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■能楽堂七月「賀茂物狂」

■出演:観世清和,福王茂十郎,福王和幸ほか ■国立能楽堂,2022.7.28-30 ■天野文雄のプレトークを聞く。 ・・夫婦の別離と再会の物語である。 金春禅竹作の女狂物を、しかも前場がある本来の形で上演しよう! 禅竹は狂女ものが少ない。 これが企画概要である。 岩本社業平と橋本社実方の関わり方、東下り、御手洗川付近の地形、過去の評価などなど・・、30分ほど話す。 前場を付けたので上演は100分を越える。 さすが後半は集中が鈍ってしまった。 しかし面白い。 シテ役観世清和の貢献が大きい。 彼の動きと声は無駄を削いで淡々としている。 一挙一動に目を見張った。 劇的と言ってよい。 新作に近いと手垢が付いていないので素直に向き合うことができる。 これは囃子、地謡そして観客も同じだ。 気持ちがいい。 プレトークでも話題になったが佐成謙太郎や田中充の「男女の情の切なるものがない」「・・冗漫な長編」の評価も当たっている。 しかし前場を付けると厚みが増すのは確かだ。 寝不足を避けて客席に座る作品と言える。 *国立能楽堂七月特別企画公演 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/3172.html?lan=j

■ブレスレス、ゴミ袋を呼吸する夜の物語

■作・演出:坂手洋二,出演:鴨川てんし,川中健次郎,猪熊恒和ほか,劇団:燐光群 ■スズナリ,2022.7.15-31 ■前半はコロナで公演中止になってしまった。 再予約をする。 当日清算は払戻も不要だ。 単純システムの良さだろう。 場内を見渡すと男性7割、内60歳以上が6割と言ったところか? ひどい混みようだ。 ハイカラな女性が開幕直前に入ってきたが、ダラッとした観客の姿を見るや否や、そそくさと逃げて行ってしまった。 暑いので自宅に居るような姿も何人かいる。 慣れない客には酷な光景かもしれない、幕が開けば気にならないが。 その幕が開いてすぐに唐十郎の舞台に引きずり込まれる錯覚に陥ってしまった。 ゴミ袋の中で役者が吐く科白や聴こえる音楽が唐風だったからだ。 しかも徐々に山崎哲風に収斂していく・・。 ゴミ教団というカルト系を登場させたからだろう。 面白い出足だった。 不満な点は、駅ホームで人を殺してしまった?女とその周辺にまとまりが無かった。 物語の本流に無理やりくっ付けたようにみえる。 現実レベルが他と違うからだ。 「・・21世紀まで3912日」の科白があったので初演が1990年頃と知る。 いま演出家の挨拶文を読むと「千石イエス」「天皇葬儀」「オウム真理教」「坂本弁護士失踪事件」などなど。 そこに「リア王」を被せてゴミ問題を論じている。 古臭さが漂っていたが、教団のパパと娘たちのゴミ対話、その行方は現代そして未来をも射程に入れている。 面白い物語だった。 帰りは新しくできた下北ミカンをブラブラする。 *第35回岸田國士戯曲賞受賞 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/156845 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、坂手洋二  ・・検索結果は9舞台.

■ハムレット

■作曲:ブレッド・ディーン,指揮:ニコラス・カーター,演出:ニール・アームフィールド,出演:アラン・クレイトン,ブレンダ・レイ,サラ・コノリー他 ■新宿ピカデリー,2022.7.15-21(メトロポリタン歌劇場,2022.6.4収録) ■「ハムレット」のオペラは初めて、しかも幕が開いて「生きるべきか死ぬべきか」の一声で始まり・・、それにしても音楽が忙しい。 雑音が混じっている? このため歌詞が聴き難い。 気にかかる。 指揮者のインタビューを聞いて疑問が解決したの。 金属棒やバネを使い、石どうしをぶつけたり、ペットボトルを潰す音を取り入れているらしい。 またピット内に合唱団員を少数配置し破裂音などを担当させ、会場横にも楽器を置き立体的にしている。 ずいぶん凝っているわね。 でも物語りの展開はよかった。 主要な約10場面をほぼ独立に繋ぎ合わせていくからテンポがある。 数場面が過ぎてから調子に乗ってきたわよ。 ハムレット役アラン・クレイトンは道化的な動作を取り入れている。 演技派と言える。 原作から外れる箇所は、ローゼンクランツとギルデンスターンが英国にも行かず終幕までカウンターテナーでスパイスを効かせていたことかしら。 それと、旅芸人の得意な科白が「生きるべきか死ぬべきか」だって! オペラというより演劇を観たような後味が残る。 理由の一つに音楽が雑音のように聴こえ背景に退いてしまったから。 生舞台ならここまでなかったはずよ。 でも記憶に残る「ハムレット」になりそう。 *METライブビューイング2021作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/3761/

