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■天號星 てんごうせい

■作:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:古田新太,早乙女太一,早乙女友貴,久保史緒里,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2024.4.5-15(ミラノ座,2023.9.14-10.21) ■引導屋の半兵衛と殺し屋銀次の心(=意識)が入れ替わるSF風物語になっている。 この種の話は心が元の身に収まることが多い。 しかし、そうはいかない。 ここが作者と演出家の強いところです。 悪代官とヤクザの談合、用心棒の登場、これに新興宗教が庶民に入り込み、佳境には親子の情を強調し幕が下りる。 歌唱も入り、この手のチャンバラ時代劇はいつ見ても楽しいですね。 役者の演技の激しさは勿論、科白も演技に耐える質・量を持っていました。 *2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演 *ミラノ座オープニング作品 *ゲキxシネ2024年作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/100648/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、いのうえひでのり ・・ 検索結果は13舞台 .

■刀剣乱舞、月刀剣縁桐 つきのつるぎえにしのきりのは

■原案:「刀剣乱舞ONLINE」,演出:尾上菊之丞ほか,出演:尾上松也,尾上右近,中村鷹之資ほか ■シネリーブル池袋,2024.4.5-(新橋演舞場,2023.7収録) ■原作はオンラインゲームらしい。 未来から1550年代に遡り足利義輝の暗殺、いわゆる「永禄の変」を阻止する時間遡行軍と戦う6人の刀剣男子を描く。 物語はしかし、義輝暗殺を実行する気配が無い。 歴史を変えないため刀剣男子が義輝を殺すことになる。 奇妙なストーリーです。 歴史がループしてしまう。 今の歴史が絶対のため面白さも半減ですね。 観後に「永禄の変」を調べたが推測部分も多々あり複雑です。 室町幕府末期のため混乱していたのでしょう。 舞台はヒト・モノを含め歌舞伎のリソースを全て使い切ろうとする構成です。 しかも動きも科白も型に嵌まっていて硬い感じがする。 特に舞踊を取り入れた仕草が際立ちます。 琵琶演奏もある。 新古典派とでも言うのでしょうか? 硬い舞台にもかかわらず観客は若い女性で一杯でした。 贔屓筋ですか? いつものシネマ歌舞伎はオバさんで混み合うのですが今日は新鮮でした。 *シネマ歌舞伎作品 *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/2477/

■運命の力

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:マリウシュ・トレリンスキ,出演:リーゼ・ダーヴィドセン,ブライアン・ジェイド,イーゴル・ゴロヴァテンコ他 ■東劇,2024.4.19-25(メトロポリタン歌劇場,2024.3.9収録) ■METでは20年ぶりの上演らしい。 「卓越した歌手の存在と複雑な台本の処理、この二つが揃わないと上演は不可能だ!」。 指揮者がインタビューで答えていたが、今回この二つがクリアできたと言うことね。 はたしてソプラノ、テノール、バリトンの3歌手は聴きごたえ十分。 ただしドン・カルロ役イーゴル・ゴロヴァテンコはMET初出演で張り切り過ぎたかも。 バリトンには聴こえなかった。 そして映像を取り込んだ現代の演出は現実的で、レオノーラの修道院生活との乖離が際立つ。 でも戦争が抽象化され落ち着きを取り戻した後半からヴェルディの世界へ戻っていくことができたわよ。 占い師プレツィオジッラが登場する場面は地獄に直結した雰囲気がでていて興奮、それと存在感ある父の亡霊の度重なる出現もね。 運命の力とは戦争と宗教を絡めて、生まれや育ちなど階級的な社会的出自に関わる力だと思う。 だから当時の皆がヴェルディに熱狂したのね。 *METライブビューイング2023作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5504/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、トレリンスキ ・・ 検索結果は4舞台 .

■デカローグ2・4

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,演出:村上聡史,出演:前田亜季,益岡徹,近藤芳正,夏子ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.4.13-5.6 ■前回と演出家は代わったが舞台の流れは変わらない。 美術も照明も音楽も、そして役者の動きや科白の雰囲気も似通っている為です。 しかし回が積み重なっていくほど人物たちの心の襞は複雑化しているように感じられる。 観客の心に物語が積み重なっていくからでしょう。 今回の2題は結末が分かり難い。 「デカローグ2」は愛人の子供を宿っている妻は重病の夫を前になぜ心境を変化させたのか? 「デカローグ4」は妻からの手紙を夫も娘も読んでいなかったのか? どうであれ、これだけ心を捻り続けるのは十戒の祟りかもしれない。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、上村聡史 ・・ 検索結果は6舞台 .

■デカローグ1・3

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,翻訳:久山宏一,台本:須貝英,演出:小川絵梨子,出演:ノゾエ征爾,高橋惠子,亀田佳明,千葉哲也,小島聖ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.4.13-5.6 ■二本立てです。 一話完結型の一時間テレビドラマを観ているようです。 重量感は薄い。 「デカローグ1」は安全を検証したにもかかわらず予期せぬ事故で命を落とす話です。 これを宗教に結びつけオチにしている。 「モーセの十戒」を題材にしているらしい。 戒律を読むと当たり前のことしか書いてない。 しかし日本的無神論者の私からみると異様な文章に感じます。 続いて「デカローグ3」を観る。 クリスマスイブに元恋人の女が訪ねてくる話です。 男は素晴らしい家族を持っている。 にもかかわらず、イブの日にここまで女に付き合うのは何故か? 二人の過去をいろいろ想像するが限界があります。 作者は20世紀後半に活躍したポーランドの映画監督です。 数十年前に彼の映画を数本観ているがまったく記憶にない。 今日の舞台も映画らしい雰囲気がある。 例えばパソコン画面の動き、ドライブ場面の処理、ダラダラ続く男女の姿にそれが現れている。 物足りない舞台だったのは映画時間を舞台空間に持ち込んでも熟成し難いからでしょう。 10話で完結するので最後まで観ないと何とも言えないのですが。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小川絵梨子 ・・ 検索結果は20舞台 .

