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■リヴァイザー/検察官

■作:ニコライ・ゴーゴリ(検察官より),脚本:ジョナソン・ヤング,演出:クリスタル・パイト,舞団:キッドピボット ■神奈川県民ホール,2023.5.27-28 ■ゴーゴリの「検察官」は芝居で観たことがある。 今回はダンスのため科白が付くとは予想していなかった。 しかも登場人物が多い。 はたしてダンサーは台詞を喋りながら踊っている。 しかし、どうも口パクらしい。 逆に口パク技術の精巧さに驚きました! 口だけではなく字幕も凝視してしまった。 組織は「機構」、相手を「対象」と訳している! 「内包」・「統合」・「修正」・・などの硬い語句が続く。 原作は読んでいないので何とも言えないが、ロシア帝国の官僚主義から来ているのかな? しかもト書は数学的記述に近く、それもダンサーの動きを表現している! 三度目の「!」です。 肝心のダンスは素晴らしい。 感情を大げさに表現しているが切れが良い。 鋭い動きです。 8人のダンサーも連携が巧い。 マイムを取り入れた「カンパニーデラシネラ」をより硬く激しくしたような舞台でした。 直前にダンサーの交代が伝えられて開幕が15分遅れたが混乱はみえなかった。 「!」(驚き)の多い舞台だったので帰りにプログラムを購入しました。 まだ読んでいないが「!」の謎が解けるはずです。 *劇場、 https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/KIDDPIVOT2023 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、クリスタル・パイト ・・ 検索結果は4舞台 .

■トランジット

■振付:テロ・サーリネン,音楽:セバスチャン・ファーゲルルンド,トゥオマス・ノルヴィオ,舞団:テロ・サーリネン・カンパニー ■NHK・配信,2023.5.21-(ヘルシンキ・メリカーペリホール,2022.8.19-21収録) ■「・・破滅を目前にした人間に希望はあるのか」。 物騒な解説が書いてある。 解説がなくても舞台はそのように見える振付です。 十数名のダンサーは這いつくばり蠢く。 舞踏風な動きもある。 スポットライトで強調もする。 継ぎ接ぎのある白衣装はアジア的です。 音楽も振動を強調している。 ダンサーたちの動きは力強い。 近未来的で加速度的です。 苦しみや恐れの表情は薄い。 複雑な振付ではない。 感情を抽象化したところはあるが踊り易いと思う。 後半、黒の背景から白になると、緩やかな動きに変調する。 歩く姿もスローモーションです。 そしてゆっくりと終幕に近づく。 人間は救われたのか? 物語がダンサーたちを通り抜けていくような舞台でした。 身体で物語を紡ぐのが舞台芸術ですがこの作品は少し違う。 風のように抜けていくサッパリ感がある。 サーリネンはよく知らないが、なかなかの振付家とみました。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/X89PVRGJN4/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、サーリネン ・・ 検索結果は2舞台 .

■人魂を届けに

■作・演出:前川知大,出演:浜田信也,安井順平,盛隆二,篠井英介ほか,劇団:イキウメ ■シアタートラム,2023.5.16-6.11 ■箇条書にしてみました・・・ ・森に迷う者たちが自身の過去を語るときに劇中劇となる。 幾つもの劇中劇が集まって出来た作品です。 その劇と劇の境界に技巧が発揮されていた。 面白い構造です。 ・浜田信也、安井順平の静的で力強い演技は佳境の域に入りつつある。 イキウメは独特なリズムを持っていますね。 呼吸や間(マ)の取り方を含め全てが劇的へと繋がっている。 ・森に住む母は美術作家森村泰昌が演じているのか!? 勘違いしてしまった。 篠井英介だったのですね。 その篠井英介はイキウメとは真逆の演技で舞台を深めていました。 ・イキウメの舞台ではいつも奇跡を考えさせられます。 この世は全てが奇跡で成り立っている。 だから逆に見えない。 急にみえることがあるのでビックリする。 ・<公安>と<鶏鍋>の場面では必ず観客の笑いが聞こえた。 でも前者で笑う理由が分からない。 <公安>とは何か? 分かっていて笑ったのでしょうか? ・権力者が恐れている一つが多様性です。 森に迷う者達もそのように描かれている。 (日本での)難民やLGBTも権力側からみれば同じでしょう。 でも人類は多様性を受け入れることで生き延びてきた。 これからもです。 ・シアタートラムのE席は足先が前に出せる。 このため足が楽です。 F席以降は板が貼ってあり足先を前に出せない。 なぜ塞いでいるのでしょうか? 狭い劇場を少しでも広くして欲しい。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2046/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、前川知大 ・・ 検索結果は13舞台 .

