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■カルミナ・ブラーナ

■音楽:カール・オルフ,演出:熊川哲也,美術:ジャン=マルク・ビュイッソン,指揮:井田勝大,出演:関野海斗,高橋裕哉,小林美奈ほか,舞団:Kバレエカンパニー,歌手:今井実希,藤木大地ほか,演奏:シアターオーケストラトーキョー ■Bunkamura.WEB,2021.3.29-(オーチャードホール,2021.2収録) ■合唱団に取り囲まれながらダンサーたちが踊る舞台になっている。 カメラも一緒に動き回る。 自ずと観客も舞台上にいる感覚が得られる。 見応え抜群である。 「ライブを超える芸術体験!」とはこのことか? 歌詞付きの特典プログラムから物語の流れを掴むことができた。 約1時間で25章(曲)と細かく分割されているので演劇に近づく。 この作品は2014年、 デヴィット・ビントレー版 をみて衝撃を受けたが、今回は演劇的要素が振付にも塗りこめられている。 演劇バレエと言える。 もちろんバレエの面白さは申し分ない。 画質・音質も良い。 伸びのあるスケール感は映像で観るように作られた作品のため可能になったのだろう。  *劇場、 https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/21_carmina_burana/

■舞姫と牧神たちの午後

□Danae,振付:貝川鐵夫,出演:木村優里,渡邊峻郁 □かそけし,振付:島地保武,出演:酒井はな,森山未来 □Butterfly,振付:平山素子,中川賢,出演:五月女遥,渡邊拓朗 □極地の空,振付・出演:加賀谷香,吉崎裕哉 □Let's Do It!,振付・出演:山田うん,川合ロン □A Picture of You Fallingより,振付:クリスタル・パイト,出演:湯浅永麻,小尻健太 (以上6作品を上演) ■新国立劇場.小劇場,2021.3.26-28 ■6品揃ってデュエットとは珍しい。 コロナ禍の為かな? 気に入った舞台は「Butterfly」。 速い動きと遅い音楽が共振し脳味噌をピクピクさせてくれる。 流れに隙が無くプロ仕様の出来栄えである。 霊魂や輪廻転生は感じられず、どういう訳かアメリカの雰囲気に浸れた。 もう一つ挙げるとすれば「Danae」。 バレエのテクニクを取り入れ奇をてらわず、音楽に寄り添うが支配されず余裕のある動きがいい。 振付家貝川鐵夫は角が取れてきたようだ。 以上2本、どちらも音楽との相性がよかった。 ダンスを観る喜びが訪れた。 「かそけし」と「極地の空」は大友家持と天守物語の語句が解説にみえる。 前者はコミックな動きやギター演奏が楽しい。 後者も演奏付きだが近代以前の日本の恋愛を描いているようだ。 どちらも照明が邪魔をしていた。 照明! 「Let’sDoIt!」も何故かアメリカを思い出す。 アームストロングだから?いや、ダンサーの表情や衣装からだ。 「APictureofYouFalling」はテキストのことクリスタル・パイトのことなどを考えている間に終わってしまった・・。 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/dance/fauns-and-nymphs/

■ワルキューレ

■台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー,指揮:城谷正博,演出:ゲッツ・フリードリヒ,出演:村上敏明,秋谷直之,長谷川顕,ミヒャエル・クプファー=ラデツキー,小林厚子,池田香織ほか,演奏:東京交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2021.3.11-23 ■指揮者と主要歌手の全てが交代する舞台になってしまった。 ジークムント役決定ニュースを聞いたのは半月前の3月1日、それも1幕と2幕で歌手が代わるの。 この日の客数は7割かな? 5時間を越える長さを含めコロナ禍での公演は大変ね。 ホワイエでの飲食も無し。 休憩は40分が2回もあるから近くのマックへ行ってお茶を飲んだわよ。 こういう状況では舞台に強引に入り込んでいかないとだめ。 女性歌手、ジークリンデとブリュンヒルデがこの劇場に似合った歌唱で聴きごたえがあった。 ヴォータンは終幕で失速状態かしら? 日本人歌手は体が小さいからどっしり構えていたほうが良い。 ちょこちょこ動きまわったり日常動作を多くするとだめね。 いつもの感動に浸れなかったけど、ワーグナー自身の人生や当時の様相がみえる作品の為いろいろなことを考えながら観てしまった。 ところで岩山の火は煙にLEDで炎の映像をあてて作るらしい。 アトレ2月号に書いてあったが、本物の火と見分けがつかなかった! *NNTTオペラ2020シーズン作品 *劇場サイト、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_019234.html