(中止)■能楽堂四月「二九十八」「嵐山」他

■国立能楽堂,2024.4.10,4.13 ■体調を崩し寝込んでしまう。 4月10日「二九十八」「嵐山」、13日「靭猿」「吉野静」の観劇はキャンセルする。 布団の中でウツラウツラしていると忘れていた過去が次々に現れる。 退職した仕事の夢もみる。 コンピュータ業務に携わっていたが、いつもスケジュール管理に振り回されていた。 ・・設計書の合意、データベース評価、プログラミング進捗、テスト判定から本番稼働へ・・。 夢に上司や同僚、業者の営業や技術者が登場する。 夢から覚めて、もう<納期>は考えなくていいんだ!と自分に言い聞かせるが・・。 スケジュールは人生に不要だ、と。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/4149.html?lan=j *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/4150.html?lan=j

■NHKバレエの饗宴2024

■指揮:井田勝大,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■NHK・配信,2024.3.24(NHKホール,2024.1.27収録) *下記の□5作品を観る. □ルール・ブルー ■振付:イリ・ブベニチェク,音楽:J・S・バッハ他,舞団:東京シティ・バレエ団 ■初めて出会う振付家です。 奇抜さは無い。 動作は大きくもなく速くもない。 バレエ3割ダンス7割の比率ですか? 幾つもの(絵画の)額縁が登場します。 小さな額縁は持って踊る。 薔薇や剣も持つ。 「・・黄昏時にルーブル美術館に飾ってある中世絵画から抜け出した人物たちの恋愛を描いている」。 プレトークで振付家が言っていましたね。 よくある物語だが起伏に富みまとまっていました。 選曲は凡庸だが、ピアノの爽快さから弦楽器の深みへ進む流れが飽きさせない。 □眠れる森の美女-グラン・パ・ド・ドゥ- ■振付:コンスタンチン・セルゲーエフ,出演:永久メイ,フィリップ・スチョーピン,舞団:マリンスキー・バレエ団 ■二人は落ち着いていました。 力量が見えてきます。 永久メイの関節を意識した動きが面白い。 □くるみ割り人形-グラン・パ・ド・ドゥ- ■振付:ピーター・ライト,出演:ワディム・ムンタギロム,金子扶生,舞団:英国ロイヤル・バレエ団 ■二人は貫禄十分です。 安心して観ていられる。 チャイコフスキーを聴くと一気にバレエの世界へ入っていけます。 □幻灯 ■振付:小尻健太,音楽:リヒター(ヴィヴァルティに基づく),出演:中村祥子,小尻健太 ■「人生の節目だ」。 プレトークでの二人の言葉です。 まさに人生の折り返し点の一幕でしょう。 音楽が二人に寄り添っている。 美術と照明は暗いが希望がみえる。 振付も落ち着いていた。 大人の味が出ていました。 □ドン・キホーテ-第3章- ■振付:アレクセイ・ファジェーチェフ,音楽:L・ミンクス,出演:米沢唯,速水渉悟ほか,舞団:新国立劇場バレエ団 ■トリを飾るにふさわしい。 ダンサーたちも最高です。 衣装や美術も素晴らしい。 整然と規律あるところにこの舞団の特徴が現れていた。 米沢唯は知っていたが、いつのまにか知らないダンサーが増えましたね。 新旧交代が激しいのでしょう。 ひととおり観て、気に入った作品は「幻灯」、気に入った振付は「ルール・ブルー」でし

■TIME

■音楽:坂本龍一,演出:高谷史郎,出演:田中泯,宮田まゆみ,石原淋 ■新国立劇場・中劇場,2024.3.28-4.14 ■中劇場は半年ぶりだが・・、何かが変わった!? 円形客席を180度まで拡張したようです。 吹っ切れた感じですね。 いままでは中途半端で落ち着かない劇場だった。 ただし今日の舞台は奥があるので両端の新客席は使用していない。 そして舞台に目を凝らすと最初はよく分からなかったが水が張ってある? ・・暗いなか、宮田まゆみが笙(しょう)を奏でながら舞台を横切っていく。 水や鐘の音が入り混じる。 田中泯が登場し・・蠢・き・回・る。 映像と朗読は彼本人を事前収録して舞台の演技と同期させていく。 田園や都市の風景も映し出す。 一つ目の話は死に際の女が彼に語り掛ける。 「死にます。 百年経ったら会いにきます」。 そして墓を掘り彼女を埋める。 二つ目の話では彼が旅の途中で夢を見る。 長い夢から覚めたが、「束の間の時だったのだ」。 再び彼は水の中で・・戯・れ・回・る。 百合の花が咲いた。 「百年経たのか」。 終幕、宮田まゆみが笙をふきながら再び水の上を横切っていく・・。 昨日観たジェフ・ミルズのブラック・ホールは空間を意識していたようだが今日の舞台は時間である。 音楽や映像そして二つの語りはとても練られていた。 田中泯も存在感があった。 統合された世界が出現していました。 物語が気になったので帰りにプログラムを購入する。 朗読された原作は「夢十夜」「邯鄲」「胡蝶の夢」。 ブログはここで終わりにしてプログラムの残りを読むことにします。 *パルコ劇場、 https://stage.parco.jp/program/time/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、高谷史郎 ・・ 検索結果は6舞台 .

