■フリーダとディエゴ、最後の夢
■作曲:ガブリエラ・リーナ・フランク,作詞:ニロ・クルス,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:デボラ・コルカー,出演:イザベル・レナード,カルロス・アルバレス,ガブリエラ・レイエス他 ■新宿ピカデリー,2026.7.10-16(メトロポリタン歌劇場,2026.5.30収録) ■フリーダ・カーロに関する美術展は30年前には頻繁に開催されていたが、近年はあまり耳にしなくなった。 しかし彼女の作品は、一度目にすると忘れがたい。 崩れゆく身体の叫びとメキシコの情熱が画面から立ち上がり、観る者の記憶に深く刻まれる。 近年では映画の主人公として語られることが多いが、画家がタイトルロールを担うオペラは珍しい。 彼女をどのように描いているのかを知りたくて、早速映画館へ足を運んだ。 なお、今回は夫ディエゴ・リベラにも多くの時間が割かれているが、彼については私自身ほとんど知識がない。 オペラは二幕構成で、1950年代のメキシコの風景が舞台上にぎっしりと詰め込まれている。 オフレンダ(祭壇)を見ていると、子どもの頃の<お盆>を思い出してしまった。 文化は異なるはずなのに、どこか懐かしさを呼び起こす場面が多い。 そしてチェレスタやマリンバを取り入れた幻想的な音楽が、メキシコの匂いをそっと連れてくる。 物語は「死者の日」を入口に、死後の世界を描き出していく。 冥界の番人カトリーナは恐ろしい存在である一方、フリーダは死者として登場するが、どこかおっとりしている。 この世に戻っても冥界の掟を破り、最後にはディエゴを道連れにしてしまう、それもまた人生だと言わんばかりに。 ストーリーはやや締まりに欠けるが、全体として心温まる舞台であり、西欧の冥界オペラとは異なるおおらかさが漂っていた。 ところで、フリーダが着ていたコルセットに後半から<鎌と槌>が付けられたのを見て、私はエイゼンシュテインの映画『メキシコ万歳』へのオマージュではないかと勝手に解釈したくなった。 もう一つ、グレタ・ガルボの登場は場違いにみえたが、この作品との関係は今も不明である。 *METライブブューイング2025年作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/6910/