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■ジークフリート

■音楽・台本:リヒャルト・ワーグナー,指揮:アントニオ・パッパーノ,演出:バリー・コスキー,出演:アンドレアス・シャーガー,ピーター・ホーレ,クリストファー・モルトマン他 ■TOHOシネマズ日比谷,2026.6.26-7.2(ロンドン・ロイヤル・オペラ・ハウス,2026.3.31収録) ■「ラインの黄金」(2023年)、「ワルキューレ」(2025年)、そして今回の「ジークフリート」(2026年)。 来年には「神々の黄昏」が予定されており、思った以上に4作の上演間隔は短い。 嬉しいことだ。 指揮者が変更になると聞いていたが、パッパーノが引き続き指揮棒を振るようだ。 幕が開くと、ジークフリートとミーメの疑似親子喧嘩が延々と続く。 しかし脳味噌がなかなか起きない。 ところが、さすらい人の登場で舞台の緊張が一気に高まり、眠気は吹き飛んだ。 前2作を通してヴォータンの存在感は圧倒的である。 また、素裸で徘徊する認知症エルダも健在で妙に安心してしまう。 二幕の舞台美術には呆気にとられた。 雪の降る町はずれの街道に、突如として現代風の一軒家が建っている。 その家から現れた龍=ファフナーは、金色に輝くスーツ姿で登場したので、時と場所の感覚が完全に混乱した。 三幕では、お花畑を走り回るジークフリートとブリュンヒルデが現れ、眩暈の連続が続く。 助監督はインタビューで「デヴィッド・リンチ風」と語っていたが、そうは感じなかった。 むしろ今回もドイツ的な風景が広がっていた。 1幕はフリッツ・ラング、2幕はF・W・ムルナウを思わせる。 映画監督から離れるが、3幕は舞踊家ピナ・バウシュの世界を連想させた。 ただし今回の「ジークフリート」は、どうもリズムが合わなかった。 おそらくミーメの弛緩した喜劇性が、<指輪>全体の緊張感を過度に緩めてしまったからだろう。 さらにブリュンヒルデがジークフリートに述べる凡庸な感想も、物語の高揚を現実へ引き戻してしまう。 日本語字幕との相性が悪かった可能性もある。 この狂ったリズムを、次作「神々の黄昏」でどう挽回するのか期待したい。 *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2025作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/105024/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、バリー・コスキー ・・ 検索結果...

■Merrily We Roll Along

■作曲:スティーヴン・ソンドハイム,脚本:ジョージ・ファース,演出:マリア・フリードマン,出演:ダニエル・ラドクリフ,ジョナサン・グロフ,リンゼイ・メンデス他 ■TOHOシネマズ池袋,2026.6.16-(ニューヨーク・ハドソン劇場,2024.6収録) ■主人公はミュージカル界で成功した作曲家であり、そこに作詞家と小説家という二人の親友が加わる。 三人の友情にはすでに亀裂が生じているらしく、「どこで道を誤ったのか」を探るために、物語は三人の出会いへ向けて時間を遡行していく。 舞台は1976年から始まり、1973年、1968年・・と過去へ戻り、最終的に1957年で幕が下りる。 それぞれの時代に応じて衣装が変わり、歴史的出来事が語られ、ニューヨークのナイトクラブの公演から始まり、エンターテインメント界で成長していく三人の姿が描かれる。 途中にはベトナム戦争や学生運動、ケネディとニクソン大統領やフルシチョフ首相、舞台芸術ではバーンスタイン、シナトラ、ギールグッド、さらにはバルザックの名まで聞こえてくる。 1960年前後になるとソビエトの影響が濃くなり、スプートニク衛星の話題や、彼らの作品名「左に進め」からも時代の空気が読み取れる。 ミュージカルでありながら科白が多く、物語に入りやすい作品であぅた。 三人の友情の絡み合いはやや掴みづらかったが、二人の親友が主人公より保守的であったことが、関係の亀裂を生んだ一因かもしれない。 それ以上に、時代という風景が次々と切り替わっていく面白さが際立っていた。 1960-1970年代を青春期として過ごした世代には、懐かしさを伴う舞台だろう。 ブロードウェイ・ミュージカルの系譜に属する作品だが、カメラを人物に近接させることで演劇性を強め、親密で温度のある作品として仕立てられていた。 *映画com、 https://eiga.com/movie/106222/

