2012年11月17日土曜日

■モリエール・恋こそ喜劇

監督:ローラン・ティラール、出演:ロマン・デュリス、ラウラ・モランテ、ファブリス・ルキーニ
仏では180万人を動員したらしい。 人生への軽快なリズムがあるからだろう。 この浮浮するリズムが喜劇の源なのだ。 これはシャブロルやレネなどの後期作品も持っている。 まさに仏映画の王道である。
モリエール二度目の投獄後の無名時代の話しらしい。 ある貴族の家に演劇教師として出向くが、ここでの出来事が後の作品に影響しているように描かれている。 悲劇か喜劇かを選択する場面もある。
しかしこの作品では芝居は香辛料の役目である。 演劇人モリエール抜でも楽しめるのが良い。

2012年11月16日金曜日

■マノン

振付:K・マクミラン,演出:M・メイソン,指揮:M・イェーツ,出演:T・ロホ,C・アコスタ,J・マルタン
■ワーナー・マイカル系,2012.11.14-15(ROH,2006年収録)
これだけゴタゴタしている流れをなんとかまとめているのが凄い! 登場しているダンサや役者一人ひとりが意味を持った動きをしているから混沌から逃れられたからよ。 そして二幕のリフトやフィッシュダイブの連続でマノンの娼婦性を強調できた。
これでテーマを戻せたしね。 ニューオーリンズは照明の強さでヨーロッパとの違いを表現できていたのも感心。 濃い雰囲気を漂わせることができた。 でもロホは純真過ぎるわ。 オペラ*1と比較すると軽すぎる。 バレエはこのような作品は合わない。
というより合う役者がいないからよ。 ところでカメラは最低だったわ。 ダンサーを追いすぎるからよ。 もう少し引いてどっしり構えて欲しいわね。 映画ではなくバレエを観に来ているんだから。 カメラは大いに反省してちょうだい!
*1、「マノン」(MET,2012年)
*英国ロイヤル・オペラ・ハウス2012シネマシーズン作品

2012年11月11日日曜日

■レヒニッツ-皆殺しの天使-

作:エルフリーデ・イェリネク,演出:ヨッシ・ヴィーラ,出演:ミュンヘン・カンマーシュピーレ
東京芸術劇場・プレイハウス,2012.11.9-10
L・ブニュエルの「皆殺しの天使」にレヒニッツ村事件が関わっていたとは知りませんでした。 ブニュエルは勿論知っていたのですよね? ところで今年のF/Tがやっと見えてきました。 作品の多くに社会の裏側を剥がしていくような力があります。
舞台の5人は意味深なほほ笑みを絶やさず、同じく意味深なセリフを喋りまくります。 同時に下着になったり毛皮コートを着たり、パイやチキン、ケーキを食べたりします。
5人は事件の報告者ですが、物理学の波動か粒子か?の曖昧さを持った観測者のようです。 原作は読んでいませんが人間の歴史が語られた時の曖昧さが上手く表現されている舞台です。 科白の背後を十分に想像できる豊かさを持っていました。
*F/Tフェスティバル・トーキョー2012作品

2012年11月9日金曜日

■るつぼ

作:アーサ・ミラ-,演出:宮田慶子,出演:池内博之,鈴木香
新国立劇場・小劇場,2012.10.29-11.18
現代人は悪魔や魔女がいないとわかっている。 それを前提としているから勧善懲悪劇のようにみてしまう。 しかし似た状況は現代でもよくあることだ。 結局は悪魔の呪文から逃れられないから骨身に沁みる。 赤狩りが形を変えこれからも続いていくことをアーサー・ミラーは言っている。
ジョンが告解をせず死刑台に登るところが凄い。 これでなければ芝居にならないが。 そして再び将来、死を賭けてこのような状況に陥るのが人間というものだ。 これをハッキリ示している芝居だから恐ろしさが迫る。

2012年11月7日水曜日

■愛の妙薬

■作曲:G・ドニゼッティ,指揮:M・ベニーニ,演出:B・シャー,出演:A・ネトレプコ,M・ボレンザーニ,M・クヴィエチェン,A・マエストリ
新宿ピカデリ,2012.11.3-9(MET,2012.10.13収録)
演出家シャーがドタバタな喜劇を避けたいと言っていたけど、その通りの舞台で深みのあるラブコメディにできていた。 但し二幕初めの結婚式場面を除いてだけど。 食事のある場面は難しいわね。 あとはリズムのある流れでとても楽しかったわ。
ネトレプコについてHPはコケティッシュとあるけどちょっと違う。 でも喜劇は合うとおもう。 舞台背景はターナーの風景画のようだから落ち着いて物語に集中できた。 「絵画的二次元と現実的な三次元の物語はマッチする」。 これもシャーの言葉ね。
軽喜劇を12年の一番目に持ってくるのはMETらしい。 しかも常連ばかり、特にシャーは4度目になるし、これなら初回で点数が必ず入るということ。 気軽に観れるから今年も期待したいわ。
*METライブビューイング2012作品

2012年11月6日火曜日

■1月8日君はどこにいたのか?

