■能楽堂三月「鬼ヶ宿」「志賀」

*国立能楽堂三月定例公演の□2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・鬼ケ宿■出演:茂山逸平,茂山千五郎
□能・宝生流・志賀■出演:佐野由於,今井基,御厨誠吾ほか
■国立能楽堂,2024.3.6
■「鬼ヶ宿」作者は江戸幕府大老の井伊直弼である。 彼は「部屋住み」時代に国学・能楽・茶の湯そして武術に没頭していたらしい。 作品は1860年(安政7年)2月に初演されたがその数日後に桜田門外で作者は暗殺されている。 能「黒塚」のパロディであることが作品名からも分かる。
「志賀」の主人公は六歌仙の一人、大伴黒主(志賀明神)。 このため「古今和歌集」はもちろん和歌の世界が散りばめられている。 それにしても最初から囃子、特に笛と大鼓がけしかけてくる。 何故こんなにも急がせるのか? 後場に入り、志賀明神の神楽の舞を見て分かった。 舞のテンポがとても速い。 この速さを囃子は予言しているかのように前場から飛ばしたのである。 この舞は楽しかった。 神妙さを感じさせない。 庶民好みだ。 懐かしさもある。 シテ面が「小尉」から「邯鄲男」に換わったが、賑やかな囃子に邯鄲男のとぼけるような舞が面白い。 シテ方と囃子方の呼吸がズレた場面もあったが、脇能の面白さは十二分に伝わってきた。