■完全版マハーバーラタ、愛の章・嵐の章

■演出:小池博史,出演:LeeSweeKeong,小谷野哲郎,DanangPamungkas他
■なかのZERO・大ホール,2021.8.20-23
■前編「愛の章」、後編「嵐の章」で構成され上演時間は合計6時間。 人物相関を予習したが頭に入らない。 「わかろうとするな!」とチラシに書いてある。 でも「分かる」仕掛けが作られていた。 スケベなトリオ「三角関係」が登場し補足説明をしてくれる。 状況説明として字幕も表示される、科白は省かれているが。
なんと舞台は演劇と言うより舞踊に近い。 「踊ろうとせよ!」。 出演者をみると殆どがダンサーだった。 出身国もマレーシア、インドネシア、タイそして日本と多彩だ。 音楽も南アジア系?から琉球、能楽の囃子も演奏される。 舞台装置や道具類はシンプルでとてもいい。 衣装もお似合いだ。
・・前半はバラタ族の繁栄を願っての産めよ増やせよである。 感情はパントマイムやダンスで表現するので深層は追えない。 ダンサーたちは持ち前の型や振付を持っているようだ。 お国柄が出ている。 そして一族はパンドゥ族とクル族に分かれていく。 ・・後半は両族の戦争を描く。 戦闘場面が次から次へと繰り出してくる。 微妙に違うがどれも同じにみえてくる。 背景に映像も映し出される。 ほぼ漫画だ。 これも補足説明のようだ。 戦いが終わり戦士たちは現代の旅行者に戻り、かつての戦場跡を観光しながら幕が下りる・・。
6時間を振り返っても残る場面がほとんどない。 個々のダンスや美術はとても印象的だが同じような場面の繰り返しがそれを消してしまった。 そして補足説明が過剰だ。 少ない科白を字幕にしたほうが物語としては効果的だったろう。 映像が入ると役者たちの身体が薄くなってしまう。 「三角関係」の三人はトリックスターのように混沌混乱でかき回して舞台像をひっくり返したと思う。
1988年6月に銀座セゾン劇場でピーター・ブルックの同作品を観ている。 9時間を越える上演だったがあまり覚えていない。 物語の面白さは出ていたと記憶している。 そこには中央アジアの匂いがあった。 今回は舞踊が東南アジアに近づけてくれた。 演劇と舞踊、中央アジアと東南アジア。 起点インドからの方向の違いが面白い。 よりアジアの身体を感じさせてくれた。
*東京2020NIPPONフェスティバル参加作品