■「からたち日記」由来

■原作:鹿沢信夫,演出:鈴木忠志,出演:加藤雅治,内藤千恵子,塩原充知,劇団:SCOT ■YouTube・配信,2022.5.27-(利賀大山房,2022.3.19収録) ■この作品は3人の役者が座りっぱなしで動きも少ない。 このため映像にした時の欠点が少ない。 配信を決めた理由だろう。 特に科白がビシビシと脳味噌を刺激する。 声が優先されるからだ。 この舞台は2015年に吉祥寺で観ている。 生舞台では身体五感を働かせるのでもっと生々しかった記憶がある。 芳川鎌子の恋愛の行方が胸に迫ってくる。 映像でも劇的感動は弱まらない、但し醒めた気分が強いが・・。 脳味噌で処理する割合が多いのかもしれない。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/129653

■貧乏物語

■作:井上ひさし,演出:栗山民也,出演:保坂知寿,安藤聖,山﨑薫ほか,劇団:こまつ座 ■NHK・配信,2022.7.3-(紀伊国屋サザンシアター,2022.4.21収録) ■「河上肇が登場しない井上ひさしの「貧乏物語」」です。 1934年春、ト書から河上肇は治安維持法違反で獄中にいることが分かる。 彼の家族、妻と娘そして女中たちで物語が進められていく・・。 官憲は河上肇に転向を迫るため、説得から拷問まであらゆる手を使い妻や娘に近づいてくる。 しかし彼女たちはそれを撥ね返す。 「監獄はお寺だと思え!、牛鍋は出ないが・・」。 ユーモアある説得で河上肇に転向を留めさせようとする。 女中たちの身の上話や明るい行動が湿り気を寄せ付けない。 この明るさは権力と対峙する時の必要条件でしょう。 平等についての問題点も論じられ河上肇の思想の一端が窺える。 貧困を如何に無くすか!? 1934年はそのまま現代に繋がっていますね。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/122533 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、栗山民也  ・・検索結果は18舞台.

■パルジファル

■作曲:R・ワーグナー,指揮:セバスティアン・ヴァイグレ,演出:宮本亜門,出演:清水勇麿,清水宏樹,山下浩司ほか,合唱:二期会合唱団,演奏:読売日本交響楽団 ■東京文化会館・大ホール,2022.7.13-17 ■この作品は「インディージョーンズ」や「猿の惑星」そして「マトリックス」を思い出しながらいつも観てしまう。 今回は「2001年宇宙の旅」や「ゲド戦記」まで広がってしまった。 でも聖杯や指輪、己自身を探し求めるのはワーグナーが元祖だからしょうがない。 魔法使いクリングゾルを倒す2幕まではグイグイ引き込まれてしまった、これもいつもの通り。 3幕は形式的な宗教色でカッタルイけどね。  宮本亜門の演出は楽しい。 なんと現代の美術館が舞台なの。 絵画や彫刻が物語に入り込む仕組みになっている。 「キリスト磔刑」が数十枚もぶら下がっていたがもっと分散させるのが面白いとおもう。 それでもワーグナーは強い。 風変わりな演出背景でもワーグナーは気にしない気にならない。 そしてパルジファル役伊藤達人のテノールが若々しい。 クンドリの橋爪ゆかを含め主要歌手は役割を十二分に発揮していたと思う。 今回は特にクンドリの立ち位置について色々と考えさせられたわ。 公演は5時間。 ワーグナーは集中力を最大に持っていくから疲れない。 しかも観た後もハイな状態がづっと続くからよ。 *二期会創立70周年記念公演 *フランス国立ラン歌劇場共同制作公演 *二期会、 http://www.nikikai.net/lineup/parsifal2022/index.html

■ペレアスとメリザンド

■原作:M作曲・メーテルリンク,作曲:C・A・ドビュッシー,指揮:大野和士,演出:ケイティ・ミッチェル,出演:ベルナール・リヒター,カレン・ブルシュ,ロラン・ナウリ他,管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2022.7.2-17 ■ドビュッシーの舞台と言えば「牧神の午後」かな、でもオペラは初めて。 錯綜する時間のなか、全てが未完のまま揺れ動いていく音楽と物語の流れに身動きがとれなくなってしまった。 それはメリザントの分身?を登場させ、逆歩きで時間を遡上し、しかも暗幕で周囲を隠した小さな舞台に視線を集中させて緊張感を高めていたからよ。 ペレアスの内面が見えないから不安も募る。 そして三角関係の結末だけが近づいて来る・・。 ここで演出家のインタビューを読む。 「ドビュッシーは・・、テキストは追加の楽器であり・・、楽器の音と語音を区別しない・・」。 なるほど納得。 「メーテルリンクにチェーホフの影響がみえる・・」。 たしかに。 「メリザンドが夢を見ている設定にした・・」。 演出家は考え抜いたと思う。 しかし神経質なところがでてしまった。 もう少し図太く構えてもよかった。 そうすれば、美術が面白いから、絵画的な感動もしっかり現れたはず。 それでも象徴主義的な原作・音楽・美術を一つにして閉じ込めた稀有な舞台だったことは言える。 この雰囲気はなかなかのものね。 楽しかったわよ。 *NNTTオペラ2021シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/pelleas-melisande/

