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■冬の旅 Winterreise

■作曲:F・シューベルト,振付:クリスティアン・シュプック,指揮:ベンジャミン・シュナイダー,管弦楽:フィルハーモニア・チューリヒ,歌唱(テノール):マウロ・ペーター,舞団:チューリヒ・バレエ団 ■NHK・配信,2021.9.19-10.3(チューリヒ歌劇場,2021.2.12-13収録) ■小雪が舞う冷え冷えする舞台に蛍光灯の照明、黒系衣装に青白い化粧。 それに歌詞が呼応する。 死に寄り添う若き旅人。 にもかかわらずダンサーは身体の中心から手足をキリッと伸ばし機械のように正確な動きをする。 これで歌詞とダンスの関係に違和感が最初は続いた。 「冬の旅」は24の歌曲からなる。 舞台もそれに沿う。 後半に入り少しずつ舞台と同期していくのが分かる。 違和感が薄れていく。 旅人と同じ道を歩いている感覚に陥る。 終曲の「辻音楽師」は旅人が年老いた楽師についていく歌唱だが劇的である。 旅人は<あるがままに受け入れる>心境に達したのだ。 同時に24曲が一つにまとまり感動としてやってくる。 作曲した頃のシューベルトのことなど色々と考えてしまった。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/LRQY51M11G/

■娼婦・奈津子

■作:趙博,演出:金守珍,出演:広島光,島本和人,蜂谷眞末ほか,劇団:梁山泊,演奏:趙博,ジャン・裕一,神谷沙奈美ほか ■スズナリ,2021.9.11-20 ■いつもの梁山泊とは違ったリズムを持つ舞台でした。 二つあります。 それはバンドが入り役者も演奏し歌う場面が多い、そして法廷場面が長かったためです。 主人公奈津子が殺人を犯してしまった! ロック系の演奏と殺人罪の裁判を如何に同期させるかが見所です。 どうして奈津子が娼婦になったのか? 裁判で明らかにされていく。 義父との関係や母の傍観など衝撃的な過去が暴かれるが迫ってこない。 物語の深みへ降りていくところを演奏が代替したからでしょう。 奈津子は娼婦という<職業>にプライドを持っていた。 娼婦は職業や性の差別から逃れられないのか? 人生の大事な分岐点では報酬(カネ)は主役になれない! その答えを音楽で体感し考えてくれと言っているような舞台でした。 趙博の作品を金守珍が演出する舞台では演出家がいつも遠慮している。 作家に敬意を払っているとみました。 *新宿梁山泊第71回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/113596

■ワーグナーの夢、メトロポリタン・オペラの挑戦

■監督:スーザン・フロムスキー,出演:ロベール・ルパージュ,デボラ・ヴォイド,ハンター・モリス他 ■MIRAIL・配信,2021.9.3-27(アメリカ,2012年作) ■ワーグナーのドキュメンタリーを続けてもう1本みることにしたの。 それは2010年にMETで上演されたロベール・ルパージュ演出の「指輪」制作過程を撮ったドキュメンタリー作品。 副題は「ニーベルングの指輪の舞台裏」。 もちろん当ブログに感想は載せているわよ。 当時のMETは動員数が減少していた。 しかも数十年にわたり舞台は変化してこなかった。 ワーグナーも1876年のバイロイト初演を認めていない。 ここで歌劇場の発展とワーグナーの夢を叶えるためルパージュが登場したということね。 今回は数十枚の板を串刺にしてグルグル回転する床が大きな話題かな。 重量は40トンもある。 ルパージュは北欧神話「エッダ」と地殻変動を繰り返すアイスランドをイメージしてこの舞台を作ったらしい。 でも本番までの道のりは大変、見ていてそう思った。 METマネジャーのピーター・ゲブルは「守りに入ったら(失敗したら)、国外に去る」とまで言っている。 「ラインの黄金」初日は(危険なので歌手の替りに)スタントマンがヴァルハラへ神々として入城するところが機械の故障でできない。 「ワルキューレ」ではブリュンヒルデが転んでしまう。 「ジークフリート」から指揮者が都合で交代、しかも本番4日前に主役も交代。 「神々の黄昏」は機械も正常稼働し問題なく幕が下りる。 (過去のことだけど)公演が無事に終わりホッとしたわよ。  この作品は映画館で観たが制作過程をみると生舞台でもう一度観たくなってしまった。 *METライブビューイング、 https://www.shochiku.co.jp/met/news/3690/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 ルパージュ

