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■トスカ

■作曲:G・プッチーニ,指揮:E・G=イェンセン,演出:A・M=ディアツ,出演:M・J・ジーリ,J・D・レオン,R・フロンターリ ■新国立劇場・オペラパレス,2015.11.17-29 ■楽日のためどこか余裕がある。 カヴァラドッシもスカルビアも声に伸びがあった。 スッキリとネットリの違いがあるのもいいわね。 トスカの一幕はモゴモゴしていたけど二幕から調子を上げてきた。 舞台は重厚さがある。 一幕の「テ・デウム」はこの重さで古典的感動が持てたわ。 でもトスカが身を投げる場面は大きな彫像が邪魔だった。  作品の持っているドキドキ感が逃げてしまう。 舞台美術の抽象化が進んだのは2013年からなの? 今回も古い道具を使ったのね。 でも今日は観易い席で集中できたから全てに余裕よ。 楽しかったわ。 カーテンコールでスタッフが写真を持って登場したけどその時は分からなかったの。 帰って調べたら演出家アントネッロ・マダウ=ディアツが8月に亡くなったのね。 *NNTTオペラ2015シーズン作品 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/150109_006147.html

■ミステリヤ・ブッフ

■作:ウラジミール・マヤコフスキ,演出:三浦基,劇団:地点,音楽:現代空間 ■にしすがも創造舎,2015.11.20-28 ■名前だけは知っている。 これがマヤコフスキ。 いつもロシア・アヴァンギャルドで括られてしまうからよ。 円形客席と舞台で中央に丸い二段の台が置いてあり中心から煙がでている。 天井には10個のミラーボールが回っているの。 ドラムとギター二人の生演奏ね。 役者は道化のような衣装を纏って詩のような台詞を口ずさみながらダンスをしたりピストルを振り回したり観客をアジったりして騒々しい舞台を作りだすの。 科白は断片的で繋げることができない。 音楽も科白を助勢している。 役者の身体と言葉、照明、音楽が混然となり舞台は祝祭空間に満たされていくようだわ。 1918年十月革命直後のメイエルホリド+マレーヴィッチ公演も観てみたい! でも考え込んで動かなくなるような役者の姿をみると地点が持っている冷徹さも表れている。 独特なリズムを持っているの。 チラシに「笑って・・」とあるけど過熱した舞台から醒めたカタルシスが得られたという感じね。 *2015年F/T「融解する境界」参加作品 *主催者サイト、 http://www.festival-tokyo.jp/15/program/chiten/

■颱風奇譚

■作:ソン・ギウン,演出:多田淳之介,出演:チョン・ドンファン,小田豊,パク・サンジョン,永井秀樹,マ・ドゥヨン,チョン・スジ,夏目慎也 ■東京芸術劇場・シアターイースト,2015.11.26-29 ■ソン・ギウン作は何回か観ていますが科白はいつもハッキリと聞こえる。 この聞こえ方はハングル語と日本語の関係より大陸と島国の違いにみえます。 1920年代アジアが舞台ですが「テンペスト」を基にしている。 アントーニオが朝鮮王で日本軍人や日本人の妻が彼を取り囲んでいるということです。 「 カルメギ 」の「かもめ」より嵌まっていますね。 物語の骨格だけを利用しているが違和感がありません。 話は日本の統治問題に進みます。 付き添いの日本海軍軍人が「すべてはアジアの為」からアントーニオを殺そうとする。 前朝鮮王プロスペロとアントーニオの争いも絡めて当時の東アジアを描けるのが日韓共同作品の面白いところです。 「 God Bless Baseball 」もそうですがテーマ「融解する境界」で国家間を議論するのは頼もしい。 *2015年F/T「融解する境界」参加作品 *主催者、 http://www.festival-tokyo.jp/15/program/typhoon/

