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■カプリッチョ Capriccio

■作曲:R・シュトラウス,指揮:クリスティアン・ティーレマン,出演:カミッラ・ニールント,クリストフ・ポール他,演奏:ドレスデン国立歌劇場管弦楽団・合唱団 ■NHK・配信,2021.8.22-(ドレスデン歌劇場,2021.5.4-8収録) ■・・主人公は若くして未亡人になった伯爵夫人マドレーヌ。 彼女主催のパーティに詩人・音楽家・女優・演出家、そして夫人の兄が集まる。 そこでの議論は「言葉か、音楽か」。 職業上の立場も加味されながら4人の芸術論が熱を帯びていく。 詩人と音楽家は夫人との三角関係にも熱中してくる。 彼女は演出家にオペラ創作を依頼する。 演出家は今日の集会をそのままオペラに乗せることを考える。 皆は納得し解散する・・。 終幕、三角関係に夫人は悩むの。 詩人と音楽家の背後にある詩と音楽まで関係が広がるからよ。 結局は詩も音楽も両方が大事ということになる。 それは詩人も音楽家も、つまり両者を取るということかしら? ここは見せずに幕が下りてしまった! フランスのロココ様式に沿っている、ドイツ語の硬さは感じるけど。 サロン文化の一コマを切り取った物語がとても新鮮ね、 主人公マドレーヌの存在感には満足よ。 作品の面白さはオペラの中でオペラを含めた芸術を論ずるところかな? 舞台好きなら嬉しくなる内容だわ。 シュトラウス最晩年のサービスと言ってよい。 喜劇作品として少し湿っていたのは無観客で収録した為かもしれない。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/MJQ54KXG47/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 シュトラウス

■4 FOUR

■作・演出:川村毅,出演:今井朋彦,加藤虎ノ介,川口覚,池岡亮介,小林隆,劇団:ティーファクトリー ■あうるすぽっと,2021.8.18-24 ■科白量の多い舞台に出会ったのは久しぶりかな? 5人の男が登場しクジ引きを始める。 役に選ばれた4人は一人づつ喋り出す・・。 その役とは裁判員、法務大臣、執行人、死刑囚らしい。 話題は死刑(制度)について。 一通り話し終えると役を交代するの。 ここで演出家のゲーム好きを思い出してしまった。 つまりどんでん返しがあるということね。 後半に入ると少しづつゲームの規則から外れていく。 それでも一人づつ喋り続けるのを止めない。 執行に失敗して死刑囚が死ねない状況に陥った話もある。 死刑制度をなぜ無くせないのか? 前半は緊張を維持できたがモノローグの舞台としては長すぎる。 数々の戯曲賞をとっている作品はさすが真面目だわ。 でもドンデン返しは入れて頂戴! *第16回鶴屋南北戯曲賞 *2012年度文化庁芸術選奨文部科学大臣賞受賞作品 *劇場、 https://www.owlspot.jp/events/performance/4_1.html *「ブログ検索」に入れる語句は、 川村毅

■完全版マハーバーラタ、愛の章・嵐の章

■演出:小池博史,出演:LeeSweeKeong,小谷野哲郎,DanangPamungkas他 ■なかのZERO・大ホール,2021.8.20-23 ■前編「愛の章」、後編「嵐の章」で構成され上演時間は合計6時間。 人物相関を予習したが頭に入らない。 「わかろうとするな!」とチラシに書いてある。 でも「分かる」仕掛けが作られていた。 スケベなトリオ「三角関係」が登場し補足説明をしてくれる。 状況説明として字幕も表示される、科白は省かれているが。 なんと舞台は演劇と言うより舞踊に近い。 「踊ろうとせよ!」。 出演者をみると殆どがダンサーだった。 出身国もマレーシア、インドネシア、タイそして日本と多彩だ。 音楽も南アジア系?から琉球、能楽の囃子も演奏される。 舞台装置や道具類はシンプルでとてもいい。 衣装もお似合いだ。 ・・前半はバラタ族の繁栄を願っての産めよ増やせよである。 感情はパントマイムやダンスで表現するので深層は追えない。 ダンサーたちは持ち前の型や振付を持っているようだ。 お国柄が出ている。 そして一族はパンドゥ族とクル族に分かれていく。 ・・後半は両族の戦争を描く。 戦闘場面が次から次へと繰り出してくる。 微妙に違うがどれも同じにみえてくる。 背景に映像も映し出される。 ほぼ漫画だ。 これも補足説明のようだ。 戦いが終わり戦士たちは現代の旅行者に戻り、かつての戦場跡を観光しながら幕が下りる・・。 6時間を振り返っても残る場面がほとんどない。 個々のダンスや美術はとても印象的だが同じような場面の繰り返しがそれを消してしまった。 そして補足説明が過剰だ。 少ない科白を字幕にしたほうが物語としては効果的だったろう。 映像が入ると役者たちの身体が薄くなってしまう。 「三角関係」の三人はトリックスターのように混沌混乱でかき回して舞台像をひっくり返したと思う。 1988年6月に銀座セゾン劇場でピーター・ブルックの同作品を観ている。 9時間を越える上演だったがあまり覚えていない。 物語の面白さは出ていたと記憶している。 そこには中央アジアの匂いがあった。 今回は舞踊が東南アジアに近づけてくれた。 演劇と舞踊、中央アジアと東南アジア。 起点インドからの方向の違いが面白い。 よりアジアの身体を感じさせてくれた。 *東京2020NIPPONフェスティバル参加作品 *作品、