■さまよえるオランダ人  ■ワーグナー信仰、バイロイトから世界へ

□さまよえるオランダ人 ■作曲:R・ワーグナー,演出:ドミートリ・チェルニャコフ,指揮:オクサーナ・リーニフ,出演:ジョン・ルンドグレン,アスミク・グリゴリアン他,管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団 ■NHK・配信,2021.9.12-17(バイロイト祝祭劇場,2021.7.25収録) ■・・海も船もみえない無機質で小綺麗な街の、それは酒場であり広場でオランダ人船長は彷徨い続ける・・。 バイロイト得意の新解釈にはいつも戸惑ってしまう。 首吊りの光景は序幕からまさかの驚きね。 「・・母を死に追いやった男と社会に、復讐を果たす為に帰還した」と説明があった。 縊死した女は船長の母かも。 二幕の集会場で彼は銃を抜いて街の人を撃ってしまう。 そして三幕、街中に火の手が上がるなか(ゼンダの母)マリーはオランダ人を撃ち殺して幕が下がる。 ・・! 「さまよえるオランダ人」の伝説を皆が信じ込んでいる、特にゼンダはね。 ゼンダの恋人エリックもゼンダがオランダ人と去る夢をみる。 未来はすべて決められているの。 この舞台はマリーだけがまともな夢を見ていたということかしら? 4人の会食場面でもそれが分かった。 うーん、でも混乱する。 カーテンコールではゼンダへの拍手が大きかった。 次がエリックかな。 拍手の量と質で評価が分かるの。 船長は少し拍手が弱かった。 演出家が登場した時はブーイングが混じっていたわね。 演出の評価は分かれるとおもう。 ワーグナーの時空は突破できたけど着地は大きく揺れていたからよ。 現代社会に繋がる問題を感じさせたのは面白かったけど。 それでも、ワーグナーは転んでもワーグナー、を証明した舞台だった。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/YZQ9KM4JQ5/ □ワーグナー信仰,バイロイトから世界へ ■NHK・配信,2021.9.13-17(ドイツ,2021作成) ■世界のワーグナーファンを訪ね歩く旅なの。 先ずはヴェネツィアへ。 彼はこの地で客死している。 次にバイロイトへ。 ここで曾孫カタリーナ・ワーグナーが登場。 そして米国ニューアークへ。 ここから音楽評論家(名前は忘れた?)がナビゲーターになる。 スターウォーズもロード・オブ・ザ・リングもマトリックス

■ある八重子物語

■作:井上ひさし,演出:丹野郁弓,出演:篠田三郎,横島亘,藤巻るも他:劇団民藝,こまつ座 ■NHK・配信,2021.9.5-19(紀伊国屋サザンシアター,2021.6収録) ■時代は1941年から46年、柳橋で経営する古橋医院に出入りする人々を描いている作品です。 茶の間には水谷八重子の写真が飾ってある! ここの住人、院長から看護師事務員そして女中まで新派が好きで好きでたまらない。 日々のなか鏡花の名セリフを競い合っている。 医院は新派中毒患者で一杯です。 舞台には時代の雰囲気が漂い町内の小さな事件や日常のこまごまとした生活がみえてきます。 しかし新派の話題が戦中戦後の暗さを吹き飛ばしている。 とは言っても大きな事件は登場しない。 院長と芸者花代との恋愛事件、芸者ゆきえの弟が「女形の研究」を論じ演じる場面、花代の父が打つ拍子木の回想くらいです。 井上ひさしが持つ、いつもの毒が無い。 たぶん新派への敬意を表す作品として作ったのかもしれない。 それで納得しました。 *劇団民藝+こまつ座公演 *劇団民藝、 https://www.gekidanmingei.co.jp/performance/2021special_aruyaekomonogatari/ *「ブログ検索」に入れる語句は、 井上ひさし

