2017年1月31日火曜日

■銀髪

■作・演出:広田淳一,劇団:アマヤドリ
■本多劇場,2017.1.26-1.31
■アマヤドリ15周年記念再公演作品である。 劇団を調べたら「ぬれぎぬ」「フリル」の二本しかブログに登場しない。 それ以前にも何本か観ているが気になる劇団にしては少ない。 
劇場で配られたチラシに人物相関図が載っていた。 相関図のある作品は曲者が多い。 だが複雑で纏まりが無いストーリーを鍛えた舞台で熟していくところはさすが記念公演である。
とは言っても前半は冴えない。 途中の休憩時間が終わっても隣席の客が戻ってこなかったが分かる気がする。 パニックを売り物にするベンチャー企業も東日本大震災の記憶やISニュースを毎日みているから舞台に引き込む力が弱くなっているのだろう。
後半、種吉の過去を振り返るところから彼の思想や周囲の人間関係が明らかになり俄然面白くなってくる。 リーダ種吉の部下から上がってくる企画の捌き方や接し方に巧さがでている。 終幕、会社が傾く場面でも信頼関係の崩壊が簡素に上手く表現されていた。
いろいろ気になったので帰りにプログラムを買う。 「生きられなかった時間、育てられなかった子供、わかりあえなかった人たち・・、この作品には後悔の捻が流れている・・」と演出家は言う。 種吉は言う。 「生まれてくる赤ん坊もまた他者である」。 他者と繋がるとはどういうことかを形にしたい作品かもしれない。 切れ味の良い役者の動きや終幕のダンスを見ながら演出家15年の歳月が堆積している舞台だと感じた。
*劇団サイト、http://amayadori.co.jp/archives/8910

2017年1月29日日曜日

■冬物語

■原作:W・シェイクスピア,演出:宮城聰,音楽:棚川寛子,劇団:SPAC
■静岡芸術劇場,2017.1.21-2.12
■黒銀色に統一された舞台の美術と構造に先ずは感動しました。 目は自ずと舞台中心を見上げながら天に登っていく感じです。 同時に地下の暗闇に落ちていくようにもみえる。 しかも役者の全視線と同一直線上でぶつかっているようで集中力が湧き出てくる。 これらが混ざり合って目眩が襲って来るのです。
美術だけではなく二人一役の役者構造も面白い。 文楽でいう太夫と人形遣いに似ている。 とはいっても役者自身が人形であり人形遣いですが。
観ていて役者は科白を喋らなくて楽だなあと思いました。 役者が持て余して大袈裟な身振りにならないように動作を「人形振り」に制限している(そのようにみえてしまった)。 演出ノートには「言葉は身体の外のものであり・・」。 「身体と言葉の違和感・緊張感をそのまま観客に見せたい・・」と書いています。 この為かどうか分かりませんが、あの目眩を伴って舞台にグイグイと引き込まれました。 リオンティーズの嫉妬の強さには参った。
ところで舞台で四人以上が交互に演ずると誰が喋っているのかわからなくなる場面が2回ほどあった。 科白内容で直ぐに結び付けたのですが初めての経験ですね。 それと言葉と身体が離れた違和感かもしれないが長くみていると飽きてくるのです。 観客の緊張が続かない。 この方法は観客にも役者にも負荷がかかる。 役者も一瞬一瞬の緊張が大きい。 マイムや人形とは何かが違います。
中高校生鑑賞事業公演日では前半に居眠をする中高生が多かったのでしょう。 休息を挟んだ後半は雰囲気がガラリと変わってしまった。 解説場面が増えてしまい前半に現れた多くの謎が宙づりのままになってしまった。 原作通りかもしれないがオートリカスの話で要約され、そのままパーディタの登場まで一直線です。 「必ず春は来る」、「信じることさえできたなら」。 チラシのフレーズだけが残ってしまった。
ところで語り手の見台や座り方が浄瑠璃をそのまま持ってきたようです。 これが舞台のダイナミックな流れを止めていたようにみえる。 柔軟な配置をしたら違った謎が出てより深みに嵌ったかもしれない。 ともかく色々考えさせられる舞台でした。
*劇場サイト、http://spac.or.jp/winter_2017.html

2017年1月28日土曜日

2017年1月23日月曜日

■カルメン

■作曲:G・ビゼ,指揮:Y・アベル,演出:鵜山仁,出演:E・マクシモワ,M・ジョルダーノ,G・ブレッツ,砂川涼子,演奏:東京交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2017.1.19-31
■背景の煙草工場や密輸業者、故郷の母や許嫁の行動が古くも懐かしさのある日常世界を連れて来る。 その世界にいるホセはカルメンとエスカミーリョのいる非日常に引っ張られていく。 この日常と非日常の何とも言えない混ざり合った哀愁が舞台に漂う。 人は非日常へ行かなくてはならない時がある。 前奏曲を聴くといつもそう思うの。
でもマッシモ・ジョルダーノの作品解釈も面白い。 ホセは非現実世界を生きている人。 彼にとって母や許嫁の現実世界は上の空なの。 そしてカルメンこそが彼が現実世界に戻る導きの人。 「自分とやり直す気はないか?」。 彼が現実へ戻る時カルメンは救世主でなかったことを知る・・。 なるほど。 読み応えあるインタビュー記事だった。
合唱団で舞台は駅のラッシュアワー並みの混雑だけど、演出は主歌手の邪魔をしないように気を配っている。 2幕途中から歌唱が安定してきたようね。 演奏も心地よかったわ。
*NNTTオペラ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/151224_007957.html