■ワレワレのモロモロ2022

■演出:岩井秀人,出演:秋草瑠衣子,板垣雄亮,岡部ひろき他 ■シアタートラム,2022.7.7-10 ■6つの小作品から構成されている。 それぞれの主演役者が作者らしい。 役者の現実と舞台が混ざり合うところに面白さがあります。 劇中劇とかメタ演劇の要素が入ってくるからです。 幕が開いて役者の仕草や発声から、あっ!これはハイバイだ!と思い出し、久しぶりにその独特のリズムに共振しました、例えば道具類を無意味に動かしながら喋るところ等々で・・。 作品では「目を合わせるのは優しい頃を踊りたいだけだよ」「自己紹介岡部」が気に入りました。 家族、とくに父と息子の関係は迫るものがあります。 父に芝居を教わる場面は入れ子構造の不思議さがでている。 他の作品も笑いでは負けていない。 「川面の出産」は子供を産むことの大変さが伝わってきます。 ウンコや出産など身体を拡張していく楽しさもみえる。 ハイバイは高(ハイ)く買(バイ)っても損しない。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202207hi-bye.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、岩井秀人  ・・検索結果は8舞台.

■能楽堂七月「とちはくれ」「百万」

*国立能楽堂七月普及公演の下記□2作品を観る。 □狂言・和泉流・とちはくれ■出演:小笠原由祠,野村万蔵,野村万之丞 □能・宝生流・百万■出演:大坪喜美雄,村山弘,野村万緑ほか ■国立能楽堂,2022.7.9 ■竹本幹夫のプレトーク「百万と物狂」を聴く。 「百万」の作品構造を面白く解説していた。 当時の清凉寺の位置付や大念仏の状況、関連する能作品や和歌を引用して世阿弥の創作過程を想像しながら組み立てるので興味が尽きない。 能楽堂の席は正面、中正面、脇正面の3つに分かれる。 近頃は役者の遠近感が強い脇正面で番号の高い席を選ぶのだが「百万」には合わない。 舞は多いのだが平面的な印象が強いため正面席が良いはず。 しかもシテと地謡の対話が多いので緊張感を持続させないと捨てられてしまう。 くたびれる舞台だった。 「とちはぐれ」はことわざ「貧僧の重ね斎」の舞台化らしい。 僧も食っていくのに必死だ。 帰りの北参道駅ちかくで空を見上げると旅客機が高度を下げて羽田に向かっていくのがみえる。 新飛行経路の直下に当たっている為だ。 マチネーが終わるこの時刻には数分に1機は飛んでくる。 明治通りの騒音と同じくらいか? 住民にとっては何とも言えない微妙な音だろう。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2022/7128.html?lan=j

■刻の花  ■moments

■振付:鈴木ユキオ,出演:鈴木ユキオ,八木咲,安次嶺菜緒,赤木はるか,山田暁ほか ■シアタートラム,2022.7.1-3 ■鈴木ユキオプロジェクト2本立てを観る。 「刻の花」をトキノハナと読む作品は鈴木ユキオ自身が踊り、八木咲の写真が舞台に写し出されます。 写真家も舞台を動き回る。 ダンスはサッパリした振付、写真はシットリしている感じで対照的ですね。 小さな椅子を倒し洗面器の水を溢し缶を転がす場面もある。 日常のささやかな断片をダンスにしたような作品です。 「moments」は8人のダンサーがストップモーションを取り入れて動き回る。 強い視線を観客に投げかける場面も多い。 うかうかしていられない雰囲気です。 パフォーマンスに近い。 「ムーブメントではない・・。 空間写真のように・・」と鈴木ユキオの音声も入る。 数人に分かれ踊り続ける終幕はダンスを観る喜びに浸れました。 2作品は時間というより時刻を描いている。 時刻は社会性が加わる。 作者はこれを深く考えたいようです。 それがダンスに反映されていたか?  「moments」は物理的=身体的に理解できたが、「刻の花」はなんとも言えない。 振付が<時>とは無関係にみえたからです。 この劇場はダンスには狭すぎる。 今回はD席迄を取り払った広い舞台にしていた。 最低限の広さが確保でき観ていても安定感がありました。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/202207suzukiyukio.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鈴木ユキオ  ・・検索結果は4舞台.