■未練の幽霊と怪物、「珊瑚」「円山町」

*「円山町」,「珊瑚」の2作品を観る.
■作・演出:岡田利規,音楽:内橋和久,謡:里アンナ,出演:アオイヤマダ,小栗基裕,片桐はいり他
■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2026.2.13-3.1
■いずれも能楽のフォーマットを応用した音楽劇である。 2021年上演の「挫波(ザハ)」「敦賀」が非常に刺激的だったので、今回も期待してチケットを購入した。
舞台は簡素ながらも橋掛かりが設けられ、囃子方が一人、地謡が一人座る。 幕が開いても照明は変化せず、客席が明るいままという設定が独特の緊張感を生む。 シテ役は直面で登場する。
「円山町」では仕事で成功しながら夜の街で他殺に遭った、表裏のある女性がシテとして現れる。 「珊瑚」では沖縄・辺野古の米軍基地建設で滅ぼされた湾の珊瑚がシテとなる。 どちらも「社会とその歴史の犠牲者」である共通点を持つ存在だ。
前場では、まずワキが状況を語り、前シテが現れて過去を振り返る。 中入りではアイが物語を補足する。 囃子の演奏を背景に、役者と地謡の詞章が絡み合い、舞台に緊張感が生まれる。 後場に入ると科白は極端に少なくなり、後シテの舞が長く続く。 その舞(ダンス)は次第に激しさを増し、狂おしいまでの表現へと向かう。
両作品とも、犠牲者の姿を言葉よりもパフォーマンス的なダンスで表現しているように感じた。 「珊瑚」のシテは人間ではないため、ダンスと謡いだけで十分に世界観が伝わる。 しかし「円山町」では、後シテが心の内を詞章として吐露する場面がもっと多くてもよかったのではないだろうか。 なぜ此岸へ戻って来たかが曖昧なままである。 また、両作品の似た構造から一歩抜け出せたように思う。
岡田演出特有の、ゆっくりと捻りの効いた身体の使い方と非感情のような発声は、能の形式にとても馴染んでいた。 また、アイ役片桐はいりによる忙しい語りが舞台にリズムを与えていた。 役者たちの身体が異化されていく面白さが、目の前で立ち上がる舞台だった。
さらに渋谷という繁華街の空気感、沖縄のサンゴ礁の広がりといった、場所性を反映した衣装が視覚的な楽しさを添えていた。 特に「珊瑚」の後シテの衣装は、色彩とデザインで海中世界を想起させ、観る者の想像力を刺激していた。
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