■THE TRIP-Enter The Black Hole-

■演出:ジェフ・ミルズ,美術:C.O.L.O,衣装:落合宏理,振付:梅田宏明,出演:戸川純ほか ■ZEROTOKYO,2024.4.1 ■ジェフ・ミルズのブラックホールへ突入! 音楽・映像・照明そしてダンス、そして詩の朗読が交差する舞台がここに出現する。 ・・宇宙服姿のジェフ・ミルズの挨拶に始まり、彼の操作するドラムマシンから発するテクノポップ、背景にブラック・ホールらしき映像を映し出した舞台。 そこに4人のダンサーたちが踊りまくる。 途中、ボリューム感あるケープを纏う戸川純が詩のような短い科白を朗読し、再びダンス、朗読、ダンスと続く・・。 総合芸術としてまとめあげるのは大変ですね。 ダンス振付はリズム感ある音響に合わない、照明も音響に追随できない、宇宙観を伴う映像は凡庸。 即興が命ですがちょっと噛み合わなかった。 視覚と聴覚そして言語を身体へ凝縮・統合することができるか? *劇場、 COSMIC LAB presents JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』 supported by AUGER | ZEROTOKYO | Shinjuku Kabukicho

■トリスタンとイゾルデ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:大野和士,演出:デイヴィッド・マウヴィカー,出演:ゾルターン・ニャリ,ヴィルヘルム・シュヴィングハマー,リエネ・キンチャ他,管弦楽:東京都交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2024.3.14-29 ■薬や酒を前面に出すと舞台は大きく揺れる。 これを脇役にできるかどうかが要ね。 当作品の媚薬が効き過ぎるのはいつもの通り。 そして美術は抽象的で歌手の動きは少ない。 すべてワーグナー風だが有機的に熟成していかない。 演出家デイヴィッド・マクヴィカーのワーグナーは初めてよ。 彼はワーグナーが苦手なのかもしれない? 舞台は2010年シーズンの再演らしい。 これは見逃しているの。 指揮は再び大野和士で、休息を含め上演時間は5時間半。 演奏はぶれないし都響が気持ちよく聴かせてくれる。 そしてマルケ王は存在感があった。 トリスタンがちょっと疲れていたかな?、幕が進むほどきつくなるし・・。 今回はタイトルロールの二人が変更になってしまった。 トリスタンは2カ月前の交代のため慌ただしい。 これも媚薬を操れなかった理由かもね。 それでも作品の持つずっしり感は心に届いたわよ。 *NNTTオペラ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_027412.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、デイヴィッド・マクヴィカー ・・ 検索結果は11舞台 .

■新ハムレット

■作:太宰治,演出:早坂彩,出演:太田宏,松井壮大,たむらみずほ他,劇団:トレモロ,青年団ほか ■こまばアゴラ劇場,2024.3.22-31 ■・・オフィリヤは王妃ガーツルードに「あなたを尊敬していた!そして母の匂いがするハムレットは嫌いだ!」と。 ハムレットは叔父クローヂヤスに「あなたは一生懸命に王の務めを果たしている!」と。 侍従長ポローニアスは留学する息子レヤチーズに「学友は年上一人と同学年一人だけでよい。試験の癖を教えてもらいノートを貸してもらえるから」と・・。 登場人物は思いもよらない言葉を発する。 真坂!な驚きが次々とやってきますね。 原作は読んでいません。 が、さすが太宰治、捻りが効いている。 ・・父殺しの劇中劇を観てクローヂヤスが笑いガーツルードが怒り狂う、そして何と!ポローニアスはクローヂヤスに殺される・・。 他者の心は知ることができない! 芝居はそう言っているようにみえる。 言葉は心を表さない、と。 そして不安になり、より激しい言葉で相手の心を読もうとする。 (「殿下何をお読みで?」「言葉、言葉、言葉!」)。 でもオフィリアは「愛が言葉以外にないとしたらつまらない」と言ってましたね。 「ハムレット」をグッと近くに引き寄せたあとにスカッと遠くへ投げ飛ばした舞台でした。 * CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/298409 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、早坂彩 ・・ 検索結果は2舞台 .

■クリーチャー CREATURE

■振付:アクラム・カーン,音楽:ヴィンチェンツォ・ラマーニャ,指揮:ギャヴィン・サザーランド,出演:ジャフリー・シリオ,高橋絵里奈,猿橋賢ほか,舞団:イングリッシュ・ナショナル・バレエ ■NHK・配信,2024.3.17(マライアン・センター・フォー・ダンス(ロンドン),2021.4.19-5.2収録) ■近未来SF物語をバレエ団も取り込み始めた!? 人類生存のための人体実験を北極圏で行っているらしい。 主人公クリーチャーは野蛮人というか奴隷のように描かれている。 脳と電磁波が同期し心身は乱れロボットのように踊りまくる。 厳しい管理下で人間が持っている原初の心と体を忘れずにいることができるだろうか?  振付家アクラム・カーンの舞台をじっくり見るのは初めてだが、手の動き顔の表情そして鋭い動きはカタックを感じさせます。 美術や雰囲気も混沌とした洞窟街を思い出させる。 途中ボレロが聴こえていましたね。 ダンスのため科白は無いが、観客が台詞を自由に付けられるストーリーです。 どうにでも解釈ができる。 人類の閉そく感が漂います。 *English National Ballet、 https://www.ballet.org.uk/production/creature/