■リビングルーム

■振付:インバル・ピント,出演:モラン・ミュラー,イタマール・セルッシ ■世田谷パブリックシアター,2023.5.19-21 ■・・木々の描かれた室内で踊りだす一人の女。 そこでは不思議な現象がおこる。 彼女の身体が自動的に動いてしまう、操り人形のように。 椅子もひとりでに動き出す。 コミカルな振付が続いていく。 壁の電灯やケトルも動き回る。 古い流行曲らしき音楽に日常音や雑音も入る。 ぼんやりと照らしだされる青系(夢のなかにいる)や赤系(胸騒ぎがする)の照明。 ・・タンスの中から男が部屋へ侵入してくる。 そして二人は付かず離れず踊りあう。 笑いたくなるような振付もある。 コントダンスと言ってよい。 そろそろと男はタンスの中へ戻っていく。 女も壁の割れ目に入り込み見えなくなる・・。  このような流れの舞台でした。 彼女の夢の中にいるのか? 彼女の心の中を覗いているのか? 20世紀をひきずっている振付だが、変わった作品でした。 終幕の映像が余分でした。 これが無ければ、夢心地の感覚を持って終われたでしょう。 アフタートークは都合で聞かなかった。 平山素子とピントは振付への思いが違うから話が盛り上がるはずです。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/1800/

■ポントの王ミトリダーテ

■作曲:W・A・モーツァルト,演出:宮城聰,指揮:マルク・ミンコフスキ,出演:ペネ・パティ,アナ・マリア・ラービン,アンジェラ・ブラウアー他,演奏:レ・ミュジシャン・デュ・ルーブル ■NHK・配信,2023.5.14-(ベルリン国立劇場,2022.12.9-11収録) ■宮城聰演出とあったので観ることにしたの。 作品を調べると・・、イタリア旅行中の14歳モーツァルトが作曲したオペラ・セリアらしい。 時代は紀元前2世紀、ローマと戦う黒海に面したポントス国が舞台。 王である父と二人の息子が一人の女性を求める物語ね。 モーツァルト初期の作品だがイタリア様式の成果は素直に出ている。 でも物語の濃さに助けられたかな? さすがJ・ラシーヌが原作だけある。 舞台は4 段の雛壇が造られているシンプルな構造。 その背景に琳派風の金箔を用いた絵画を繰り出していく。 戦国時代の兜や刀を付けた歌手の衣装も金ピカよ。 黄金の国ジパングを意識したのね。 演出も強気に出ている。 それは中国や東南アジアへ繋がっているから。 でも雛壇が低いので歌手が身をかがめて出入りするから観ていて窮屈なの。 狭苦しいのも日本風だが、4段から3段にすれば歌手の動きに余裕ができたと思う。  モーツァルト+ラシーヌ+アジア文化。 この違いのある3点を結びつけるのに演出家はP・クローデルを意識したんじゃないかしら? 面白い舞台だったわ。 *NHK、 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2023128047SA000/