■トリスタンとイゾルデ

■作曲:W・R・ワーグナー,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:ユヴァル・シャロン,出演:リーゼ・ダーヴィドセン,エカテリーナ・グバノヴァ, マイケル・スパイアーズ他 ■新宿ピカデリー,2026.4.24-30(メトロポリタン歌劇場,2026.3.21収録) ■オペラ作品にはしばしば妙薬が登場するが、本作における<愛の妙薬>の効き目は群を抜いている。 ドニゼッティのそれとは比べものにならず、妙薬を飲んだトリスタンとイゾルデは現実から遠ざかり、抽象的な内面世界へと沈み込んでいく。 動きは次第に少なくなり、舞台を支えるのはほぼ歌唱のみとなる。 そのためか、演出家は二人の感情世界を可視化しようと、映像表現に大きく依存してしまう傾向がある。 本公演でも、象徴性の強い映像が多用され、観客は迷路に迷い込んだような感覚を覚える。 生の舞台であればまだしも、映画館で舞台上の映像をそのまま観ると、どうしても距離が生じてしまう。 この状況を打破するのは、結局のところ映像を吹き飛ばすほどの歌唱と演奏だ。 今回もその期待に十分応えてくれた。 ヤニック・ネゼ=セガンの細部まで行き届いた指揮、トリスタンとイゾルデの二人、そして忠実な従者ルヴェナールと待女ブランゲーネ、さらにマルケ王の安定した歌唱力が作品を力強く支えていた。 こうしてみると、『トリスタンとイゾルデ』は、物語の核心である内面の葛藤と音楽そのものが前面に出るセミステージ形式こそ、最も相性が良いのかもしれない。 *METライブブューイング2025年作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/6908/

(キャンセル)■ドン・ジョヴァンニ

■作曲:W・A・モ-ツァルト,演出:グリシャ・アサガロフ,指揮:飯森範親,出演:ヴィートプリアンテ,田中大輝,フランチェスコ・レオーネ,イリーナ・ルング他,管弦楽:東京交響楽団,合唱:新国立劇場合唱団 ■新国立劇場・オペラハウス,2026.3.5- 12 ■この作品は2014年に同じ演出家・劇場で観ている。 放蕩児ジョヴァンニが地獄へ落ちる壮絶な最後をまた見たくなったのでチケットを購入したが、体調不良のため劇場へ行くことができなかった。 残念! *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_031145.html

■2025年舞台映像ベスト10

*映像(映画・配信など)で観た舞台公演から最良の10本を選出. 並びは観賞日順. ■ マクベス   演出:マックス・ウェブスター,劇場:ドンマー・ウェアハウス ■ ハンマー   演出:アレクサンダー・エクマン,舞団:エーテボリ歌劇場ダンスカンパニー ■ 賭博者   演出:ピーター・セラーズ,指揮:ティムール・ザンギエフ,主催:ザルツブルク音楽祭 ■ 真面目が肝心   演出:マックス・ウェブスター,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ 博士の異常な愛情   演出:ショーン・フォーリー,劇団:ロイヤル・ナショナル・シアター ■ サロメ   演出:クラウス・ゲート,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,劇場:メトロポリタン歌劇場 ■ ラインの黄金   演出:バリー・コスキー,指揮:アントニオ・パッパーノ,劇場:ロイヤル・オペラ・ハウス ■ ワルキューレ   演出:バリー・コスキー,指揮:アントニオ・パッパーノ,劇場:ロイヤル・オペラ・ハウス ■ 蝶々夫人   演出:ロバート・ウィルソン,指揮:スペランツァ・スカップッチ,劇場:パリ・オペラ座 ■ オルフェオとエウリディーチェ     演出:ピナ・バウシュ,指揮:トーマス・ヘンゲルブロック,劇場:パリ・オペラ座 *今年の舞台は,「 2025年舞台ベスト10 」. *今年の美術展は,「 2025年美術展ベスト10 」.

