舞台に現れた彼が語るコロンビーヌを受け止めることができました。 「私たちのコロンビーヌ」ですね。 *ふじのくに⇆せかい演劇祭2022 *劇場、 https://festival-shizuoka.jp/program/ma-colombine/

■桜姫東文章

■作:鶴屋南北,補綴:郡司正勝,出演:片岡仁左衛門,坂東玉三郎,中村錦之助ほか ■新宿ピカデリー,2022.4.8-(歌舞伎座,2021.6収録) ■先月始めに上巻、昨日下巻を観る。 上映時間は計4時間20分。 途中1ヶ月空いたので上巻はうろ覚えだ。 上下を一気に観ないと作品の感動がやってこない。 釣鐘権助の泥酔が原因で呆気なく終幕になってしまうからだ。 下巻だけではこの呆気なさに耐えられない。 しかし、それを差し引いても面白さは群を抜く。 権助が桜姫ばかりか他人の女房や捨子を次々に<交換>していく経済的人間関係、僧清玄幽霊の顔傷を引き継いでいく怨念的人間関係には驚くばかりだ。 「坂東玉三郎の為に作られた作品・・」。 片岡仁左衛門がインタビューで語っていたがその通りの内容だ。 姫が女郎にまで転落していくなか、刻々と変わる作法や言葉の見応ある玉三郎の演技に納得。 桜姫の周りで姿や身分を変えながら演じていく仁左衛門とのコンビは言うことなし。 「36年ぶりの奇跡の舞台」と書いてあるが、「これが最後」と玉三郎は言っていた。 残念ながらこれも納得。 すべてが納得の舞台であった。 *シネマ歌舞伎第38弾,第39弾 *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/46/