■SICF20 Winners Performance

■スパイラルホール,2021.9.11-12 *SICF(スパイラル・インディベンデント・クリエイターズ・フェスティバル)パフォーマンス部門受賞者3組による共演(下記□3作品)。 □FLAG ■振付・出演:加藤弥生,出演:加藤裕子,杉村優理恵,西村唯起子ほか,舞団:ハハダン ■客席に小学生が多かったのは「ハハダン」の応援に来ていたのね。 この舞台だけみて帰っていったからよ。 それにしても動きの多くが素人舞団のようだった。 それは音楽に一番の原因がある。 50年前の映画音楽を繋げたような勇ましい曲は大きな布を旗のようになびかせるのには良いけど・・、ダンサーを粗くさせてしまった。 元気が取柄の舞団かな。 そして、すべての母にエールを! □住処 ■振付:三東瑠璃,出演:安心院かな,金愛珠,堺佑梨ほか,舞団:Co.RuriMito ■三東瑠璃の作品はこれで3本目。 床に折り重なり這うようにゆっくり動き回る6人。 アクロバット的な要素が多いかしら? 音楽も照明も含めて完成度が高い。 □パン ■振付:橋本ロマンス,出演:YO,HIBARI,MINOR他 ■「都市、止めどなく生成される焦燥感と怒り、行き場のないエネルギー・・」。 原宿より動きの激しい新宿が似合う舞台ね。 都市風景の断片を繋げていく若者の姿が巧く表現されている。 少しバラケ過ぎている感じがしないでもない。 照明が巧い、衣装も良し。 橋本ロマンスの生舞台は初めてよ。 ダンスはコマメに足を運ばないと観客として錆びついてしまいそう。 *劇場、 https://www.spiral.co.jp/topics/sicf20-winners-performance *「ブログ検索」に入れる語句は、 三東瑠璃

■歌舞伎座八月「真景累ヶ淵」「仇ゆめ」「源平布引滝」「伊達競曲輪鞘當」「三社祭」

*歌舞伎座八月公演(第二部・第三部)の下記□5作品をWEB経由で観る。 ■MIRAIL・配信,2021.9.2-22(歌舞伎座, 2021.8収録) □真景累ヶ淵,豊志賀の死 しんけいかさねがふち,とよしがのし ■口演:三遊亭円朝,出演:中村七之助,中村児太郎,中村鶴松ほか ■先ずは第二部「真景累ヶ淵」から・・。 怪談噺だが時々笑ってしまう。 驚しさは無い。 新吉の献身的介護や豊志賀の独占愛が幽霊という異次元にかき消されてしまった。 七軒町隣人の話しぶりは落語そのままである。 多くの場面が落語から逃げきれていないようだ。 このため中途半端にみえる。 落語で聴く方が想像力が働くかもしれない。 □仇ゆめ あだゆめ ■作・演出:北條秀司,出演:中村勘九郎,中村七之助,中村虎之介ほか ■これは楽しい。 狸風ムーンウォーカーもできている。 舞師匠や店旦那に狸が教えるおばた踊り?も笑える。 前作の豊志賀役中村七之助は熟れていなかったが(これは演出?)、この深雪大夫役では動きや表情が活き活きしていた。 後半はしみじみ調になる。 まさに御伽噺舞踊劇だ。 □源平布引滝,義賢最期 げんぺいぬのびきのたき,よしかたさいご ■作:並木千柳,三好松洛,出演:松本幸四郎,中村梅枝,中村隼人ほか ■物語りが展開していくリズムはとても気持良く感じる。 待宵姫の小万への嫉妬、義賢の葵御前や待宵姫との別れなど細かい感情表現もこのリズムに乗っている。 よく練られている。 後半は義賢最後の場面が続き心地よいリズムが消えてしまったのが惜しい。 「戸板倒し」や「蝙蝠の見得」「仏倒し」は嬉しいが、これを入れる為に単調になったのは否めない。 「実盛物語」を続けて観ればこのチャンバラ場面が生き返ってくるのだろう。 今回は二段目のみの上演。      □伊達競曲輪鞘當 だてくらべくるわのさやあて ■作:四世鶴屋南北,出演:中村歌昇,中村隼人,坂東新悟 ■三味線が聴こえる幕開けからウキウキしてしまう。 伴左衛門と山三による「渡りぜりふ」を聴いて再びリズムに乗ってしまった。 作品の選択・順序が巧い。 これは第二部でも言えた。   □三社祭 さんじゃまつり ■作:二代目瀬川如皐,出演:市川染五郎,市川團子 ■この軽快でシンプルな振付は江戸時代の体操舞踊といってよい。 ここまで来ると八月の目玉である第一部もみたくなってしまっ