■ファウストの劫罰

■原作J・W・ゲーテ(ファウスト),作曲:H・ベルリオーズ,指揮:マキシム・パスカル,出演:池田香織,山本耕平,友清崇,水島正樹,管弦楽:読売日本交響楽団,合唱:二期会合唱団,NHK東京児童合唱団 ■東京芸術劇場・コンサートホール,2025.12.13-14 ■上演がセミ・ステージ形式のため迷わずチケットを購入した。 オペラは指揮者や演奏の姿が見えなければ楽しさは半減する。 ピットに隠れてしまうと音響も籠りがちだ。 その点、演奏と歌唱が舞台上にあることで観客は自由に場面を想像ができる。 歌手の演技は控えめな方が理想的だと感じる。 初めて観る作品だったが舞台は充実していた。 演奏も合唱も大編成で迫力があり、歌手たちも一回限りの上演に熱を込めていた。 ベルリオーズのようなロマン派作曲家はやはりゲーテの世界に相応しい。 「壮大なゲーテ文学を余すことなく表現した!」という広告文の通りであった。 「・・崇高な自然は私の限りない憂愁を止めてくれる」。 ファウスト博士は地獄へ落ちる直前にそのことに気が付くが、しかし、彼が自死を試みた以前から自然は常に眼前にあったのだ。 それを真に見出すには、マルグリートと言う女性を通さなければならなかった。 教会の鐘や復活祭ではファウストの心を救うことができなかったのである。 彼の自然と女性の関係が面白い。 一方で、「ベルリオーズの傑作を圧倒的な映像美とともに贈る」という広告文には疑問を持った。 舞台背景にはストーリーに沿った映像が延々と映し出されたが、これが音楽的想像力を防げてしまった。 「ラコッツィ行進曲」では現代の軍隊行進や戦車などの兵器が、「ネズミの歌」では鼠が這い回り、デュオではスマホのLINE対話画面が映し出される。 こうした一方的な映像は舞台の雰囲気を壊していたように思う。 しかし「フランス音楽の若き旗手マキシム・パスカルと待望の読響とのタッグが実現」という宣伝文には大いに満足した。 パスカルの指揮を生で見るのは初めてだったが、フランケンシュタインのような独特な動きが楽しく、演奏も十二分に堪能できた。 期待以上の舞台であり心から満足した。 *東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ *二期会、 https://nikikai.jp/lineup/faust2025/

■ヴォツェック

■作曲:アルバン・ベルク,指揮:大野和士,演出:リチャード・ジョーンズ,出演:トーマス・ヨハネス・マイヤー,ジョン・ダザック,伊藤達人ほか,管弦楽:東京都交響楽団,合唱:新国立劇場合唱団,TOKYOFM少年合唱団 ■新国立劇場・オペラパレス,2025.11.15-24 ■この作品は観るたびに気が滅入る。 しかし今回は新制作ということで、あえてチケットを購入した。 幕が替わるごとに張りぼての家々が広い舞台を動き回る。 ベニヤ板で作られている為か、軽く乾いた質感を放っている。 カーキ色の軍服も、軍隊のダンスも、これに呼応し舞台全体を乾燥させているようだ。 湿気を帯びた重苦しいドイツ表現主義から脱皮し、演出家の力でドイツからイギリスへ舞台が移動したかのように感じられた。 そのためかテノールの鼓手長と大尉はこの乾いた空間に響き合い、声が鮮明に耳へ届く。 一方で湿り気を帯びたタイトルロールはバリトンであるためか、やや控えめに感じられた。 ヴォツェックの口癖である<貧乏>という湿った言葉も空間で乾いていくようだ。 それでも、また気が滅入ってしまったが、上演時間90分と短いことが救いとなっている。 演出家の<乾>とタイトルロールの<湿>の組合せこそ、新制作の鍵であると感じた。 相反する二つの相乗効果は何とも言えないが・・。 それよりも、何より演奏が素晴らしい。 大野和士指揮のもとでの略無調オペラの醍醐味を存分に味わうことができた。 *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_030662.html