2017年1月21日土曜日

■遥かなる愛

■作曲:K・サーリアホ,指揮:S・マルッキ,演出:R・ルパージュ,出演:S・フィリップス,E・オーウェンズ,T・マムフォード
■新宿ピカデリ,2017.1.21-27(MET,2016.12.10収録)
■初めてみる作品は劇場へ向かうのが楽しい。 騎士歌人ジョフレが理想の女性を求める物語なの。 はたして彼は巡礼旅人を介して女伯爵クレマンスを知る。 彼女に会うためトリポリに向かうが恋心の重圧で病になってしまう。 ついにジョフレは彼女の腕の中で息絶える・・。
12世紀の騎士道と貴婦人のプラトニック・ラブを描いていてとても叙情詩的なストーリなの。 演奏も歌唱も静かにしかし冷たく強く進む。 これがフィンランド風と言うのかもしれない。 作曲家も指揮者もフィンランド製よ。 <遥かなる愛>がそのまま表現されているからモドカシイ。 愛が昇華されない。 ジョフレが精神的にあまりにも弱すぎるからだとおもう。 でもいつの時代にもありそうなことね。 
ところで舞台美術は最高。 海面の光の揺れが素晴らしい。 本物の舞台で観たいわね。 「指輪」(R・ルパージュ演出,2010年)ではアッと驚く装置を見せつけられたけど今回の光も驚きだわ。 クレーンをそのまま登場させたのはルパージュ好みだがスタッフ間では議論があったはず。 全てがいつもと違って変わった味のする作品だった。
*METライブビューイング2016作品
*作品サイト、http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2016-17/#program_03

2017年1月14日土曜日

■アナスタシア

■振付:K・マクミラン,音楽:P・チャイコフスキ,B・マルティーヌ,指揮:S・ヒューエット,出演:N・オシポア
■TOHOシネマズ六本木,2017.1.13-19(ROH収録)
■ロシア皇帝ニコライ二世の娘アナスタシアの生まれ変わりだと名乗る女性が主人公です。 彼女にアナスタシアが乗り移ってしまった! そして精神病棟で過去の回想、妄想や悪夢の中のアナスタシアを踊る。 ナタリア・オシポアは適役ですね。 ロシアの狂気が漂っています。
初作の激しい精神的な一幕ものからアナスタシアの楽しかった少女時代と舞踏会デビューを追加して全三幕にしたらしい。 音楽もチャイコフスキを選び淡々とした青春時代を描き出している。 衣装や舞台美術もなかなかでした。
当初からある三幕だけでは物語を語り切れないと振付家は考えたのではないでしょうか。 しかし追加した一幕・二幕は逆に解説的過ぎる。 物語を平凡にしているだけです。 また彼女=アナスタシアの精神錯乱はソビエト革命が原因のようですが結局は分からない。 祈祷僧ラスプーチンの影が目につくのも余計混乱します。
ROHでは13年ぶりの再演らしい。 上演されなかったのは長所より短所が目立つ作品だからでしょう。 一幕物のままで磨きをかけても面白い作品になったかもしれません。
*英国ロイヤル・オペラ・ハウス2016シネマシーズン作品
*作品サイト、http://tohotowa.co.jp/roh/movie/anastasia.html

2017年1月12日木曜日

■一会、中島みゆきConcert

■出演:中島みゆき
■イオンシネマ系,2017.1.7-
■2時間半の上映だけど30分のリハーサル映像が最初に流れるの。 練習風景は演奏者たちの顔がみえて面白い。 
舞台の照明や美術、衣装はオーソドックスにまとめられている。 楽器15名前後とコーラス3名だけど弦楽器が入ったから増えたようね。 でも中島みゆきの歌詞が聞き取れない。 音響設備が悪いのかしら? コーラスの歌詞はきれいに伝わってくる。 演奏も申し分ない。 それに歌唱以外を全てカットして単純に繋いで流すだけだから舞台の面白さが感じられない。 後半には変化があるかと観ていたけど同じね。 終わり近くでは席を立ちたくなってしまった。 久しぶりの中島みゆきだったけど以上二つの点が残念だったわ。
*作品サイト、http://ichie-movie.jp/

