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■東京ゴッドファーザーズ

■原作:今敏,台本:土屋理敬,演出:藤田俊太郎,出演:松岡昌宏,マキタスポーツ,夏子ほか ■新国立劇場・小劇場,2021.5.12-30 ■舞台(パティ)を客席(バンズ)で挟んだ(バーガー)構成です。 床を上下して役者を入退場させたり、天井に沢山のゴミ袋を吊るして看板や広告を写すのも凝っていますね。 ホームレスも新宿で集めてきたのでしょうか!? 主人公ハナ、ギン、ミユキの3人が捨て子の親を、・・新宿、総武線で、錦糸町、タクシーで、月島、自転車で、品川を、探し歩く物語です。 親探しと都市風景を交互に進めていくロードムービーの形を取っている。 途中、彼ら3人の過去がフラッシュバックのごとく現前したり、赤ん坊に小さな奇跡が起こったりする。 それにしても場面間の繋がりが薄いですね。 変わりゆく風景を科白に塗りこめようとしたが上手く融合しなかった? 風景に力を入れ過ぎたのかもしれない。 探し出した両親もトラウマは深いが、彼らも都市に漂うばかりです。 観客側の感度を上げないとアツくならない。 移り行く映画的リズムを崩さず演劇的感動を得るにはどうしたらよいのか? 原作は漫画アニメと聞いています。 早速に観たいですね。 ところでハナは赤ん坊を思いやる複雑な気持ちが上手く表れていて存在感がありました。 新しい家族制度を作れる位置に彼はいたが、でも全てが古いまま幕が下りてしまった。 *NNTT演劇2020/21シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/tokyo-godfathers/

■セルセ

■作曲:G・F・ヘンデル,演出:中村蓉,指揮:鈴木秀美,出演:澤原行正,本田都,長田惟子,田中夕也,塚本正美ほか,演奏:ニユーウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ ■めぐろパーシモンホール・大ホール,2021.5.22-23 ■生舞台はやはりイイわね。 流行りの映像配信は別物だと分かる。 今日は主要歌手7人のうち5名が二期会デビューとのこと、しかもダンサー兼振付の中村蓉も演出としてのデビューなの。 期待に添い、始まりから歌手がダンスで挨拶とは嬉しい。 6名のダンサーは背景のように煩雑に登場する。 ヘンデル・オペラはダンスに合うと思う。 あとモーツァルトもね、それとロッシーニはどう? 舞台はシンプルな階段と扉だけ。 その扉から姉妹の部屋やバーが飛び出してくる。 軽やかなダンスと美術で「コメディタッチの恋物語」がより強く感じるわね。 「オンブラ・マイ・フ」は、先ずはセルセが、後半のはじめにアルサメーネ、そして終幕に再びセルセで3回は歌われたはず? この歌を聴くといつも宗教的感動が押し寄せてくる。 解説に「(史実)クセルクセスは樹に惚れこみ、警備の歩哨までつけた・・」(三ヶ尻正)とある。 やはり樹木信仰が長く伝わっていたと思う。 歌詞「飲み、食い、それだけでも生きている価値がある」にも信仰に沿う素朴な人生観が現れている。 演奏は梅雨空を忘れる枯れた爽やかさがあった。 歌唱はロミルダが安定していたかな? ダンスをしながら歌うのは苦手な歌手もいるはず。 でも皆若いから気にしない! しかも演出が休まず歌手たちを引っ張っていたと思う。 久しぶりの楽しい舞台だった。 *二期会創立70周年記念公演,ニューウェーブ・オペラ劇場 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/serse2021/index.html

■ニジンスキー

■振付:ジョン・ノイマイヤー,出演:アレクサンドル・リアブコ,カロリーナ・アグロエ,イヴァン・ウルバン他,ハンブルク・バレエ団 ■NHK.WEB(ハンブルク国立歌劇場,2017.5.25-27収録) ■先月の「 ゴースト・ライト 」だけでは物足りなかったので、もう一本ハンブルク・バレエ団を観ることにした。 この2本でノイマイヤーの近況が凡そ見えてきた。 振付家得意のドラマティック・バレエである。 ニジンスキーの妻はもちろん彼の両親や兄妹も登場する。 しかも同性愛者として、これは力の入る作品だろう。 それはニジンスキーとディアギレフの独特な振付に表れている。 二人の愛情表現を含め前半は見応えがあった。 薔薇の精、奴隷、ペトルーシュカは別ダンサーが当時の姿で踊るがニジンスキーの分身のようだ。 また彼の後衛レオニード・マシーンもテニス姿で登場する。 後半に入ると激しく踊る場面が多くなる。 ここで舞台は1919年1月19日のニジンスキーの静養先であるスイスのホテルであることを思い出させる。 前半は彼の回想だったのかもしれない。 そして終幕、妻と踊ったあとに苦しみに悶えながら幕が下りる。 美術と衣装は引き締まっていてドラマを湿らせない。 空気は張り詰めていた。 舞台にピアノを置くのはノイマイヤーの好みかな?  ニジンスキー役のアレクサンドル・リアブコは特に目立つダンサーではなかった。 他ダンサーに埋もれてしまい、ちょっと残念。  後半の2幕はカメラの動きが激しくなり戸惑ってしまった。 カメラマンが代わったのか? ショットが短すぎる、しかもダンサーのアップが多い。 これで舞台を楽しむ余裕が半減してしまった。 舞台の撮影はどっしり構えて欲しい。 *バレエ団、 https://www.hamburgballett.de/de/spielplan/stueck_repertoire.php?SNr=448 *「ブログ検索」に入れる語句は、ノイマイヤー