(中止)■どん底

■作:マキシム・ゴーリキー,翻訳:神西清,演出:三浦基,出演:安部聡子,石田大,小河原康二ほか,劇団:地点 ■吉祥寺シアター,2021.9.4-11 ■「9月4日(土)~11日(土)に開催予定の「地点『どん底』」公演は、東京都の「緊急事態宣言」延長に伴い、公演の延期が決定いたしました」。 チケット購入後の中止は33本になってしまった。 コロナの勢いは当分続きそう。 *劇場、 http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2021/07/chiten-donzoko.html *「ブログ検索」に入れる語句は、 三浦基

■アメリカン・ユートピア

■監督:スパイク・リー,出演:デヴィツド・バーン,ジャクリーン・アセヴェド他 ■吉祥寺オデオン,2021.7.30-(ブロードウェイ・ハドソン劇場?,2020年収録・編集) ■デビッド・バーンと聞いて映画館へ急ぎました。 「ストップ・メイキング・センス」以来でしょう。 簾で囲まれたシンプルな舞台は出入りが自由でなんでもできる。 その中で裸足の演奏者が縦横に動き踊り回る。 バーン自身も喋り歌いまくる。 脳の話から始まり、選挙投票や人種問題など話題も活動的です。 プロテストソングも入り全21曲です。 そこに響き渡るリズムは中南米系が入っていますか? 最高です。 日本では珍しい、社会性を含んだ人生を俯瞰するような歌詞ですね。 しかも人称が単数形ではない。 私たちとあなたたち、彼らと彼女ら、多くが複数形です。 その複数形の人々を一つに繋げようとする。 舞台から降りて演奏しながら観客席を回るエンディングは素晴らしい。 最高でした。 *映画com、 https://eiga.com/movie/94691/

■MeMe

■演出:三東瑠璃,音楽:後藤正文:舞団:CO.RURI MITO ■vimeo.配信,(三鷹芸術文化センター・星のホール,2019.2.5収録) ■三東瑠璃をもう1本みることにする、映像だけど。 ・・8名?の女性ダンサーが床に重なるようにうずくまっている。 ゆっくりと離れたりくっついたりしている。 2・3人で組になり絡まり合い舞台に広がる。 あるいは一人。 動きが止まる。 同期が取れてくる。 志向性がみえてくる。 そして形つくられ崩れる・・。 カメラが悪い。 アップが多過ぎて舞台に散らばるダンサーたちの関係がみえない。 全体を映した場面は5%もなかったかな? カメラマンも悩んだとおもう。 記録用としても使えない。 画面を二分割して全体と部分を同時撮影するしかないわね。 ところでダンサーの絡み合いはアジア的にみえた。 哺乳類を感じる。 それと時間の捉え方がダンサーは無関心にみえる。 受け身に近い。 ダンサー自身が時間を創り出す舞踏との違いかもしれない。 電波ノイズのような音楽はとてもいい。 アフタトークの追加映像をみる。 先日と同じ後藤正文との対談よ。 「最初は音楽無しで粘土をこねくりまわすように振付をしていく・・」。 なるほど。 この作品は生舞台で観たらきっと気に入ったと思う。 *アーツカウンシル東京、 https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/support/program/43159/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 三東瑠璃