■オルフェオとエウリディーチェ

■作曲:C・W・グルック,演出:ピナ・バウシュ,指揮:トーマス・ヘンゲルブロック,舞踊:ヤン・ブリダール,マリ=アニェス・ジロ他,歌唱:マリア・リッカルダ・ヴェッセリング,ユリア・クライター他,舞団:パリ・オペラ座バレエ団,合唱:バルタザール・ノイマン合唱団 ■アマゾン・配信(パリ・オペラ座・ガルニエ宮,2008.2収録) ■ヴッパタール舞踊団が11月に来日するが都合がつかず観に行くことができない。 代わりに、と言っては語弊があるかもしれないが「オルフェオとエウリディーチェ」を観ることにした。 この作品はダンスに歌唱が加わった「ダンスオペラ」に分類される。 歌手も舞台に登場しダンサーに寄り添うように歌う。 12月の新国立劇場オペラ公演でも勅使川原三郎の振付でダンサーが登場する。 ダンスと相性が良いオペラ作品だ。 今日は映像で鑑賞したが歌唱の字幕表示が無かったのは残念。 粗筋は知っているものの、理解の深まりや感情移入が半減してしまう。 それ以上に驚いたのは、舞台の雰囲気がピナ・バウシュのイメージとは大きく異なっていたことだ。 振付家の名前が伏せられていたら彼女の作品だとは気が付かなかったと思う。 18世紀の作品を題材にしたことで、ピナ自身が現代作品と区別したのかもしれない。 1幕からギリシャ風の神聖な振付が続く。 象徴的な生と死、平和や暴力が描かれていく。 2幕ではワンピース衣装で踊る妖精たちの姿に、おもわずマーサ・グレアムを思い出してしまった。 これはマーサの舞台に近い? マーサは人間の不安や葛藤を抽象的で硬質な動きで表現する。 一方、ピナの振付には滑らかさがある。 マーサが<剛>ならピナは<柔>。 その違いがみえる。 そして終幕、オルフェオとエウリディーチェは結局生き返らなかったのだろうか? 結末が曖昧で戸惑いが残る。 それにしてもピナの新たな一面を垣間見たような舞台だった。 マーサ・グレアムとの比較ができたことも楽しい。 カーテンコールでピナが登場したことにも感激。 でも、彼女はこの翌年に亡くなってしまった・・。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ピナ・バウシュ ・・ 検索結果は3映像(含む関連舞台).

■蝶々夫人

■作曲:G・プッチーニ,指揮:スペランツァ・スカップッチ,演出:ロバート・ウィルソン,出演:エレオノーラ・ブラット,ステファン・ポップ,オード・エクストレモ他,管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.12-(オペラ・バスティーユ,2024.9.30収録) ■ロバート・ウィルソンの訃報を先日に知った。 彼の舞台はいつも気にしていた。 でも多くは接することができない。 「浜辺のアインシュタイン」は1992年10月に天王洲アートスフィアで観ている。 他に記憶に残るのは「ハムレット」(1994年4月、静岡芸術劇場)、「ヴォツェック」(2003年9月、東京国際フォーラム)かな。 10月公演「Mary Said What She Said」に来日を予定していたらしい。 叶わなくなってしまい残念だ。 今回の「蝶々夫人」はスケジュール外の出会いだったので嬉しい。 時間を割いて観に行く。 舞台はなにも無い空間、歌手は彫像のように(余分に)動かない。 衣装もシンプルで古代ギリシャ風?だ。 この抽象化が「蝶々夫人」に合う。 日本文化を翻訳しないからだ。 子供の使い方も巧い。 しかし舞台空間が広すぎる。 間が抜けたようだ、生舞台を観ないと何とも言えないが。 蝶々役エレオノーラ・ブラットもピンカートン役ステファン・ポップも無機質な演技だ。 でも歌唱が加わると有機的世界へ導いてくれる。 たとえ抽象化が激しくても、近代日本の女性の生き方が迫ってきて涙を誘う。 加えてロバート・ウィルソンの舞台を久しぶりに楽しんだ。 *パリ・オペラ座inシネマ2025作品 *主催、 https://tohotowa.co.jp/parisopera/movie/madama_butterfly/