■タンホイザー  ■バイロイトとザルツブルク、新型コロナウィルスが変えた夏

□タンホイザー ■作曲:R・ワーグナー,演出:トビアス・クラッツァー,指揮:ワレリー・ゲルギエフ,出演:ステファン・グールド,リーゼ・ダヴィッドセン他,演奏:バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団 ■NHK.WEB(バイロイト祝祭劇場,2019.7.25収録) ■ドキュメンター映画(下記)といっしょにバイロイト音楽祭2019年公演の「タンホイザー」をみる。 ・・ヴェーヌスベルクのサーカス団が車で登場する幕開きは驚きの光景だわ。 なんとハインリッヒがクラウン姿なの。 そのサーカス団は歌合戦に再び現れる。 この場面も結構な衝撃力がある。 1848年ドイツ三月革命でワーグナーが掲げた?マニフェストをサーカス団はいつも持ち歩いている。 それは「意志における自由、行為における自由、享楽における自由」と書かれている。 そしてローマ巡礼から戻った終幕、ハインリッヒは車を運転しながらエリーザベトと共に昇天していく・・ 圧倒される終わりは、デッカードがレイチェルを連れ出し車で旅経つ「ブレードランナー」と重ね合わせてしまった。 アンドロイドを殺してきたデッカードは「彼らも同じ人間だ」と悟る。 テーマは違うが両作品の通底は響き合っている。 今回は文句なしの面白さがあったわよ。 ステファン・グールドの安定感のある、そしてリーゼ・ダヴィッドセンのノビのある歌唱は聴きごたえ十分。 字幕も正統に近い。 バイロイトは目を離せない。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019101628SA000/index.html?capid=nol_4_P1622 □バイロイトとザルツブルク,新型コロナウィルスが変えた夏 ■出演:クリスティアン・ティーレマン,クラウス・フロリアン・フォークト他 ■NHK.WEB(NHK,2020.11.8放送) ■二大音楽祭の2020年近況をまとめたドキュメンタリー映画。 コロナ禍で観劇が少なくなったのでWEBでこの映画を探し出したの。 バイロイトは早々に中止を決定したのね。 ザルツブルクは8月開催になんとかこぎつける。 イエイ!モーツァルト。 でも公演数は半減、作品はカット、観客数は半数。 どうしようもない。 開催することで損益を少しでも合わせることで良しかな? 来年を期待しましょう。 *NHK

■アンティゴネ、時を超える送り火

■作:ソポクレス,演出:宮城聰,出演:美加理,本多麻紀,赤松直美ほか,劇団:SPAC ■観劇三昧.WEB(アヴィニョン法王庁中庭,2017.7.6-12収録) ■ふじのくにせかい演劇祭では「おちょこの傘もつメリー・ポピンズ」と「アンティゴネ」を観る予定が都合で叶いませんでした。 残念です・・、特に唐十郎作を見逃したのは。 後者はWEB配信でみることにしました、アヴィニョン演劇祭(2017年)での録画ですが・・。 法王庁建物を背景に、中庭は池?それとも水を張ったのか? 役者たちは水の上で演技をすることになる。 画面はちょと暗い。 動き(ムーバー)と声(スピーカー)を分離した二人一役の為か音声が澄んでいる。 壁に反射していることもある。 ゆったりした白衣装でゆっくりとした動きが能を連想させます。 入退場での役者たちが踊る姿は静かな盆踊りですね。 日本的な動きや発声が多い。 しかしカメラワークが頂けない。 ムーバをまったく映さないからです。 演出家得意の二人一役は、ムーバとスピーカが一体となるような感覚、つまり声が身体に近づき一つになる時に感動が訪れるのです。 映像はこれを無視している。 まっ、しょうがないですか。 打楽器演奏やコロスの合唱場面は舞台風景にとてもマッチしていました。 *アヴィニョン演劇祭2017年作品 *SPAC、 https://spac.or.jp/2017/antigone_avignon *ふじのくにせかい演劇祭2021、 https://festival-shizuoka.jp/

■ランスへの旅

■作曲:G・A・ロッシーニ,演出:ルカ・ロンコーニ,指揮:オッターヴィオ・ダントーネ,出演:パトリツィア・チオーフィ,ダニエラ・ナルセロナ他,演奏:ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団 ■ライブ・ビューイング・ジャパン.WEB,2021.3.18-(ミラノ・スカラ座,2009年収録) ■1825年のシャルル10世戴冠式に参列する人々を描いた作品。 パリ郊外?の宿「金の百合亭」が舞台。 そこに各国の参列者が滞在して旅の一時を楽しんでいる・・。 舞台美術は白系でギリシャ・ローマ時代を意識しているようにみえる。 階段も多い。 ロッシーニ好みのエプロン(ピットと客席の間にある張り出し舞台)もある。 衣装も白を基本に原色を重ねて豪華だけど軽快な感じがするわね。 登場人物はフランスやイタリアはもとよりスペイン、イギリス、ドイツ、ロシア人と多彩で肩書も伯爵、軍人、詩人、医者、学者など幅広い。 他愛の無い恋愛、肩書の自慢や母国の慣習等々の話で進み、予測できない展開の面白さがある。 1幕終わり、リヨン行を都合で止めた一行は2幕初めで行先をパリに変更する。 最期のパーティを催すことになり参列者はお国自慢の歌を披露するが、これがまた楽しい。 そしてシャルル10世が登場して幕が下がる。 戴冠式の期間限定作品らしく物語の無い自由度があり「ロッシーニの愉悦、イタリア・オペラの陶酔」がいつも以上に軽やかに体感できる舞台だった。 *ミラノ・スカラ座オペラ配信 *公演サイト、 https://liveviewing.jp/scalaopera/ *「ブログ検索」に入れる語句は、ロッシーニ