■義務

■演出:井出茂太,音楽:原摩利彦,舞団:イデビアン・クルー ■世田谷パブリックシアター,2021.3.12-14 ■黒衣装で統一の10人のダンサーは、なんと!マスク姿で登場です。 先月観た「 ハムレット 」の二の舞になるのでは? でも途中で外したのでホッと安心しました。 タイトルの「義務」ですが、チラシに「決められた様にしか動けない私・・」「自然と反く事しかできない私・・」とある。 義務という言葉は思いつかなかった。 井出茂太の動きをみると「慣性」をいつも考えてしまうからです。 意識と無意識の比重の違いはあるが、義務と慣性は似ている。 上演1時間でしたが後半からリズムに乗ってきましたね。 久しぶりのイデビアン・ダンスを堪能しました。 舞台には短冊カーテンが天上から下がっている。 それが動いて舞台を横に縦に仕切ったりする。 何もない舞台がまとまりました。 でも透明なカーテンはダサい感じですか。 ところで音楽と音響がいつもと違っていた。 クリアです。 ダンサーの動きにも敏感に対応している。 こんなにも音響が良い劇場とは知らなかった。 反して照明はチョット・・でしたね。 ミラーボールも中途半端な動きだった。 黒系の衣装・美術だと照明は大変ですね。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/202103gimu.html *「ブログ検索」に入れる語句は、井出茂太

■赤い靴

■監督:マイケル・パウエル他■演出:マシュー・ボーン,■音楽:バーナード・ハーマン,出演:アシュリー・ショー,アダム・クーパー他 ■厚木kiki,2021.3.13-26(サドラーズ・ウェルズ劇場,2020.1収録) ■パントマイムで物語が進みバレエで舞台が広がる。 時空の共演だ。 マシュー・ボーンの到達点と言ってよい、それはスキが無いという意味で。 前回の「 ロミオとジュリエット 」と違い丁寧な仕上がりだ。 主人公ヴィクトリア役アシュリー・ショーは子供のようなしなやかな動きでボーンの斬新作品に親しみを連れてくる。 硬直で毛色の違うアダム・クーパーとの相性もいい。 舞台の展開は申し分ない。 ロンドン、パリ、モンテカルロ、・・そしてイースト・エンドの労働者向け劇場の描写は最高、しかも回転する緞帳が観客側から、舞台のあらゆる方向からみることができ、立場を越えて作品を吟味できる。 観ながら「赤い靴」のストーリーを知らなかったことを思い出した。 作品はそれを咎めない。 物語を想像できる自由度があった。 渋谷での上映を見逃してしまい厚木まで行ってきた。 1948年版の映画はみていない。 物語りに比重を置いた作品と聞いている。 比較によいかもしれない。 暇を見つけて観ようと思う。 *映画com、 https://eiga.com/movie/94397/ *2021.3.20追記・・忘れていたが1948年の映画は観ていた。 このブログにも感想を載せていた。 「 赤い靴 」(監督:マイケル・パウエル他,1948年作)。

■海、静かな海 STILLES MEER

■原作・演出:平田オリザ,作曲:細川俊夫,指揮:ケント・ナガノ,出演:スザンネ・エルマーク,藤村美穂子,ベジュン・メータ他,演奏:ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団 ■NHK.WEB,2021.3-(ハンブルク歌劇場,2016.1.24-27収録) ■平田オリザの名前があったので観る。 ・・バレリーナだった主人公クラウディアは東日本大震災の津波で夫と息子を失ってしまった。 息子が亡くなったことを今でも受け入れることができないでいる。 彼女には義理の姉ハルコがいる。 夫は日本人だったようね。 そこへ元ダンスパートナーのシュティファンが訪ねる・・。 歌詞は詩的で静かだが力強い。 歌唱もそれに沿って進む。 ドイツ語の中に仏教用語が多く登場する。 例えば灯篭、彼岸、念仏、極楽浄土、そして南無阿弥陀仏・・。 お辞儀をする場面も多い。 日本式の立礼なの。 この動作が舞台を清めて魂を鎮める象徴にもみえる。 後半、放射線防護服に身を包んだ村人たちが墓参りに向かおうとしている。 津波で亡くなった人々の死体の状況が詳しく語られる。 子供は生きている!? クラウディアは発狂しつつも、目の前には不気味で静寂な海が重く横たわっているだけ。 彼女は息子が亡くなったことを受け入れることができたのか? ・・。 あらためて東日本大震災を振り返ってしまった。 舞台には鎮魂の強さが感じられた。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2021112286SA000/