■N/KOSMOS

■原作:ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ,演出:小池博史,演奏:ヴァツワフ・ジンペル,出演:松島誠,今井尋也,荒木亜矢子ほか ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.3.21-24 ■・・聴こえてくる太鼓のリズムと熱気ある行進。 社会主義崩壊前夜の東欧狂乱を描いているのでしょうか? 交じり合う映像や小道具が分裂症的世界を招き、舞台は乱痴気騒ぎが充満していく。 ときどき小鼓の響きが空間を引き締め、そして何よりもサクスフォンの生演奏が<リアル>に吠えてくる・・。 ポーランドの役者にスラブ系の荒々しさが漂います。 カトリック(?)司祭の<宗教と性欲>の葛藤が他住人に乗り移っていくような、あるいはその逆のストーリーです。 (いつもと)変わったリズムと面白さがある。 それは<聖と俗>の具体を取り込んだからでしょう。 これが宙吊状態を生み、新たな芸術世界=調和として提出したようにみえる。 世界連携の成果と言えます。 *小池博史ブリッジプロジェクトOdyssey作品 *ポーランド・グロトフスキ研究所共催 *2024都民芸術フェスティバル参加作品 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/20240321te/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小池博史 ・・ 検索結果は11舞台 .

■能楽堂三月「花争」「鸚鵡小町」

*国立能楽堂三月特別企画公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・花争■出演:山本東次郎,山本則重 □能・観世流・鸚鵡小町(杖三段之舞)■出演:観世清和,宝生常三ほか ■国立能楽堂,2024.3.20 ■「花争(はなあらそい)」は、「はな?、さくら?」どちらが正解? ・・どちらでもよい。 それは証歌でもわかる。 でも「はな>さくら」の不等式が成立する。 「鸚鵡小町(おうむこまち)」は特別公演のため囃子・地謡は肩衣を付けての登場。 緊張感溢れる舞台だった。 シテ小野小町は雑音を出さない。 小書「杖三段之舞(つえさんだんのまい)」は解説を読んでいたので分かった。 舞の途中で休息も入る。 面は「姥(うば)」だったが嬉しそうに舞っていた。 小町は昔を思い出したのだ。 狂言・能ともに出演者の演技には200%満足。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3186.html?lan=j

■田園に死す

■原作:寺山修司,脚色・構成・演出:天野天街,音楽:J・A・シーザー,芸術監督:流山児祥,出演:大内厚雄,寺十吾,小川輝晃ほか ■スズナリ,2024.3.14-24 ■幕が開いて直ぐに<壊れ時計>が演じられたが調子が狂ってしまった。 反復は演出家得意の技法だがここまで繰り返されると諄いとしか言いようがない。 しかし徐々に天街の世界に入っていくことができました。 それは乾いた規則性のある舞台です。 主人公の分身たちの出会いが舞台に堆積していく。 さらに劇中劇が追い打ちをかける。 科白は絡み合い昇華され、ここに懐かしい寺山修司の世界が出現する。 この熟成に2時間半が必要だった。 久しぶりの寺山ワールドを堪能しました。 *寺山修司没後40年記念認定事業 *第44回紀伊國屋演劇賞団体賞受賞作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/303259 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、天野天街 ・・ 検索結果は11舞台 .

■assimilating、梅田宏明

■振付・出演:梅田宏明,製作:S20,プロデューサー:田野入涼子,テクニカルディレクション:岩田拓朗 ■横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール,2024.3.16-17 ■先ずは展示室で「Haptic Installation」(2010)「choreograph1-water」(2023)を観る。 前者は聴覚、後者は視覚に向き合う美術作品で彼の舞台を連想させる。 次に、プレトーク「梅田宏明の活動報告」(スタッフ2名が出席)を聴く。 「Movers Platform」「姿勢教室」「振付家ワークショップ」など彼の多彩な活動歴を知る。 赤レンガ倉庫が彼の本拠地だったことが分かります。 そして「assimilating」を観る。 抽象映像と音響を背景に、足を地面にしっかり付けて上半身は切れ味が鋭く動きの少ない振付でまとめている。 身体は現代舞踏を意識させます。 視覚と聴覚を含めた舞踏ダンスと言ってよい。 途中、宗教とは違うが瞑想状態に入ることができる。 液体のような映像が身体に揺らぎを感じさせる。 明(動)→暗(静)→明(動)の流れか? 以前にみた矢のように走る光とは違う感覚が持てますね。 最後にアフタトークがある(作者、館長、司会の3名が出席)。 「この作品は2023年に作成した」「少しずつ手を加えている」「即興も入る」。 ダンス以外の映像や音響などの芸術活動に若い人への参画を勧めていた。 コンテンポラリダンスを引っ張る彼の態度が頼もしい。 倉庫前の広場で「赤レンガわんさんぽ」が開催されていました。 ドッグイベントらしい。 途中、犬を連れた人が多いのも気になっていたのだが。 「ドッグマッサージ」「ドッグフード」等々の屋台が数十件も連ねている。 犬好きにはたまらないですね。 *劇場、 https://www.yokohama-akarenga.jp/event/detail/1013 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、梅田宏明 ・・ 検索結果は2舞台 .

