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■Nf3Nf6

■作・演出:野木萌葱,出演:西原誠吾,植村宏司,劇団:パラドックス定数 ■シアター風姿花伝,2018.8.23-26 ■登場人物は二人。 先日の「 5seconds 」と同じね。 でも今回のほうが自由度はある。 役柄上で精神を患っていないからよ。 チェスだと思っていたら暗号の話なの。 二人は数学者で訳の分からない文字列を壁に書いていく。 有名なエニグマの開発や運用に携わったらしい(?)。 物語は「ホロコースト」と「エニグマ」を背景にナチス将校とユダヤ人捕虜の、かつては同僚だった「数学者」としての苦闘が描かれていくの。 暗号が敵国に解読されている不信感の漂うなか、将校は捕虜の弟を銃殺刑にし捕虜は将校の兄の自殺を見届けていることも語られる。 上記カギ括弧の三つ巴の姿を演出家の離れ業で縫い合わせていくのが凄い。 素材の組み合わせの面白さがでていたわ。 そしてチェスの駒は出来事を象徴にして盤上で反復されていく・・。 話は変わるけど、やっと公開鍵暗号方式が理解できたの。 凄いでしょう? うふふ。 *パラドックス定数第42項 *劇団サイト、 https://pdx-c.com/past_play/nf3nf6-2018/ *2018.8.28追記。 以下の作品を観る・・ ■イミテーション・ゲーム-エニグマと天才数学者の秘密- ■監督:モルテン・ティルドゥム,出演:ベネディクト・カンバーバッチ ■(アメリカ,2014年作品) ■早速「エニグマ」に関する作品を探したらこれが見つかったの。 芝居と違い連合国側から描いていて主人公は数学者A・チューリング。 彼の伝記物と言ってよい。 チェス優勝者も登場する。 チューリングはエニグマの解読に成功するけど個別の戦局に利用しなかった。 ドイツに見破られないようにする為よ。 これに統計的手法を加味して最後は勝利に導いたというストーリーね。 戦争の裏側で科学的に戦局を動かしていく恐ろしさがみえる。 面白い作品だわ。 *映画comサイト、 https://eiga.com/movie/80082/

■トリスタンとイゾルデ

■作曲:W・R・ワーグナー,演出:マリウシュ・トレリンスキ,指揮:サイモン・ラトル,出演:ニーナ・ステンメ,シチュアート・スケルトン,エカテリーナ・グバノヴァ,ルネ・パーペ他 ■東劇,2018.8.18-10.3(MET,2016.10.8収録) ■METアンコール上映が開催されていたので行ってきたわよ。 この作品は2016年に観ている*1、けどずっと気になっていたの。 「ワーグナー」の文字を見るといつも目が止まってしまう。 彼の作品は深みのある謎と劇的さを持っているから。 この二つは舞台芸術の必須条件だとおもう。  2回目だと余裕を持って聴くことができるわね。 サイモン・ラトルが演奏と歌唱を融合させるため「指揮者としてのマーラーを研究した」と言っていたけどナルホド。 全幕を通して底から湧いてくる重みのあるカタルシスを感じるのは何とも言えない味がある。 *1、 「トリスタンとイゾルデ」(MET,2016) *METライブビューイング2016作品 *作品、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2016-17/#program_01

■5seconds

■作・演出:野木萌葱,出演:井内勇希,小野ゆたか,劇団:パラドックス定数 ■シアター風姿花伝,2018.8.18-21 ■登場人物は日本航空350便墜落事故を起こした機長片桐とその弁護士平野の二人だけ・・。 精神障害や飲酒行為を舞台に乗せるのはとても難しいと思う。 現実に戻されてしまうからよ。 でも精神障害がテーマの核心だから今回は戻され難い。 片桐機長が交互にやってくる正常と異常の精神状況を対等に扱っている為もある。 しかし平野弁護士はこの対等世界を受け止めることが出来ない。 対話は堂々巡りのまま終幕へ向かう。 遂に、片桐機長は墜落5秒前の心の内を平野弁護士に語って幕となる。 操縦ミスの原因は機長と副操縦士や航空機関士の上下関係からくる競争意識のように聞こえてしまった。 5秒前の片桐機長の精神状態はたまたま正常だったということかしら? ・・。 場面切替では二人一緒に舞台奥へ行き水を飲んだり目薬をつけたり次場面の衣装に着替えたりするの。 面白い切替方法だわ。 帰りの目白駅行バスに揺られながら考えたけど、5秒前の彼の精神状況が異常だったらこの芝居は成り立たないはずよ。 *パラドックス定数第41項 *劇団サイト、 https://pdx-c.com/past_play/5seconds2018/