■ニュルンベルクのマイスタージンガー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:ダニエレ・ガッティ,演出:マティアス・ダーヴィッツ,出演:ゲオルク・ツェッペンフェルト,クリステイーナ・ニルソン,マイケル・スパイアーズ他,管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団 ■NHK配信,2025.9.1(バイロイト祝祭劇場,2025.7.25収録) ■今月に入りワーグナーは3本目だ。 今年のバイロイト音楽祭から当作品がNHKで放映された。 新演出の為かな? ・・漫画チックな美術が凡庸な舞台に近づける。 2幕「蹴り合いの場」ではリングにロープを張ったボクシングまで登場する。 また3幕ヨハネ祭りはポップな美術・衣装で一杯だ。 これらは作品との深い繋がりはみえない。 見た目は楽しいが興ざめもする。 そしてヴァルターはマイスター称号を拒否したままエヴァと駆け落ちして幕が下りる。 これも後味が悪い。 父親やザックスは無念だろう。 ベックメッサーも惨めすぎる。 競争相手をこれだけ貶めると舞台が盛り上がらない。 ・・。 喜劇と呼ばれている作品だが演出家の喜劇にはついていけなかった。 上映5時間弱(休息無し)は長かった。 ワーグナーの舞台は長いが短い。 この相反感覚が今回はやってこなかった。 騎士のヴァルター役マイケル・スパイアーズは伸びのある声で聴き応えがあった。 また合唱団は臨時編成(?)らしく新鮮味が出ていた。 最近はチケットの売れ残りもあると聞いている。 舞台芸術はどこもしんどい。 盛り立てていきたいものだ。 *バイロイト音楽祭2025年作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/V3NJMYWRPJ/

■ワルキューレ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アントニオ・パッパーノ,演出:バリー・コスキー,出演:クリストファー・モルトマン,エリザベート・ストリート,ナタリア・ロマニウ他,ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.5-11(ロイヤル・オペラ・ハウス,2025.5.14収録) ■上演時間5時間(休憩含む)は長い、そして短い。 緊張ある対話が続くがヴォータンの存在が流石に目立つ。 「ラインの黄金」ではアルベリヒとバリトン域を競い合ったが今日は彼の独断場だった。 しかも髪を伸ばし義眼に変えたので最初は別人かと思ってしまった。 エルダも舞台を徘徊しているが大丈夫だろうか? 2年の歳月は短くない。 これを意識して若い歌手を多く登場させたのは戦略だろう。 でも彼らの存在力はこれからに期待するしかない。 「環境問題がテーマである・・」、「故郷オーストラリアの山火事を体験・・」。 舞台監督と演出家が語っていた。 フンディングの館をトネリコの壁で覆った1幕、荒野にトネリコの廃木を置く2幕、ブリュンヒルデを埋めたトネリコが炎に包まれる3幕。 テーマも山火事も分かるが環境問題を考えると舞台の面白さが遠のく。 「食卓にはジャガイモとトリ肉を・・」。 舞台監督の飽くなき拘りがみえるが、飲食は最低限にしてもらいたい。 食べる演技はとても難しい、フンディングの食べっぷりは豪快で巧かったが。 ところで指揮者パッパーノが音楽監督を引退するらしい。 「・・22年間で700舞台を熟した」とインタビューで話していた。 感動が遠のく前に新指揮者ヤクブ・フルシャの「ジークフリード」を観たいものだ。 エルダ、それまで元気でいてくれ! *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2024作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/102664/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、バリー・コスキー ・・ 検索結果は2舞台 .

■ラインの黄金

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アントニオ・パッパーノ,演出:バリー・コスキー,出演:クリストファー・モルトマン,クリストファー・バーヴェス,ショーン・パニッカー他,ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 ■RBOストリーム・配信(2023.9,ロイヤル・オペラ・ハウス収録) ■英国ロイヤル・バレエ&オペラ・イン・シネマで「ワルキューレ」を9月5日から上映するようだ。 「ラインの黄金」は2023年秋に上映されたらしい。 これは見逃していた。 ウェブを探し回り「RBOストリーム」に辿り着く。 そこで見つけた。 早速観る。 幕開きから驚きの連続である。 裸体の老婆が舞台を歩き回っている? 途中で分かる。 老婆はヴォータンの妻そしてブリュンヒルデの母である女神エルダだった! うーん・・? そして現代的病を持つ人物が勢揃いした演劇をみているような錯覚に陥ってしまう。 一幕2時間半を一気に観てしまった。 他の「指輪」、例えばMET(メトロポリタン)やNNTT(新国立劇場)と比較しても言語的演技的な斬新さがある。 そこに切れ味の良い歌唱がより演劇を意識させる。 ところでRBOは序夜から今回の第一夜「ワルキューレ」まで2年かかっている。 この流れだと第三夜「神々の黄昏」を観るのは2029年かな? NNTTは2015年に序夜を、2017年までに全夜を上演している。 まっ、2年が妥当だろう。 ともかく、第一夜を観に行こう。 *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2023作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/100622/