■諜報員

■作・演出:野木萌葱,出演:植村宏司,西原誠吾,井内勇希ほか,劇団:パラドックス定数 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.3.7-17 ■ゾルゲ事件を事前に調べておけばよかった。 幕が開いてからそう思った。 それはともかく、久しぶりのパラドックス定数を楽しむことができました。 舞台の構造や照明、役者の動きや立ち位置などが計算され尽くしていますね。 逮捕された3人の生き方が前面にでている。 「国を守りたい」「命を守りたい」「自由を守りたい」・・。 そして作品が強調しているのは警察組織内の評価です。 警察と特高の違いも論じている。 警察では正義と欲の差は法の順守の中で処理される(?)。 逮捕者が解放されたのはこの為でしょう。 特高ではそうはいかない。 演出家の挨拶文に「劇的にしない」「大事件にしない」とあった。 観終わった後、これに納得しました。 当事者にとって事件の全体像はみえない。 観客にとっても歴史の断片が微かに浮かんで直ぐに沈んでいったような舞台でした。 ほどよい緊張感もあった。 でも日常の事件のように数日経てばボヤケていってしまうかもしれない。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、野木萌葱 ・・ 検索結果は10舞台 . *パラドックス定数第49項 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater357/

■カルメン

■作曲:G・ビゼー,指揮:ダニエレ・ルスティオーニ,演出:キャリー・クラックネル,出演:アイグル・アクメトチナ,ピュートル・ペチャワ,エンジェル・ブルー他 ■新宿ピカデリー,2024.3.8-14(メトロポリタン歌劇場,2024.1.27収録) ■アイグル・アクメトチナがカルメンを現代に甦らせた! アンナ・ネトレプコを若くしたような姿、適度にネットリ感のある声がセクシーで自由奔放な女を歌い演じる。 ・・舞台はアメリカの今、兵器工場の女工達とそれを取り巻く軍隊や群衆はどこか異様な光景にみえる。 そこで昔ながらの男を演ずるドン・ホセ・・。 「ロマン系ドン・ホセとラテン系カルメンの立ち位置は音楽的にも交じり合わない」(指揮者インタビュー)。 現代アメリカの演出効果は発揮されないまま楽曲の力に引っ張られてしまった。 場面間の繋がりも弱い。 これで人物感情が途切れていたわよ。 作品としての「カルメン」は演出を無視できる強さがある。 アイグル・アクメトチナの歌手としての「カルメン」がこれに加勢していたから尚更ね。 *METライブビューイング2023シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5489/

■能楽堂三月「鐘の音」「胡蝶」

*国立能楽堂三月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・鐘の音■出演:野村万禄,能村晶人 □能・観世流・胡蝶■出演:武田宗和,福王和幸,村瀬堤ほか ■国立能楽堂,2024.3.9 ■「金の値」を聞いてきてくれ! 主人はこう伝えたが、「鐘の音」を聴いてきてくれ!と太郎冠者が聞き違える話である。 「コガネのネ」と言ってくれ!と文句をつけていたが後の祭り。 太郎冠者が鎌倉の寿福寺・円覚寺・極楽寺・建長寺の鐘の擬音を演じる。 また終幕の般若心経を引用した小歌も楽しい。 「胡蝶」のプレトーク(三浦裕子)を聴く。 この作品は荘周「胡蝶の夢」・舞楽「胡蝶」・「源氏物語」を参考にしている。 舞楽では「迦陵頻(かりょうびん)」との番舞(つがいまい)になっている。 「源氏物語」は番舞を踏襲したが当能は「胡蝶」だけを採用した。 舞台では<太鼓入り中ノ舞>で演じられたが、シテの冠の蝶がピョンピョンと跳ねまわっている。 舞楽では童舞らしい。 童が演者ならピョンピョンは似合うとおもうが・・。 動きが緩い舞ではしっくりこない、逆に固定した方が観ていても集中できる。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3180.html?lan=j

■能楽堂三月「鬼ヶ宿」「志賀」

*国立能楽堂三月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・鬼ケ宿■出演:茂山逸平,茂山千五郎 □能・宝生流・志賀■出演:佐野由於,今井基,御厨誠吾ほか ■国立能楽堂,2024.3.6 ■「鬼ヶ宿」作者は江戸幕府大老の井伊直弼である。 彼は「部屋住み」時代に国学・能楽・茶の湯そして武術に没頭していたらしい。 作品は1860年(安政7年)2月に初演されたがその数日後に桜田門外で作者は暗殺されている。 能「黒塚」のパロディであることが作品名からも分かる。 「志賀」の主人公は六歌仙の一人、大伴黒主(志賀明神)。 このため「古今和歌集」はもちろん和歌の世界が散りばめられている。 それにしても最初から囃子、特に笛と大鼓がけしかけてくる。 何故こんなにも急がせるのか? 後場に入り、志賀明神の神楽の舞を見て分かった。 舞のテンポがとても速い。 この速さを囃子は予言しているかのように前場から飛ばしたのである。 この舞は楽しかった。 神妙さを感じさせない。 庶民好みだ。 懐かしさもある。 シテ面が「小尉」から「邯鄲男」に換わったが、賑やかな囃子に邯鄲男のとぼけるような舞が面白い。 シテ方と囃子方の呼吸がズレた場面もあったが、脇能の面白さは十二分に伝わってきた。   *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/3179.html?lan=j