■アユタヤ

■作・演出:土田英生,出演:水沼健,奥村泰彦,尾方宣久ほか,劇団:MONO ■WEB配信,2021.3.6-21(あうるすぽっと,2021.3.6収録) ■17世紀初め、タイで商売をしている主人公イチノスケとアユタヤ日本人町の人間模様を描いた舞台です。 が、前半は焦点が定まっていかない。 人名や地名を隠すと時代も場所もよくわからない。 「時代劇なのに現代劇」という演出家の意向に沿って進んでいきます。 後半、その妹オツルと日本から逃げてきたショウエモンのすれ違いすれすれの話に絞られていく・・。 二人の間柄は<愛><恋>より<好>という字が当てはまる。 好きだけど、はっきり言わない。 いっしょになりたい、と心では思っている。 日本人町の崩壊が迫る中、イチノスケたちはカンボジアへ移住することを決めるが、ショウエモンはマニラへ行こうとする。 その理由が本心とは違い「皆に迷惑をかけた」から。 しかし土壇場で周囲の者がショウエモンを引き留め二人はどうにか一緒になれる・・。 このように書いてしまえば簡単ですが、一緒になれなかったら・・、と思うと胸がキューンとします。 最後はほっとしますね。 チェーホフやシェイクスピア後期作品、日本では明治・大正時代の小説等でこの種の話つまり<好>にときどき出会います。 この中で演出家土田英生の上手さはピカ一だと思う。 でも今回はショウエモンの描き方が少しぬるかったように感じました。  WEB配信内容は悪くなかった。 カメラもアップを少なくし動きを抑えていたし、特に音響が良かった。 映像・音響・カメラワークで満足できる舞台配信はまだ少ない。  *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/110213

■キンキーブーツ

■監督:ブレッド・サリバン,脚本:ハーベイ・ファイアスタイン,音楽:シンディ・ローパー,演出・振付:ジェリー・ミッチェル,出演:マット・ヘンリー,キリアン・ドレニー,ナタリー・マックイーン他 ■シネリーブル池袋,2021.3.5-(ロンドン・アデルフィ・シアター,2018年収録) ■タイトルを初めて聞いた時「近畿ブーツ」と訳してしまった。 この靴が日本で流行るなら大阪しかない!と。 後にドラァグクイーン向けサイハイブーツのことをキンキーブーツと言うのを知った。 そして今回、映像だがやっと観ることができた。 いきなり佳境に入る流れだ。 製靴工場を継いだ主人公チャーリーの前に突如ドラァグクイーンローラとその仲間が度肝を抜く歌と踊りで登場する。 チャーリーは悩みながらもローラを雇い職人たちと共にキンキブーツの製造に取り掛かるのだが・・。 終幕、彼らはブーツ出品のためミラノへ乗り込んでいく。 ロンドン近郊の製靴工場の経営が現実的に語られる。 これがベースにあるから歌と踊りがより輝くのだろう。 ローラの華麗な表とサイモンの実直な裏の姿もこれに沿っている。 しかもゲイやフェティシズムなどの課題を社会に向け誠実に答えている。 このような現実世界と舞台世界の融合が作品に深みを与えていた。 質の良い凝縮した舞台のためか、一息で観てしまったのが感想だ。 *松竹ブロードウェイシネマ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/92577/