■バトルフィールド-マハーバーラタより-

■演出:P・ブルック,M=E・エティエンヌ ■新国立劇場・中劇場,2015.11.25-29 ■何もない舞台は暖かい色彩とジャンベの音楽で満たされている。 床は絨毯ではなく一面に黄色の敷物かしら? 衣装は白黒を基本にして赤や黄などの原色で修飾さているの。 核戦争後の世界を描くSF物語に似ている。 戦いが終わり前王を引き継いだ新王が誕生するの。 人々は新王を導くのに蛇や蚯蚓などが登場する物語を繋ぎながら舞台は進む。 易しい言葉が詩的で崇高さを持ってくる。 でも別のことを考えていると分からなくなる舞台だった。 「マハーバーラタ」のような叙事詩は緊張感を持って見ないと入っていけない。 その緊張の先に安らぎが見えるはずだけど今回は見えない。 上演時間が70分のため凝縮され抽象化され過ぎていたのかもね。 *作品サイト、 http://www.parco-play.com/web/play/battlefield/

■スポケーンの左手

■作:M・マクドナ,演出:小川絵梨子,出演:蒼井優,岡本健一,成河,中嶋しゅう ■シアタートラム,2015.11.14-29 ■身体の一部が題名に入ると謎めいてきますね。 しかし片腕の男カーマイケルは序幕に全てを喋ってしまいます。 謎は消えてしまった。 でも30年近く自分の左手を探す理由は定かではない。 よくても白骨化状態でしょう。 母と電話で話す場面も彼の日常を説明するだけで一息つける寄り道にしかみえません。 彼がベッドに座り項垂れて幕が下りるのですが結局は心情を掴み切れなかった。 煙草を取りだす格好いい仕草が左手を意識させます。 客席を挟んだホテルの一室の舞台は計算尽されているように見えます。 そこでの登場人物4人の会話や行動は活き活きしていますね。 ドタバタブラック喜劇としてみれば面白い。 カーマイケルがフロント係マーヴィンに「お前は死を恐れていない」という科白が印象に残ります。 動きの激しい3人に対して無関心を装うマーヴィンの存在感が目立っていました。 *劇場記録、 https://setagaya-pt.jp/performances/20150728-3426.html

■地上に広がる大空-ウェンディ・シンドローム-

■作・演出:アンジェリカ・リデル ■東京芸術劇場・プレイハウス,2015.11.21-23 ■のっけから自慰場面が出てくる。 これなら後は何が出てきても動じることは無い。 とは言いながら日本語字幕の非表示個所や「怒涛のモノローグ」より「怒涛の演説」が似合う過激な場面が続く。 しかも繋ぎにアニマルズ・バージョン「朝日のあたる家」がガンガン鳴り響く。 途中ワルツを数曲踊る場面があった。 最初の曲は「南京路・・」だったか?  曲も演奏も素晴らしい。 上海人カップルの踊りもよかった。 前後の激しさからスローな世界が開ける鮮やかな転換である。 若さの喪失が作品のテーマらしい。 「ピーターパン」のウェンディと詩人ワーズワース迄は追えたが途中この若さを見失ってしまった。 若さは自由の特殊解かもしれない。 「もっとも憎むべき人は、私を生んだ母」。 共同体から逸脱しその根源さえも破壊する言葉である。 自由の獲得を模索し生まれ変わったウェンディの演説を聞きに行ってきたようだ。 *2015年F/T「融解する境界」参加作品 *F/Tサイト、 https://www.festival-tokyo.jp/15/program/wendys-syndrome/

■God Bless Baseball

■作・演出:岡田利規,出演:イ・ユンジェ,捩子ぴじん,ウィ・ソンヒ,野津あおい ■あうるすぽっと,2015.11.19-29 ■日韓米の役者が野球の話をする舞台です。 但し米国は声だけの登場。 話題は台湾まで広がる。 野球のルールや歴史、球団や選手など具体的で興味が持てます。 韓国と日本の違いをさらりとした対話で競い合っていく。 そこに米国が相槌を打つ。 演出家の「日韓問題を消極的に扱う・・」は見事です。 でも水をまき散らし背景美術を壊す終幕は核の傘を離れ新しい方向に進もうとしているのか?よくわからない。 しかも本当の水を撒くという動作は演技が出来ないため日常に戻ってしまう。 絶好調だった舞台を湿らせてしまった。 韓国役者は手足をフニャフニャさせながら台詞を喋る練習がもう少し必要ですね。 硬さがみえました。 それよりもイチロー選手である捩子ぴじんの動きと科白が効いていました。 チェルフィッチュのリズムとは違います。 お互い共鳴できていたとは言えないが、狙い通りの舞台になって演出家はほくそ笑んでいるはずです。 *2015年F/T「融解する境界」」参加作品 *劇場、 https://www.owlspot.jp/old/performance/151119.html