作・演出:アミール・レザ・コヘスタニ
東京芸術劇場・シアターイースト、2012.11.2-4
携帯電話を使う場面が非常に多いですね。 イランはニュースでしか知らないので観ていても余計遠く感じます。 顔面対話は数カ所しかありません。 日本の芝居でしたら観る気がしないでしょう。
終了後にコヘスタニのトークに出席しました。 これでどういう芝居かがわかりました。 暴力がテーマだということ、1月8日は女性の自由の日、・・などがです。
最後にイランでの上演に拘る理由を話してくれました。 それは芝居に対して<馬鹿馬鹿しい検閲>と<見えない検閲>があります。 英国や日本では<見えない検閲>が見えません。 イランならそれがわかるからです。
<馬鹿馬鹿しい検閲>は法律に記載されていることや世間での表面的な掟などです。 <見えない検閲>は世間の裏側にあるものです。 他者特に母語を話せない人からは見えないものです。 <見えない検閲>の英国や日本の状況も面白かったですね。

2012年11月5日月曜日

■アンドロイド版三人姉妹

■原作:A・チェーホフ,演出:平田オリザ,テクニカルアドバイザ:石黒浩,出演:青年団
吉祥寺シアタ,2012.10.20-11.14
不気味の谷は越えられない。 声に指向性が無い。 ノイマン型CPUでは限界がある。 画期的な技術が出ない限り進められないようだ。 二年前の「さようなら」から状況は変化していない。 オリザはロボットに直接目を向けなくなったようにみえる。
そしてアンドロイドの限界値を芝居に組み込む方法を考えだした。 アンドロイドは嘘はつかない、素直に口に出す、・・とか。 これを利用して物語をオモシロくさせている。 しかしこれはロボット演劇の亜流である。
チラシを読むと寂しさの本質のありかについて書かれていた。 感情を越えてやってくる寂しさはロボットにも可能だ。 当分この線でいくしかない。 残念だが今日の舞台ではこの線も成功していなかったが。
理由は登場人物が多過ぎてアンドロイドが埋もれてしまい寂しさに辿り着けなかったから。 スピルバーグの「AI」に登場する愛情型少年ロボットのデイビッド、「ブレードランナー」のレプリカントのリーダであるバッティに、舞台で出会えるのは遥か先である。

2012年11月3日土曜日

■たった一人の中庭

演出:ジャン・ミシェル・ブリュイエール、出演:LFKS
にしすがも創造舎、2012.10.27-11.4
旧中学校校舎の10の教室と体育館でパフォーマンスや作品が展示されている。 これを見て回るのだが演劇というより美術展に近い。 モンスター衣装?でのダンス、化学実験のような再現、赤軍派の写真が貼ってある政治オフィス、キャンプの模型・・。
体育館には野戦病院内?の様子が作られている。 室内中庭?には病院のベッドが・・。 ここはキャンプなのか? 配られた解説書をみてやっとわかる。  パレスチナキャンプは聞いたことがあるが、これはフランス移民政策から発生したキャンプのようだ。
移民での一番の問題は宗教だと言っている。 移民政策の失敗の原因はこれか? 作品はこれに答えていない。 世界中のキャンプを視野に入れているからだ。 今年のF/ Tはとても政治的である。

2012年11月2日金曜日

■ストリート・ダンス-TOP OF UK-

監督:マックス・ギア、ダニア・パスキーニ、振付:ウィル・タケット、ケンリック・サンディhttp://www.streetdancethemovie.jp/
ストリートダンスにバレエを取り込むテーマは魅力的ね。 でもダンスの楽しさが発揮されていない。 その理由は、
1.バレエダンサーを引き抜くストーリーは面白い。 しかし肉付けが上手くない。 中身の薄いインド製ダンス映画と同じね。
2.バレエを組み込んだ振付は良いとはいえないわ。 作成過程も省いているし・・。 特に台や布の利用はストリートに合わない。
3.カメラの切り替えが早すぎててダンスをゆっくり見ることができない。 何を観客に一番みせたいのかわからないわ。
HPをみると来春に続編が来るようね。 でも同じような内容ならダメよ。

2012年11月1日木曜日

■女司祭-危機三部作・第三部

作・演出:アールパート・シリング,出演:クレタクール
東京芸術劇場・シアターイースト,2012.10.27-30
ブタペスト育ちの女優が演劇教師となりルーマニアの田舎町に家族と共に赴任する話です。 彼女が日常生活での問題点を議論にあげて生徒にぶつけていきます。 生徒の生活体験談や現地の映像も取り入れながら進行します。
時々舞台状況や子供の存在意義についての質問を観客に向けます。 観客はそれに参加しなければなりません。 緊張感があります。 そして子供たちが貧困・差別・宗教に対峙する姿が現れてきます。 舞台の中高校生はとても不思議な感じがしますね。
彼らの現実生活と舞台演技が入り混じるためです。 国を越えての教師移動やキリスト教の影響力は島国で無神論の日本では想像し難いところです。 ヨーロッパのディープな課題が現れている舞台です。