■能楽堂三月「左近三郎」「須磨源氏」
*国立能楽堂三月定例公演の二舞台□を観る. □狂言・大蔵流・左近三郎■出演:大藏彌太郎,吉田信海 □能・観世流・須磨源氏■出演:西村高夫,福王和幸,村瀬堤ほか ■国立能楽堂,2025.3.4 ■「須磨源氏」では、光源氏が前場では老人として、後場では若き貴公子として登場する。 その姿が舞台に現れた瞬間、こちらの想像も一気に広がっていった。 しゃがれた声でゆっくりしゃべるシテを見ていると、あの光源氏も年老いてしまったのかと自然に納得させられる。 後場では声の調子を一変させ、早舞も爽快にこなす。 面は前場の「笑尉」から後場の「中将」へと変わるが、シテの体格のためか後場の面がやや大きく見え、どこかずんぐりした印象の光源氏になっていた。 これこそが当時の貴公子らしい気品として強く伝わってきた。 衣装も緑系で落ち着いた趣があり、「青鈍(あおにび)の狩衣」と記されていたが、舞台上ではより鮮やかに映っていた。 「なほも多生を助けんと、兜率天より、再びここに天降る」。 光源氏の言い訳にも聞こえる。 ただただ此岸が恋しいと素直に言えばよいのに、と感じてしまった。 狂言「左近三郎(さこのさむろう)」は締りのよい構成の作品である。 猟師と禅僧が、「殺生せよ、殺生せよ、刹那も殺生せざれば、その身地獄へ矢のごとく」「善悪不二」といった禅宗の戒律をめぐって問答を交わし、最期には両者が納得して幕が下りる。 緊張感に満ちた舞台で、短いながらも愉快な時を過ごせた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2025/7047/