■オテロ

■作:W・シェイクスピア,作曲:G・ヴェルディ,指揮:Y・ネゼ=セガン,演出:B・シャ,出演:A・アントネンコ,S・ヨンチェーヴァ,Z・ルチッチ,D・ピタス ■東劇,2015.11.14-20(MET2015.10.17収録) ■疑念と嫉妬が渦巻く舞台はみていられない。 それでも二人の死へと続く茨の道を見届けたい。 オテロもデズデーモナも無難な歌唱だけど心理描写が表面的にみえる。 演出は過剰だけど声を含め肉体が精神にまで食い込んでいかないの。 二人は飛躍が必要ね。 悪の化身イアーゴの凄さが飛びぬけていた。 インタビュでもアントネンコはルチッチに従っているだけなの。 イアーゴの調子が良過ぎるのもイアーねぇ。 演出家は監獄だと言っていたけど曇りガラスの壁や建物が町並みのように見える舞台よ。 物語を邪魔しないシンプルな立方体でとてもよかった。 休息中に12台のカメラで撮っている話があったけど、これでは舞台が切れ切れになってしまう。 もっと少ないほうが観易くなるわ。 今回は新演出だったけど旧よりも感情表現が派手になっている*1。 *1、 「オテロ」(MET,2012年) *METライブビューイング2015作品 *主催者サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2015-16/#program_02

■桜の園

■作:A・チェーホフ,演出:鵜山仁,出演:田中裕子,柄本佑,木村了,宮本裕子,平岩紙 ■新国立劇場・小劇場,2015.11.11-29 ■神西清訳本が手元にあったので読んでから劇場に向かいました。 本との違いは大学生トロフィーモフが結構しっかりしていたこと、家庭教師シャルロッタの道化面が強く出ていたこと、そして商人ロパーヒンの性格が思っていた以上に極端だったことの三点です。 でも戯曲より舞台の方が何倍も面白かった。 ラネーフスカヤと兄ガーエフは退廃しつつあるロシア貴族の雰囲気がもっと欲しいところです。 二人を見る周囲の人々と調和が取れていなかったからです。 終幕、ロパーヒンとヴーリァが結ばれなかったことに胸が締め付けられる。 変化していくロシア時代のうねりと混ざり合って何とも言えない感情が湧き起りました。 チェーホフを題材にした舞台は結構観ているのですが原作に忠実な作品を観るのもたまにはいいですね。 *NNTTドラマ2015シーズン作品 *劇場、 http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/150109_006139.html

■ゾンビオペラ「死の舞踏」

■作曲:安野太郎,ドラマトゥルク:渡邊未帆,美術:危口統之 ■にしすがも創造舎,2015.11.12-15 ■ゾンビ音楽とはヒトではなくて機械が楽器を使い演奏することらしい。 つまり「ヒト+楽器→演奏」が「機械+楽器→演奏」に変わる。 今回の木管や金管楽器はヒトの呼吸圧量や唇振動で発音するので機械演奏は見たことがない。 しかし登場する楽器は息や唇よりも肺や指を意識している楽音である。 演奏すると言うより音を出すレベルに留まっている。 関係者は苦労しているようだが、異なる音楽や技術を議論する以前の趣味の話で終わってしまっている感じだ。 コンプレッサの替わりに役者の体重で鞴を膨らませ楽器に空気を送りながら叫んだり、スピーカから聞こえる機械音も規則性はあるがオペラからは程遠い。 「西暦4001年宇宙人が飛来しゾンビ音楽は地球史の物語として解釈され、人類本来の歴史はなかったことになる」と語るのは面白い。 しかし音楽のように<ある規則性>を記述する無生物は他の高等生物が作ったと考える宇宙人も多いだろう。 画面には英語訳が必要。 *F/Tフェスティバル・トーキョー2015「融解する境界」参加作品 *F/Tサイト、 http://www.festival-tokyo.jp/15/program/zombie-opera/