■ナターシャ

■台本:多和田葉子,作曲:細川俊夫,指揮:大野和士,演出:クリスティアン・レート,出演:イルゼ・エーレンス,山下裕賀,クリスティアン・ミードル他 ■新国立劇場・オペラパレス,2025.8.11-17 ■彷徨う二人の主人公ナターシャとアラトがメフィストに導かれ7つの地獄巡りをする新作オペラである。 なんと現代社会こそが地獄だ!と言っている。 ・・木の無い「森林地獄」、プラスチックに囲まれた「快楽地獄」、全てを呑みこむ「洪水地獄」、金儲け一番の「ビジネス地獄」、底抜け消費「沼地獄」、世界が燃え上がる「炎上地獄」、言葉も枯れた「旱魃地獄」・・。 灰色で統一した暗い舞台のなか、電子音響や映像をふんだんに使い、楽曲は複雑で演奏は混沌として神経を不安にさせる。 歌唱も安らかにさせない。 地獄だから当たり前か? 主人公二人は未熟で為す術がない。 このため地獄が風景のように流れていく。 現代社会の表層を見つめていくだけだ。 「飽き飽きしているのでは?」。 メフィストの言葉はそのまま観客に向かってくる。 終幕、二人が行きついた地獄の果てには逆バベルの塔が!? これは理解できなかった。 塔の底まで来たからには全てを新しく創造していくしかない! こう解釈した。 聴きごたえのある歌唱は二か所、ナターシャのソロ「人間とは青い地球の化け物・・」、そして二人の終幕デュオかな。 悲観的過ぎる現代世界の描き方に賛否はあるはず。 それでも観終わったときに作品の重量感がひしひしとやってきた。 多様な方法を試みた物量作戦の成果が出ていた。  *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_030096.html

■くるみ割り人形とイオランタ

■指揮:マキシム・パスカル,演出:ロッテ・デ・ベア,出演:川越未晴,北川辰彦,岸浪愛学ほか,東京シティ・バレエ団,東京フィルハーモニー交響楽団 ■東京文化会館・大ホール,2025.7.18-21 ■チラシは「イオランタ/くるみ割り人形」とある。 今日の出演者表をみると「くるみ割り人形とイオランタ」になっていた。 二期会としてはオペラを重視したいので前者を広めたのかもしれない。 チャイコフスキーではどちらも好きな作品だ。 これがチケット購入の理由だが、夏場の「くるみ割り人形」は珍しい。 暑い中を上野へ向かう。 いや、とても良くできていた。 ルネ王の娘イオランタの夢の中に「くるみ割り人形」が出現する構造になっている。 しかも彼女が盲目のため夢か現実か切り分けがつかない。 チャイコフスキーバレエには根源的寂寥感が漂っている。 イオランタ役川越未晴は感情をあまり出さず淡々と歌う。 この盲目の歌唱とバレエが融合しイオランタの心を見える形で現前させた。 また「イオランタ」は哲学的オペラといえる。 この哲学をバレエが柔らかくした。 両作品の相乗効果が噛み合っていて面白い。 ダイジェスト版を観た感は否めないが完成度は高い。 満足して暑さが残る上野を後にした。 *ウィーン・フォルクスオーパー,ウィーン国立バレエ団共同製作 *東京二期会オペラ劇場 *二期会、 https://nikikai.jp/lineup/iolanta2025/