■映像舞踊「BOLERO 2020」

■演出:金森穣,編集:遠藤龍,出演:井関佐和子,池ヶ谷奏,ジョフォア・ポプラヴスキー他 ■NOISM.WEB配信(2020作) ■「公演の記録映像の配信ではなく、・・映像で観ることを前提とした舞踊作品」と書いてある。 15分の小作品なので早速観る。 ダンサー自宅?の居間や部屋が舞台でボレロに合わせて個々に踊りだす。 床は畳や絨毯など様々、椅子やソファーも利用し衣装もそれぞれが日常着なの。 狭いし日常空間のためストレッチ体操やパントマイムにもみえるわね。  テレビ会議のように画面を分割させて最大12画面=12ダンサーが同時に踊る場面もある。 もちろん振付を同期させ12画面が同じ動きをしたり、画面から飛び出して見えなくなってしまうような緊張感を付ける。 終幕、ダンサーたちがスタジオに集合して舞台で踊り幕が下がる。 よーくみると、各部屋の雰囲気が計算されているのが分かる。 演出家の小道具への目配りの細かさがいつものように出ている。 振り返ると衣装にもそれが当てはまる。 映像加工も最低限に止めている。 全体の統一感が並ではない。 感動は少ないが、初めてにしては納得の仕上がりかな。 グローバル作品として通用すると思う。 *NOISM、 https://noism.jp/bolero2020_news/

■義経千本桜ー渡海屋・大物浦ー

■作:竹田出雲ほか,監修:木ノ下裕一,演出:多田淳之介,出演:佐藤誠,大川潤子ほか ■シアタートラム,2021.2.26-3.8 ■「義経千本桜」五段中二段「渡海屋・大物浦(とかいや・だいもつのうら)」の上演です。 幕が開くと一ノ谷から壇ノ浦までの合戦回顧を早回しで見せてくれる。 科白は古典から現代まで混ざり合ってる。 音楽も結構激しい。 観ていて忙しい。 二段目に入ると早回しが終わり普通のテンポになる。 それでもリズムは狂いっぱなしです。 劇場に入ると国旗が掲げられている。 安徳帝の肩にそれを掛けたり、典侍の局(すけのつぼね)の亡骸に被せたり、また国歌が演奏される場面もある。 「いつだって歌舞伎はその時代の現代劇!」。 演出家の言葉通り京都や鎌倉を現代につなげている。 終幕、その国家への抗いとしての「イマジン」がとても効いていました。 「想像してごらん、国なんてないんだと、そして宗教もない・・、殺す理由もない、ただ今を生きているって・・」。 義経のその後を歌った曲に聴こえてしまった。 そして安徳天皇としてではなく娘お安として知盛からあずかった。 義経はこの歌で知盛にこう伝えたかったのでしょう。 *木ノ下歌舞伎公演 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/20210203kinoshitakabuki.html

■薮原検校

■作:井上ひさし,演出:杉原邦生,音楽・演奏:増田トッシュ,出演:市川猿之助,三宅健,松雪泰子ほか ■PARCO劇場,2021.2.10-3.7 ■新パルコ劇場は初めてです。 座席や通路の赤絨毯が旧劇場を思い出せてくれます。 客席も増えた(?) しかも角度が付いている。 少し急かな? でも観易い。 KAATホールのような激角度は頂けないが・・。 舞台背景の板に描いた汚らしい建物群から「下谷万年町物語」を思い出してしまった。 この建物と物語が繋がらなかったのは残念ですが、旧劇場が時々顔を出しますね。 そこに綱で区切った何もない空間で物語が進んでいく。 日本橋も綱が二本掛かっているだけです。 そして語り部盲太夫とギター演奏者が道案内役として上手に座っている。 幕が開き白杖を持った坊主が登場した途端ストーリーが甦りました。 ラジカル度が高い。 歌舞伎風でも荒々しさがある。 主役市川猿之助に合わせた演出でしょうか? 盲人たちの存在感が迫ってくる。 どこかギクシャクしているがこれがまた新鮮です。 舞台と客席の間にライトカーテンを挟んで場面を切り替えるのが目新しい。 しかし音響が気になりました。 マイクが出しゃばり過ぎていてシラケる場面もあった。 それは太夫にも言える。 演奏が入るとマイクを高くしている。 役者の生の声を聴きたいのに近頃それが叶わない。 音響以外は楽しく観ることができました。 帰りは階段で1階まで下りたが上階劇場の欠点は旧劇場から引き継いでいました。 *劇場、 https://stage.parco.jp/program/yabuhara