■MATOU

■振付・出演:三東瑠璃,音楽:熊地勇太,衣装:稲村朋子 ■川崎市アートセンター・アルテリオ小劇場,2021.8.12-13 ■舞台に何か置いてあるのが見える。 薄暗いのでよくわからない。 ダンサーの背中だと分かるのに時間がかかってしまった。 姿勢がはっきりするのはもっと時間が必要なの。 白い腕がみえてきて、うつ伏せで腰を持ち上げた姿勢だとわかるのに10分は掛かったかしら?  軟体動物のような柔らかい身体を持っている。 転げまわっても身体部位の繋がりが読めない。 顔は見せない。 立ち上がってもそれは同じ。 後ろに反り返っているからよ。 観客席からみると顎と喉仏しかみえないので異様な歩き姿にみえる。 ・・。 人形のようだが生きた身体を保っている。 舞踏のようで舞踏でない。 パフォーマンスのようでそうではない。 エロチシズムもギリギリで抑えている。 全てが境界線上を保っている。 面白いダンスだわ。 衝撃はある、でも何かが不足している。 終わり方が中途半端なためだと思う。 簡単な方法として、終幕の動きを最初に戻すのはどうかしら? 歩く姿から床に丸く閉じてフェードアウトするの。 ループ構造をつくり作品を完結させる。 アフタトークを聞く。 出席は三東瑠璃と音楽家後藤正文。 使った曲の話が多い。 三東にとって音が身体に<当たる>曲は合わないらしい。 メロディーやビートがあると感情が貼り付いてしまうから。 身体は音楽と非同期に動かしたい。 衣装は今回はじめて黒を使用したとのこと。 見せたくない部分を隠したかったから。 以前の衣装は肌色だったらしい。 このようなトークだったかな。 糊代のある作品とダンサーにみえた。 *劇場、 https://kawasaki-ac.jp/th/archives/detail.php?id=000416&year=2021 *追記・・ブログを書いた後に三東瑠璃と石井達朗の対談を読む(2021年7月28日実施)。 この作品は2015年初演で既に6年が経過してるとのこと。 この間、演出的な部分は全て削ぎ落したことを知ったの。 ブログは勘違いしていたようね。

■ヤコブの井戸  ■長崎の聖母

□ヤコブの井戸 ■作:ディートハルト・レオポルド,演出・出演:清水寛二,出演:殿田謙吉,小笠原弘晃,みょんふぁ他,能団:銕仙会 ■座高円寺,2021.8.4-8 ■場内には能舞台が作られています。 橋掛もあり、鏡板にはアクション・ペインティング風の絵が描かれ、針金で吊った4本の柱は傾いている。 前衛能舞台と言ってよい。 スカッとしていて気に入りました。 ・・旅する師弟らしきユダヤ人が井戸の前にやってくる。 ワキツレは自分のことを<僕>と言う。 でも違和感がない。 そこへパレスチナの老婆が登場し身上を語りだす。 ユダヤの男と水を分かち合ったこと、子供たちを戦争で失ったことなどを話して立ち去る。 ここで猫が登場するが二千年も生きているアイのようです。 猫の話から、女が水を与えた男はイエスだったのかもしれない!? 物語が俄然輝きだします。 後場に入り、女は若いサマリア人となって登場する。 女は数千年に続く宗教と民族の争いを嘆き踊る。 すると井戸から水が湧きだし、女はユダヤ人と水を分かち合ってから去っていく・・。 久しぶりに感動しました。 舞・謡・囃子が一つにまとまり迫ってきたからです。 能がもつ劇的さでしょう。 新作能とあったがとても練られていた。 イエスは登場しませんが、この名前を感じることで物語の時空が深まったと思います。 佐藤信と清水寛二のアフタートークを聞くことにしました。 この作品はワルシャワ・ウィーン・パリで公演を行い、ペルシア女の能面は新しく作った等々。 能では演出と演技は同時進行する、演出家は非難されたときに責任を負う為にいる、能と違って現代演劇は帰る家がない、観世榮夫は能の一部を切り取って出演するのを嫌がった等々。 以上がトークの内容です。 □長崎の聖母 ■作:多田富雄,演出・出演:清水寛二,出演:大日向寛,小笠原由,歌唱:波多野睦美,能団:銕仙会 ■座高円寺・WEB,2021.8.7-(座高円寺,2021.8.7収録) ■公演日時の都合がつかずWEB配信で観ることにしました。 ・・巡礼者が長崎浦上天主堂を訪れ、そこで老女に出会う。 女は1945年8月9日の被爆の有り様を語り去っていく。 そこで巡礼者はアイ役の修道僧と祈りをささげる。 すると聖歌が聴こえるなか女が現れる。 女は聖母マリアなのか? 女は平和と救済を祈り舞う・・。 メッセージの強い作

(中止)■ニュルンベルクのマイスタージンガー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:大野和士,演出:イェンス=ダニエル・ヘルツォーク,出演:トーマス・ヨハネス・マイヤー,ギド・イェンティンス,アドリエン・エレート他 ■東京文化会館・大ホール,2021.8.4-7 ■「オペラ夏の祭典2019-20「ニュルンベルクのマイスタージンガー」東京文化会館公演につきまして、公演関係者の新型コロナウイルス感染が確認され、公演の準備が整わないことから、8月4日(水)に予定していた公演を中止することとしました・・」。 昨年からのチケ購入後の中止は32本目。 この作品は2020年6月に中止しているので2度目の不運よ。 3度目の正直、今年11月の新国立劇場公演に期待するしかない。 *劇場、 https://www.t-bunka.jp/stage/10110/