■反応工程

■作:宮本研,演出:米山実,劇団:文化座 ■東京芸術劇場・シアターウエスト,2018.8.17-19 ■舞台をみて反応工程が何であるかが分かりました。 それは旧三井化学系企業の製造部署の名です。 平和の時代には染料を戦時下では燃料(?)を造る工程らしい。 1945年8月の当部署の日常が描かれていく。 製造オフィスの雰囲気が上手く出ていますね。 科白が熟されているからです。 特殊な状況を除いて就業風景の一つの完成形がみえる。 出退勤や朝礼、新入社員受け入れ、引き継ぎ、事務所での宴会などを取り込み、九州弁(?)の心地よいリズムで当時の職場が現前してくる。 このまま終幕まで続いても面白い芝居になったでしょう。 でも後半はこのリズムが崩れていきます。 事件を入れないと話にならない。 当部門に配属されている動員学徒と監督教官との対立が表面化していくからです。 教官は物腰が柔らかく権威ぶっていないので何を考えているのか掴めない。 学徒員田宮が教官清原に向かって最後に吐く台詞は「あなたは権力の犬だ!」。 教育者が軍部に協力していく悲劇を描いた芝居にみえます。 でも清原がはっきりしないので田宮が一方的になり真の対決が描けなかった。 この時代、戦争について少しでも深く考えた人は「消極的協力」か「消極的非協力」に傾いていくのではないでしょうか? 前者は教官清原、後者はマルクス系の本を広める勤労課員太宰です。 学徒たちはもちろん「積極的非協力」です。 戦後世界に馴染むのも消極人間には容易です。 清原は学校でデモクラシーを教え太宰は会社で組合長になっていく。 でも学徒たちは傷を背負い戦後を生きるしかない。 教官清原から「 旗を高く掲げよ 」のハロルド・ミュラー夫妻を連想してしまった。 友人のユダヤ人が戦後にハロルドを強く非難したが、同じように田宮が清原を「10年、いや20年経っても許せない」と言っている。 作者の「本当は言いたくなかった」台詞ではないでしょうか。 ところで宮本研の作品は調べたら二本観ていました。 「ザ・パイロット」(青年座)と「美しきものの伝説」(文学座)です。 追記ですが貼り紙やアジ看板が目立ったが舞台上の文章を読むと芝居の面白さが逃げてしまう。 ここは役者の身体と声で表現したいですね。 *劇場サイト、 http://www.geigeki.jp/perf

■メタルマクベス ーdisc1-

■原作:W・シェイクスピア,作:宮藤官九郎,演出:いのうえひでのり,音楽:岡崎司,出演:橋本さとし,濱田めぐみ他,劇団☆新感線 ■IHIステージアラウンド東京,2018.7.23-8.31 ■円形劇場ステージアラウンドへ行ってきました。 席に着いてもそわそわしてしまった。 う?動いた・・。 なんと客席が回り出す時は加速度を感じさせない。 慣性運動と舞台の中心が一致していないことからくる目眩のようなものを体感できるのが面白い。 回り終わるのと同時に舞台の中心がどこだか分かる。 360度をうたっているが使っているのは120度くらいかな? 横幕のようなスクリーンの開け閉めで舞台が見え隠れするようになっている。 劇場のメリットを引き出した場面はライダーが荒野を走り回るところだろう。 この作品は「マッドマックス」を背景に「マクベス」を演じるヘビメタ調ミュージカル・プレイだからバイクは必須である。 座席が回転してスクリーンに2218年の廃墟と化した東京を映しだしながらバイクが走り出すと時空を越えて未来の豊洲にいるようだ。 それにしても貧弱なバイクが混ざっていた。 本格的な台数で円形舞台をガンガン飛ばしてもらいたい。 この芝居の楽しさはもう一つのストーリーであるヘヴィ・メタルバンドの存在だろう。 しかも魔女に引っ掛けている。 予言をディスクに記録したのも謎めいている。 しかし休息を含めて4時間は長すぎる。 派手な流れで物語を均一化しているので肝心要が見えない。 ナマヌルイ個所、例えば王を殺害する場面でダンカンを棺におさめ葬儀までおこなうのには呆れてしまった。 日本的情緒が強すぎる。 このような数個所を圧縮し上演を30分短くすれば締まって良くなる。 またマクベスが夫人に甘えるのも下手な笑いを誘うだけだ。 唯一静寂が訪れる場面で、ダンカンが「戦う理由はなんだ??」とマクベスに聞くが、彼は答えられない。 (家族の為だなんて最低だ!) 観終わった時、面白かったが何が面白かったのか? マクベスと同じように答えられない舞台だった。 キレイはキタナイ、オモシロイはツマラナイ。 *ゲキxシネ、 http://www.geki-cine.jp/m-macbeth/