■Ate9ダンスカンパニー

*下記□2作品を観る. ■演出・振付:ダニエル・アガミ,出演:マノン・アンドラル,アドリアン・デレフィン,ビョルン・バッカー他 ■世田谷パブリックシアター,2024.3.1-3 □EXHIBIT B ■音楽:オミッド・ワリザデ ■バットシェバ舞踊団は硬さがある。 これを換骨奪胎して柔らかさに変換する派生グループが多い。 このグループ、作品もそれです。  7人のダンサーがスナックを食べ玩具を操作しながら幕が開く。 振付はコミカルの連続で日常生活からの引用が多い。 インド系映画を思い出させる音楽です。 面白い楽曲が6章くらいで構成されている。 途中、ダンサーの歌唱も入るが言葉がわからない。 字幕が欲しいですね。 デュオも数組入る。 椅子などの道具類も利用していく。 音楽がダンサーを生き生きとさせていた。 どのようなダンスカンパニーか見えてきました。 □calling glenn ■音楽・演奏:グレン・コッチェ ■パーカッションを主体とした生演奏です。 ドラマーが素晴らしい。 胸に響いてきます。 前作と違い、雑音を取り除き硬さが前面に出ている。 切れ味がいいですね。 途中、鉄琴演奏で数組のデュオを踊らせて柔らかさを挟み込んでいる。 終幕はマイクらしき道具類を取り出してコミカルに戻るが力強さは維持します。 音楽とのコラボに力を入れているのが分かりました。 初めてのグループだが楽しく観ることができた。 挨拶文にパレスチナ問題が書かれていたがやはり気にしているのでしょう。 これにめげず全力で舞台を作って欲しい。 ダニエル・アガミ、グレン・コッチェ、白井晃のアフタートークがあったが都合で見ることができなかった。 これは残念。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2147/

■かもめ

■原作:A・チェーホフ,演出:レオニード・アニシモフ,出演:瀧山真太郎,朱花枷寧,小倉崇昭ほか,劇団:東京ノーヴエイ・アート ■カンフェティ・配信,2024.2.24-25 ■チェーホフは忘れた頃にやってくる。 そして人生で忘れていた事を思い出させてくれます。 当劇団を配信で観るのは2度目です。 下北沢の劇場に居るような雰囲気は伝わってくるが、しかし映像や音響の質は良くない。 暗くて狭い居間で上半身だけを映し場面ごとにフェイドイン・アウトを繰り返しダイジェスト版のように繋げていく。 余分な物・事が見えないので各々の恋愛関係がいつもより浮き出ていました。 二組の役者役と作者役が登場する劇中劇の構造が溶けていくような余韻も感じられた。 今、思い返すと舞台上では一度も氏名や渾名をいっていなかった!? あなた、お前、あいつ、大事な人、愛しい人・・・。 チェーホフの舞台で名前を言い合うと耳障りに聞こえる場合が多い。 ロシアの舞台全般に言える。 名前が無いと役者と観客の間が取り払われたような感触が得られます。 *第34回下北沢演劇祭参加作品 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、レオニード・アニシモフ ・・ 検索結果は12舞台 . *劇団、 https://tokyo-novyi.com/home/2024-online-seagull/

■ロメオとジュリエット

■作曲:シャルル・グノー,指揮:カルロ・リッツィ,演出:トマ・ジョリ,振付:ジョセファ・マドキ,出演:エルザ・ドライシヒ,バンジャミン・ベルネーム,ロラン・ナウリ他,演奏:パリ・オペラ座管弦楽団 ■NHK・配信,2024.2.11(パリ・オペラ座バスチーユ,2023.6.23・26収録) ■今年7月開催のパリ・オリンピック芸術監督トマ・ジョリの演出らしい。 さっそく観ることにする。 舞台は「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」を思い出させる雰囲気を持っている。 暗くて湿気が漂う船のような形をした建物と階段、天井には虚ろなシャンデリア群、そこに屯い奇抜な衣装を纏う合唱団と舞踊団。 でも、彼らの腕や手をバタバタさせる忙しない振付が気持ちを苛立たせる。 ミュージカルオペラと言ってよい。 それも次第に落ち着いてくる。 物語展開は大胆に進み、ロメオとジュリエットに焦点が絞られてくるからよ。 どこにでもいる普通の二人にみえる。 ジュリエットが妙薬を飲む場面は彼女の覚悟が伝わってくるわね。 墓場の中も蝋燭と花で一杯。 この場面では一番厳しいバージョンを採用するの。 それはロメオが毒薬を飲んだあとジュリエットが目を覚まし、二人は愛し語り合う、「一緒に逃げよう」「二人で幸せになろう」と。 しかしロメオに毒がまわってくる・・。 ジュリエットは短剣で胸を刺しロメオを追いながら幕が下りる・・。 やはり涙を誘うわね。 舞台に多人数を乗せてもブレない強さ、展開の巧さがあった。 カーテンコールでは演出家も登場したが、セーヌ川を使ったオリンピックが今から楽しみだわ。 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/blog/bl/pXKpLarzZx/bp/pYOxy75zJq/

■う蝕

■作:横山拓也,演出:瀬戸山美咲,出演:坂東龍汰,近藤公園,綱啓永ほか ■シアタートラム,2024.2.10-3.3 ■ダンボールの大きな扉が三方向に開き舞台が顔を出す幕開きは衝撃でした。 音楽も激しい。 しかしその後はよく分からないまま終幕迄いってしまった。 <う蝕>という得体のしれない何物かに島が襲われたようです。 どういうわけか歯医者ばかりが登場する。 チラシをみたら「う蝕」とは虫歯のことらしい。 役者の科白・発声を含めた演技からどのような状況なのかが伝わってこない。 コントのような場面もある。 死者への弔いの言葉もあれば概念を論ずる言葉遊びも多い。 かの島から来た白衣の医者らしき者が「ここにいるべきでない人間が混ざっている」。 一人を除いて既に死んでしまっている人々なのか? 集中できない舞台です。 (抽選だった)席も良くない。 作者も演出家も何回か観ているが二人の組み合わせは初めてです。 でも今日はリズムが合わなかった。 不条理劇は観る側の心身の状態も大事です。 こういうことはたまにある。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/2132/