2017年1月10日火曜日

■阿古屋、壇浦兜軍記

■出演:坂東玉三郎,坂東亀三郎,坂東功一,尾上菊之助
■東劇,2017.1.7-(歌舞伎座,2015年10月収録)
■遊君阿古屋、岩永左衛門、秩父庄司重忠3人のコントラストが素晴らしい。 前半はそれぞれの衣装・動作・性格等々の違いの面白さが十二分に出ています。 これに義太夫狂言が絡み合ってくる。 岩永の人形振りも楽しい。 様式美からくる3人の存在感の完成度がとても高い。 後半は阿古屋の琴・三味線・胡弓の演奏が続く琴責です。 昨年末に「景清」を観ていたので物語が身近に感じました。
今回は舞台裏の撮影が途中にも入っていて面白い効果が出ていた。 役者になったつもりで緊張感を持って幕が上がるのを待ちました。 この作品を演ずるため玉三郎は長年稽古を積んだと聞いています。 たぶん芝居と演奏の融合が難しいのかもしれない。 景清との関係性を出せるかどうかでしょう。
*シネマ歌舞伎第26弾作品
*作品サイト、http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/33/#sakuhin

2017年1月2日月曜日

■ジョゼフ・ロージー、四つの名前を持つ男  ■ロマン・ポランスキー、初めての告白  ■映画と恋とウディ・アレン

■出演:ジョゼフ・ロージ,監督:中田秀夫(1998年作)
■出演:ロマン・ポランスキ,監督:R・ブーズロ(2013年作)
■出演:ウディ・アレン,監督:R・B・ウィード(2011年作)表題順
■近くのレンタル店に映画監督を撮ったドキュメンタリ作品が並んでいたので借りてきた。 「ロバート・アルトマン、ハリウッドに最も嫌われそして愛された男」、「トルナトーレ、我が映画人生」を含め5本を選んだが全上映時間が10時間を超えるので、好みでないアルトマンと2作品しか観ていないトルナトーレを外すことにした。
J・ロージ、R・ポランスキ、W・アレンのヒット作品はほぼ全てを観ている。 ロージは赤狩りで英国へ亡命、ポランスキもユダヤ人狩りで逃げ回っていたことが語られる。 聞いてはいたが当時の写真や資料が写し出されるとリアルに迫ってくる。
ロージの監督はなんと「リング」の中田秀夫である。 これは知らなかった。 ロージは既に亡くなっているので家族や知人のインタビュで構成されている。 真面目で淡々とした映像なのは中田が文化庁海外研修員時代の作品だからだろう。 因みにロージを通してハロルド・ピンターを知った。
ポランスキの波乱に満ちた人生には再びの驚きである。 「俺の墓には「戦場のピアニスト」を入れてくれ」。 この言葉が彼の全てを物語っている。 「水の中のナイフ」を観た時の何とも言えない感動は忘れられない。 気に入っている作品は「赤い航路」。
今回一番面白かったのが「映画と恋とウディ・アレン」だ。 200分のドキュメンタリである。 実は「アニーホール」以前のW・アレンを知らない。 コメディアン時代の彼を知ったのは初めてなので嬉しい。 彼が影響を受けた監督の一人がイングマル・ベルイマンというのも驚きである。 でもこれを聞いた時W・アレンの謎が一つ解けた。 「いつか必ず終わる人生」を深く考えるのがベルイマンである。 ベルイマンとは表現方法が違ってもW・アレンの作品にはこの人生への問が感じられる。 直近に観たのは「ブルージャスミン」。 熟成度は十分だが記憶に残らない作品が多くなってきたのは残念。 
映画監督のドキュメンタリなどは正月休みしか観る気が起きない。 でも忘れていたお年玉をもらった気分だ。
*「初めての告白」サイト、http://mermaidfilms.co.jp/rp/

2017年1月1日日曜日

■ミルピエ、パリ・オペラ座に挑んだ男

■監督:T・デメジエール,A・トゥルレ,出演:B・ミルピエ
■Bunkamura・ルシネマ,2016.12.23-(2015年作品)
■バンジャマン・ミルピエの作品「クリア、ラウド、ブライト、フォワード」の作成過程を撮ったドキュメンタリーです。
2014年秋、ミルピエのパリ・オペラ座バレエ監督就任ニュースを覚えています。 でも彼は1年半後に辞任してしまった。 早いクビでしたが映画をみて納得しました。 タイトル副題の通りですが彼は多くを急ぎ過ぎたのではないでしょうか?
ところで、この映画は何が言いたいのかよく分からない。 次々と発生する出来事や問題点を垂れ流しするだけです。 例えば小道具のベンチを作成する話が3回も写し出されるのに途中で消えてしまう。 技術部のストライキがこの作品にどう影響したかもです。 しかも肝心のミルピエの作品に対する説明が一言も登場しない。 彼の断片的な思いだけが時々語られる。
ミルピエのダンサーに対する態度には優しさがある。 でも彼とダンサーの肝心な対話は少ない。 本番直前の「エゴイストになれ!」くらいでしょう。 新チュチュを付けて全員で踊ったら使い物にならない。 試作段階で分かるはずです。 小道具のベンチもそうですがミルピエを含めスタッフ間の調整が下手ですね。 ミルピエは対象への興味差が大きい。 この落差が上層部を不安がらせたのかもしれません。
本番舞台は数場面しか映し出されないのでなんとも言えない。 直前のダンサー達の緊張感は上手く撮れていました。 観客の拍手ではどうにか合格したようだが作品を観ていないのが歯痒いですね。
*作品サイト、http://www.transformer.co.jp/m/millepied/