■ル・パルク  ■プレイリスト#1

□ル・パルク ■振付:A・プレルジョカージュ,音楽:W・A・モーツァルト,指揮:ベンジャミン・シュワルツ,出演:アリス・ルナヴァン,マチュー・ガニオ,舞団:パリ・オペラ座 ■NHK・配信,2021.8.29-(オペラ座・ガルニエ宮,2021.3.9-11収録) ■プレルジョカージュ2作品を観る。 初めの「ル・パルク」は不思議な作品だった。 ・・ゴーグルをかけたダンサーの登場で一気に釘付けになってしまった。 その後はロココ風男性衣装をまとった男女十数人のダンサーがモーツアルトの曲に乗りながら愛を語らう。 その中から主人公らしきぺアに注目がいく、でも女性の方は乗り気ではない。 環境音が鳴り響くなか再びゴーグルが登場する。 そしてロココ風女性衣装に変えた女性ダンサーと男性ダンサー達は再び踊りだす。 切替場面には必ずゴーグルが登場するが、主人公二人が愛し合って幕が下りる・・。 ゴーグルを付けた男性ダンサーは何者なの? ロココ風?衣装がとても素敵だった。 時代はロココ?、でもゴーグルは現代? モーツァルトの中に現代的な環境音が入り込む。 時間の亀裂がこの切替で起こる・・!? 謎めいた面白さが充満している。 照明が暗いので部屋も暗くして観ると劇場にいる雰囲気に浸れる。 この番組は画質が良いので猶更ね。 作品の背景を調べたい。 それは後にして、この不思議な余韻を楽しむことにするわね。 □プレイリスト#1 ■振付:A・プレルジョカージュ,音楽:G・H・ヘンデル他,舞団:バレエ・プレルジョカージュ ■NHK・配信,2021.8.29-(ベルサイユ宮殿・王立歌劇場,2017.12.16収録) ■二つ目の作品はオムニバスかしら? タイトルが毎回表示されるのでプレルジョカージュの過去作品の断片を繋げたものだと分かったの。 それは「ベラータムへの帰還」(2015年)に始まり「ロミオとジュリエット」(1996年)で終わる。 数えたら9作品も入っていた、先ほどの「ル・パルク」(1994年)も。 振付家を深く知るには都合がよい。 彼は愛の濃密表現が特に巧いとおもう。 「千夜一夜物語」(2013年)は「カーマ・スートラ」にも劣らない。 でも活動的にみえるのはダンサーの若さを前面に押し出している1990年代かな? 今回の2作品でプレルジョカージュへ一気に近づ

(中止)■へそで、嗅ぐ

■作・演出:山口茜,ドラマトゥルク:ウォルフィー・佐野,出演:豊島由香,福角幸子,高杉征司ほか,劇団:トリコ・A ■こまばアゴラ劇場,2021.9.2-6 ■「この度、2021年9月2日(木)ー9月6日(月)に開催を予定しておりましたトリコ・A演劇公演2021「へそで、嗅ぐ」は、現在の新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、中止とさせていただきます」。 再び中止が多くなってきた・・。 コロナでのチケ購入後の中止は2020年2月に始まり今日迄で34本目よ。 *劇場、 http://www.komaba-agora.com/play/11170