■アマゾンのフロレンシア

■作曲:ダニエル・カターン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:メアリー・ジマーマン,出演:アイリーン・ペレス,マッティア・オリヴィエリ,ガブリエラ・レイエス他 ■東劇,2024.2.2-8(メトロポリタン歌劇場,2023.12.9収録) ■・・フロレンシアはマナウス公演に出演する為、かつ行方不明の蝶ハンターである恋人を探す為にアマゾンの船旅に出る。 途中、客船エル・ドラード号は嵐で難破するがアマゾネスに助けられる。 しかし目的地はコレラが発生して上陸できない。 そこで彼女は一人ジャングルの奥へ入っていく・・。 旅人たちの人生への倦怠感、愛の行き違いなどなど、日常の些細な淀みが淡々と歌われていくの。 船のように流れゆく演奏で久しぶりに癒されていくのを感じる。 そこに生息する鮮採な魚や鳥、獣が目を楽しませてくれる。 終幕、フロレンシアは恋人が近くにいることを察知する。 「生きていようが死んでいようが、・・あなたを感じる」「あなたが私の歌を聴いているのがわかる・・」。 ・・。 「・・人生を整調してくれる舞台」(演出家インタビュー)の通り、これは<セラピーオペラ>と言ってよい。 フロレンシアが蝶になってジャングルに消えていく姿をみて何とも言えない安らぎが訪れる。 不思議な生と死に挟まれた平凡な日常を肯定できるようになるの。 G・マルケスに触発された作品らしい。 スペイン語オペラは初めてかな? 「・・ラテンアメリカのスパイスが感じられる」(指揮者インタビュー)。 「メキシコ万歳」のもう一つの顔が現れている。 ところで英語字幕が舞台背景に写されていたが観客にとって見易いはず。 この方法は演出家の得意とするところね。 舞台上に字幕を写すのを日本でも流行らせて欲しい。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、メアリー・ジマーマン ・・ 検索結果は3舞台 . *METライブビューイング2023シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5459/

■NOBODY IS HERE

■演出・振付:笠井叡,出演:山東瑠璃,大植真太郎,ピアノ:大瀧拓哉 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2024.1.26-28 ■「・・ここには<誰もいない>ではなく、ここに<誰でもないものがいる>としたい!」。 演出家の挨拶文です。 ダンサーの頭先から足先まで薄い衣装がピタリと張り付いている。 もちろん自由に動き回れる。 目鼻口がハッキリしないので<誰でもない者>にみえます。 まさに舞踏的表現です。 生演奏のピアノを背景に二人は踊りまくる。 笠井叡とわかる振付です。 曲はベートーヴェンとバッハですが演出家の好みでしょうか? でも曲に合わせるのでダンサーの動きは忙しい。 コミカルなダンスと言ってよい。 曲に引きずられているようにみえる。   オイリュトミーダンスでは同作曲家でも滑らかな動きをしていたはずだが・・、何故このようなギザギザな振付になってしまったのか? 粗い振付は「アイデンティティを喪失していく姿」を描いているのかもしれない。 この喪失と回復が作品の要のようです。 でもテーマが重いとダンスを観る喜びは薄められます。 ところで、カーテンコールでのダンサー大植真太郎の挨拶は笑ってしまいました。 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、笠井叡 ・・ 検索結果は10舞台 . *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater351/

■マルコムX

■作曲:アンソニー・デイヴィス,演出:ロバート・オハラ,指揮:カジム・アブドラ,出演:ウィル・リバーマン,リア・ホーキンズ,レイアン・ブライス=デイヴィス他 ■東劇,2024.1.19-25(メトロポリタン歌劇場,2023.11.18収録) ■3幕4時間は長い。 でもマルコムの生涯を語るには必要かもね。 空飛ぶ円盤が降りてきた舞台は未来を描いているようにもみえる。 天井の円盤に照明をあて文字を映し字幕としても使う。 子供時代の1幕では家族がKKKの標的に、そして父の殺害が風景のように描写されていく。 2幕直前にマルコムはイスラムの影響で別人と化して出所する。 ここから物語が力強く進んでいく。 農場から都市へ移る衣装の変化が黒人世界を直截に表しているわね。 ジャズ風な楽曲でいつもとは違う。 ピアノやドラムも入りリズムを強調するからよ。 20世紀前半に流行したダンスもふんだんに取り入れコーラスも途切れない。 そこにイスラムの祈りが被さる。 彼は言う「・・400年間奴隷として生きてきた。 今、自由・正義・平等を求める!」と。 しかし使徒との意見の食い違いから彼は組織から離れていく。 そして暗殺される終幕へ・・。 過激な科白が続くし・・、これは<演説オペラ>と言ってよい。 そこに歴史的風景が重なる。 でも芸術的感動は少ない。 昨年の「チャンピオン」あたりからMETの革新が途切れない。 次々と登場する新しいオペラに期待したい。 *METライブビューイング2023年作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5442/