■舞台・エヴァンゲリオン ビョンド

■演出:シディ・ラルビ・シェルカウイ,上演台本:ノゾエ征爾,出演:窪田正孝,石橋静河,板垣瑞生ほか ■ミラノ座,2023.5.6-28 ■初めての劇場です。 メタリックな竹模様が逆に無機質を感じさせる。 ロッカー(クローク)が無いのは残念、トイレも狭い。 エレベータは止まらない。 高層劇場のため余裕がないのは致し方ない? 会場内はチープですが機能的です。 椅子もそれに従う、でも長時間座っていると疲れる。 エヴァンゲリオンは苦手な漫画です。 いつも数分みただけで遠ざけてしまう。 舞台なら最後まで観ることができる? 劇場見学のついでにチケットを購入しました。 使徒が何者か?やっと分かりました。 それは古代ギリシャから続いている地水火風、つまり自然の化身だったのですね。 地球を荒廃させている人類は人間精神と科学技術を結合したエヴァというロボットで使徒と戦う・・。 結合された操縦士の子供たちは幾つもの二元論的矛盾に悩むという話です。  舞台は凝っています。 床を傾かせて映像を映す。 三次元的映像にして迫力を増している。 エヴァはパペット型で人形遣いが動かし、俳優である操縦士は横で演技をする。 使徒もパペットです。 特に人形遣いが目立つ。 彼らはダンスで舞台を盛り上げ、場面転換を繋ぎ、大道具を動かす。 これは楽しい。 しかし俳優の声は平均化した音響で盛り上がらない。 マイクに依存し過ぎている。 科白も8割は説明調です。 ChatGPTが演じているみたいでした。 観客は20代女性が7割を占めていたが贔屓筋ですか? 他に高齢者が1割、・・。 それと煙草を吸う場面があったが理解に苦しみます。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/250631 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、シェルカウイ ・・ 検索結果は5舞台 .

■能楽堂五月「貰聟」「班女」

*国立能楽堂五月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・貰聟■出演:井上松次郎,佐藤友彦,今枝郁雄 □能・観世流・班女■出演:浅井文義,宝生常三,大日方寛ほか ■国立能楽堂,2023.5.13 ■「貰聟(もらいむこ)」は「夫婦喧嘩は犬も喰わない」、つまり夫婦の喧嘩を他人が仲裁したり心配するのは愚かなことだと言っている。 夫と妻その舅の3人が登場する。 けっこうリアルな演技で引き込まれる。 「室町時代ホームコメディ」らしい。 「班女(はんじょ)」のプレトーク「狂うことと舞うこと」(横山太郎)を聞く。 いかに遊女に舞をさせるか? 狂から舞へは一直線にはいかない。 当時の遊女の立ち位置から説き、世阿弥の苦心の跡を考えていく内容だった。 久しぶりに正面席で観る、いつもは脇正面だが。 正面席は謡がバックコーラスのように聴こえるのが良い。 逆に囃子は脇席のほうが立体的に聴こえる。 笛はどの席でも同じだ。 また正面席はシテの前後の動きが単調にみえて平面的になる。 つまり脇正面席は謡もワキもシテと同じ濃さに感じられる。 どちらが良い席なのか?一概には決められない。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/5143.html?lan=j

■ミソロジーズ

■振付:A・プレルジョカージュ,音楽:トーマ・バンガルデル,指揮: ロマン・デュマ,出演:バレエ・プレルジョカージュ,ボルドー国立歌劇場バレエ団,演奏:パリ室 内管弦楽団 ■NHK・配信,2023.4.23-(パリ・シャトル座,2022.10.26-27収録) ■プレルジョカージュ振付の「ミソロジーズ」を観る。 古代神話を背景に23場面から構成されているの。 その半分の場面には神々や人物のタイトルが付けられている。 それは・・タレストリス、アマゾネス、アレクサンドロス、ダナエ、ゼウス、ゴルゴン、ミノタウルス、アレス、アフロディナ、ナイアス、イカロス。 その間に入る場面名は・・はじめの動き、組み合い、双子1、13日間の夜、出産、復活、楽園、パ・ド・ドゥ、渦、双子2、弔いの舞踏、戦争。 神々の行動に直結していて、合わせると23場面。 振付は古代神話の祭祀と神々の行動を連想させる。 古代スポーツも含まれる。 衣装も神話風ドレスで薄く、白・赤・緑でどれも素晴らしい。 仮面を付けることもある。  名前の場面は叙事詩、その行動は抒情詩のような動きかな? 場面を数えるほど詩的リズムが合ってくるから気持ちが良い。 次に何が登場するか楽しめる舞台だった。 終幕の「戦争」は第二次世界大戦時の数十枚の写真をフラッシュバックに使っていた。 舞台は現代に続いていると言うことね。 ウクライナの影響も強い。 アルバニア系のフランス的雰囲気を強く押し出す振付家にみえる。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/R3KN619JGG/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、プレルジョカージュ ・・ 検索結果は4舞台 .