■サロメ

■作曲:R・シュトラウス,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:クラウス・グート,出演:エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー,ペーター・マッティ,ゲルハルド・ジーゲル他 ■東劇,2025.6.27-7.3(メトロポリタン歌劇場,2025.5.17収録) ■この作品は独特な雰囲気がある。 具体的な名詞に溢れているからです。 ・・それは多くの人種や地名、パレスチナのユダヤ人、ローマ人やエジプト人、エルサレム・ガラリア・カペナウム・サマリア・エドム・アッシリア・レバノン・シリア・アレクサンドリア・・・。 たくさんの果物や宝石、葡萄や林檎・柘榴や無花果、エメラルド・トパーズ・オパール・ルビー・メノウ・トルコ石・水晶・紫石・・、そして動植物の名前たちが宗教と絡み合い想像力が膨らんでいく。 バビロンとソドムの娘であるサロメには6人の分身が同じ服装と髪型で登場する。 彼女の子供時代から現在までを同時に現前させる手法は凝っています。 ダンスの場面も変わっている。 「あの人はサマリアにいる? エルサレムに向かった?」。 あの人が近づいてくるのをゾクゾクと感じることができました。 「ヨカナーンは私を愛した・・」。 サロメ役はエルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー。 魅力的な声だが現実的な身体がサロメを遠ざけてしまった。 スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」「アイズワイドシャット」を参照した、と演出家?がインタビューで話していたが、むしろドイツ表現主義映画の技法でサロメを再び甦らせたと言ってよい。 ヴィクトリア朝時代の背景と20世紀初頭のドイツ芸術がシリアの地のあの時代で混ざり合いキリストの到来を予言した。 不思議で怖い舞台を面白く観ることができました。 *MET2024シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/6002/

■フィデリオ

■作曲:L・V・ベートーヴェン,指揮:スザンナ・マルッキ,演出:ユルゲン・フリム,出演:リーゼ・ダーヴィドセン,デイヴィッド・バット・フィリップ,イン・ファン他 ■新宿ピカデリー,2025.4.25-5.1(METメトロポリタン歌劇場,2025.3.15収録) ■入り難い舞台です。 違和感のあるストーリで幕が開き、半煮えのまま幕が下りてしまった。 ベートーヴェン唯一のオペラ作品だが、彼は歌劇が苦手だったのでしょうか? 交響曲に叙唱と歌唱を乗せたような作品です。 しかも両唱の落差が激しい。 叙唱があからさまな現実を持ってくるので歌唱が浮いてしまう。 舞台に入り込めるのはレオノーレの長い独唱からでしょう。 そして二幕に入ってのフロレスタンの一声ですかね。 ロッコ役ルネ・パーペが歌い難いと言っていたが、そのまま聴き難いということです。 やはりベートーヴェンの拘りを意識しました。 当時の自由主義を強く感じさせます。 総裁P・ゲルプの挨拶でも現代政治との関係を話していましたね。 逆に政治が強く出過ぎると固まってしまい面白さが伝わらない。 演出にも問題がありそうです。 METでは25年前から変わっていないらしい。 以前観たカタリーナ・ワーグナー演出の当舞台は好感が持てたからです。 次回METでは新演出で上演して欲しい。 *METライブビューイング2024作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/102326/

■アイーダ

■作曲:ジョゼッペ・ヴェルディ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:マイケル・メイヤー,出演:エンジェル・ブルー,ユデット・クタージ,ピュートル・ペチャワ他 ■東劇,2025.2.28-3.13(メトロポリタン歌劇場,2025.1.25収録) ■インディー・ジョーンズの世界が出現? 幕開きに目を疑ってしまった。 ファラオの世界を探検家と「アイーダ」を平行して描いていくようだ。 前者はエジプシャンブルーで空間を染めていて、これは気に入ったが、しかし観ていて物語への集中力が落ちる。 生舞台でない為とも言える。 しかも探検家がエジプト財宝を奪っていくような描き方をしている。 演出家は凝り過ぎてしまった。 探検家オギュスト・マリエットのことはともかく、重量級の舞台は始まりから飛ばしていく。 歌手も重量級が多い。 力強い空気が舞台隅々まで広がっていく。 何回観ても痺れる。 衣装も素晴らしい。 将軍ラダメス役ペチャワも角が取れてきた。 なかでも光っていたのは王女アムネリス役ユディット・クタージ。 インタビューで当役を60回近く歌ってきたと話していた。 演じなくてもアムネリスが舞台に出現していた。 エンジェル・ブルーもエチオピア王女が「地」で似合う。 都会と田舎の対決かな? ところで凱旋場面に動物たちは登場しなかった・・! よくあるのだが。 今回はダンスが中心に置かれている。 私は気に入ったが、これは賛否両論があるだろう。 そして終幕、地下牢でラダメスとアイーダは息を引き取る。 この終わり方はいつ観ても寂しい。 華麗で力強い前半とは対極にある。 もう少し捻ったストーリーにすればテンションが落ちないのだが。 ヴェルディは普仏戦争勃発で終わり方を書き急いだのかもしれない。 *METライブビューイング2024作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/6005/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、マイケル・メイヤー ・・ 検索結果は3舞台 .