■唐茄子屋、不思議国之若旦那

■作・演出:宮藤官九郎,出演:中村勘九郎,中村獅童,中村七之助ほか ■新宿ピカデリー,2024.1.5-25(平成中村座,2022.10収録) ■「とうなすや、ふしぎのくにのわかだんな」を訳すと「カボチャ売り、不思議の国のアリス」。 ここでアリスは若旦那に代わる。 期待以上!流石クドカンですね。 科白の厚みが際立っている。 落語からの引用が多い為でしょう。 言葉を重ね合わせながら物語が紡ぎ出される。 それは<労働>と<カネ=貨幣>、それを越えた<贈与>と<返礼>が語られる。 「・・生きることは、みっともないことなのだ!」。 カボチャ売りに落ちぶれた若旦那へ、叔父からの言葉である。 心と体のすべてを曝け出し本気にならないとカネは稼げない。 働く、そして生きるとはそういうことだ!と。 その得たカネで貧しい母子を助ける若旦那・・。 共同体の核心を突く人情噺です。 途中、旦那役中村勘九郎がパラレルワールド吉原遊郭へ入り込み歳や身長が伸びたり縮んだりするが、ここは中村勘太郎と中村長三郎を登場させ3人一役で楽しく演じる。 久しぶりに隅田川東岸の面白さを堪能しました。 *シネマ歌舞伎2024年作品 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、宮藤官九郎 ・・ 検索結果は5舞台 . *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/2390/

■ばらの騎士

■作:フーゴー・フォン・ホーフマンスタール,演出:宮城聰,寺内亜矢子,音楽:根本卓也,出演:石井萠水,大高浩一,木内琴子ほか,劇団:SPAC ■静岡芸術劇場,2024.1.7-3.10 ■元帥家執事のプレトークを聴く。 オペラ「ばらの騎士」とは似て非なるものらしい。 早速場内へ。 生演奏や歌唱はあるが演劇と言ってよい。 元帥夫人の不倫相手がズボン役のため作品が生き生きしている。 そして夫人の倦怠感が随所に見られる。 ここが作品の要ですね。 しかし舞台は徐々に脱線していく。 引き回すのはオックス男爵ですか? ハチャメチャ過ぎる。 ドタバタ劇が続いていきます。 夫人が霞んでしまい高貴な倦怠の世界へ浸れない。 絶妙な均衡が崩れてしまった。 夫人が語る<時間>や<意識>などの哲学的議論が楽しい。 これはオペラでは演奏と歌唱の裏に隠される。 「時は意識と同じ速さで流れている(だから時は見えない)」「時は見えることがある(それは意識がアンニュイに向かう時)」。 終幕、彼女は時が流れ落ちていくことをオクタヴィアンに諭します。 はたして舞台はオペラと同じエキスを追求していました。 *SPAC2023秋-春シーズン作品 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、宮城聰 ・・ 検索結果は27舞台 . *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、寺内亜矢子 ・・ 検索結果は2舞台 . *劇場、 https://spac.or.jp/au2023-sp2024/der_rosenkavalier

■能楽堂一月「鞍馬参り」「二人静」

*国立能楽堂一月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・鞍馬参り■出演:茂山あきら,茂山七五三 □能・金春流・二人静(ふたりしずか)■出演:高橋忍,井上貴覚,原大ほか ■国立能楽堂,2024.12.13 ■プレトーク「形と影、二人の女」(小田幸子)を聴く。 ・・「「二人静」は足利義政の時代の1464年に勧進能として、「鞍馬参り」は豊臣秀吉1593年に上演記録がある」「両作品には<義経>が、「二人静」はそれに加えて<憑き物>がキーワードになる」「憑き物は当時は日常であった」「義経は白拍子を12人も連れ立っていた(義経記)」。 そして山中玲子論文「・・昔は一人であった」、また演者へのインタビュー「舞う時は二人揃うというより互いの個性を出すのがよい」が紹介された。 「物着」については「大口袴に履き替えるのは金春流だけである」。 などなど・・。 次に舞台を観る。 「鞍馬参り」は太郎冠者と主の間で非実体である梨(果物)の遣り取りが、また「二人静」では憑依された実体と幽霊の非実体との間に無言の遣り取りがある。 この非実体への働きかけも両作品のキーワードとしてもよいだろう。 とくに相舞の途中で両者が向き合うのだが、この両体融合の場面は劇的である。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/11017.html?lan=j

■能楽堂一月「三人夫」「春日龍神」

*国立能楽堂一月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・三人夫■出演:山本則秀,山本則孝,山本則重ほか □能・観世流・春日龍神(龍女之舞,町積)■出演:山階彌右衛門,林本大,武田祥照ほか ■国立能楽堂,2024.12.6 ■観応えのある2舞台だった。 「三人夫(さんにんぶ)」は三国の百姓が年貢を納めに上京する話である。 三人が連れ立って上る場面、年貢を納め歌を詠み祝酒を頂戴する場面、そして舞を舞いながら帰郷する場面、どれもが明るく楽しい。 左右上下の人間関係がすべて共感で繋がっている。 年初に相応しい。 「春日龍神」の小書「町積(ちょうづもり」は初めて聴いたが科白の長さに驚いてしまった。 長安へそして天竺へ渡航する明恵上人の思いを留まらせようと末社の神が10分近く喋り続ける。 神は正月返上で暗記をしたはずだ。 これでは明恵上人も諦めるしかない。 龍女が天女ノ舞、続いて龍神の激しい舞働で新年の元気を貰えた。  面は「小牛尉」から「泥顰(でいじかみ)」へ、後ツレは「龍女」。 全ての場面が充実していた。 お年玉宝くじが当選したような気分で千駄ヶ谷を後にした。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2023/11016.html