■賭博者

■原作:F・M・ドストエフスキー,作曲:C・プロコフィエフ,指揮:ティムール・ザンギエフ,演出:ピーター・セラーズ,出演:チェン・ペイシン,アスミク・グリゴリアン,ショーン・パニカー他,演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ■NHK,2024.12.2-(ザルツブルク・フェルゼンライトシューレ,2024.8.12・17収録) ■幕開きから歌手たちは精神が高ぶっている。 オペラでは珍しいくらいの演劇的演技が続く。 加えてカメラは歌手のアップを多用する。 この過剰な演出は何だ!? 明暗の強い赤色系の照明に映像画面が染まっている。 この緊張ある舞台は何だ!? 主人公アレクセイや恋人ポリーナの意図も捕らえることができない。 観ていても厳しい。 終幕も近い後半、空飛ぶ円盤のようなルーレットが天井から降りてくる。 賭博に挑むアレクセイの大勝する場面が凄まじい。 ここで多くの謎が解ける。 舞台は、初めから終わりまで、この賭博の緊張が拡散していたのだ。 この張り詰めた充満はドストエフスキーと演出家ピータ・セラーズのコラボ成果と言ってよい。 投げられ回転しているボールの行方を見つめるあの短い時間に沸き起こる極限へ向かう高揚感が全ての歌手に塗り込められていたのだ。 *ザルツブルク音楽祭2024作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/ZW6V3Z25NJ/

■さまよえるオランダ人

■作曲:リヒャルト・ワーグナー,指揮:マルク・アルブレヒト,演出:マティアス・フォン・シュテークマン,出演:松位浩,エリザベート・ストリッド,ジョナサン・ストートン他,合唱:新国立劇場合唱団,管弦楽:東京交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2025.1.19-2.1 ■シュテークマン演出の同舞台はこれで3度目、もちろんこの劇場でね。 その為かワーグナーの真髄を乗せた歌唱が心身の奥底まで響いてくる。 当たり障りが無く巧すぎる演奏が逆にワーグナーを際立たせたのかも。 どう転んでも、ワーグナー最高!  オランダ人役エフゲニー・ニキティンが気管支炎のため河野鉄平に代わったことが当劇場理事から事前説明がある。 前回のコロナ下、2022年1月公演のオランダ人が河野鉄平だったことは憶えている。 でも今日はパワーが全開しているようにはみえなかった。 ドイツ語も馴染んでいない。 緊急出演でしょうがないかな? でも、そこは流石に新国劇、総合力でカバーしていた。 アクシデントはあったが十分堪能できたわよ。 ところで、この作品は能楽にしたら似合うかもしれない。 新作能「彷徨阿蘭陀人」! そう思いながら観てしまった。 *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_029080.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、シュテークマン ・・ 検索結果は4舞台 .

■2024年舞台ベスト10

*当ブログに書かれた作品から最良の10本を選出. 並びは上演日順. 映像(映画・配信)は除く. ■ 田園に死す   演出:天野天街,劇団:流山児★事務所 ■ デイダミーア   演出:中村蓉,指揮:鈴木秀美,歌団:二期会 ■ 初級革命講座・飛龍伝   演出:マキノノゾミ,劇場:スズナリ ■ メディスン Medicine   演出:白井晃,劇場:世田谷パブリックシアター ■ 饗宴 SYMPOSION   演出:橋本ロマンス,劇場:世田谷パブリックシアター ■ 朝日のような夕日をつれて2024   演出:鴻上尚史,劇場:紀伊国屋ホール ■ リビングルームのメタモルフォーシス   演出:岡田利規,劇場:東京芸術劇場 ■ さようなら、シュルツ先生   演出:松本修,劇団:MODE ■ 品川猿の告白   演出:マシュー・レントン,劇団:ヴァニシング・ポイント ■ 象   演出:EMMA(旧・富永純子),劇団:SPAC *今年の舞台映像は,「 2024年舞台映像ベスト10 」. *今年の能楽は,「 2024年能楽ベスト3 」. *今年の美術展は,「 2024年美術展ベスト10 」.