■夏の夜の夢

■作:W・シェイクスピア,演出:J・テイモア,出演:K・ハンタ,D・ヘアウッド,T・ベンコ ■TOHOシネマズ日本橋,2015.11.13-19 ■素晴らしい舞台だった。 科白がキリッと引き締まっている。 言葉量は多いけど質の良さを保っている。 三組のカップルが三相交流のように絡んでいく流れはお見事。 物語の足跡がハッキリと残っていくから、先へ進むほど面白さが積み重なっていくようだわ。 終幕の劇中劇は芝居の楽しさが溢れていた。 そしてパック役キャサリン・ハンターの柔軟な動きと錆のある声は独特な存在感が有り無視できない。 残念なのはカメラ撮影に力が入り過ぎていたことね。 ショットが短過ぎる、アップが多過ぎる。 チラシでは撮影を讃えていたけど舞台を捨て映画を取ったようにみえる。 この作品は質のバラツキが激しく出るの。 でも今回は記憶に残る一品になれそう。 2014年作品。 * 劇場サイト、 http://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/16_midsummer.html

■道玄坂綺譚-三島由紀夫「卒塔婆小町」「熊野」より-

■原作:三島由紀夫,作・演出:マキノノゾミ,出演:平岡祐太,倉科カナ,眞島秀和,水田航生,一路真輝 ■世田谷パブリックシアタ,2015.11.8-21 ■一幕「卒塔婆小町」、二幕「熊野」を下敷きにしているが話は混ざり合っていきます。 男女の騙し騙される面白さが感じられる。 女は男に好きと言わせたい。 男は女が好きなのに言わない、言えない。 虚実が入り混じり時空が飛ぶので混乱してしまった。 サービス精神が旺盛のため感動に辿りつく前の驚きで止まってしまった舞台です。 能舞台のように目障りなモノが無く言葉に集中できました。 カフェ従業員の若者言葉での漫才風科白も力が抜けるようで舞台に浮遊感があった。 ユヤの水色ドレスや宗盛のスーツなど、衣装が三島由紀夫好みで厚みが出ていました。 *現代能楽集Ⅷ *2015年F/T「融解する境界」連携作品 *劇場サイト、 http://setagaya-pt.jp/performances/20151108-6564-6.html

■ロミオとジュリエット

■原作:W・シェイクスピア,音楽:S・プロコフィエフ,振付:K・マクミラン,出演:S・ラム,S・マックレー ■東宝シネマズ日本橋,2015.11.7-13(ROH,2015.9.22収録) ■音楽の持っている独特な雰囲気が物語に影響している。 上演時間は休息含めて200分。 肝心な場面はシッカリ、他はサラリという流れかしら。 庭で出会う場面と一夜を共にしたパ・ド・ドゥは最高。 華奢なサラ・ラムはシェイクスピアに似合うわね。 ロミオと親友のベンヴォーリオ、マキューシオの3人を比較すると流石ロミオのスティーヴン・マックレーが一番目立つ。 彼の身体は骨までちゃんと伸びているの。 マキューシオ、ティボルトが争って死ぬ場面は芝居をみているようだわ。 ロミオの衣装の一部が寒色系だったのは救いだけど、全ダンサーの衣装が同じ暖色系のためコール・ドのメリハリが効いていない。 この暖色はROHの色だけどもう少し自由にしたらどうかしら? 今年はマクミラン振付50周年記念らしい。 ストーリを知らないで観ても物語に感動できるはず。 マクミランがプロコフィエフを巧く活き造りにしたからだとおもう。 *英国ロイヤル・オペラ・ハウス2015シネマシーズン作品 *作品、 http://roh2015jp.wix.com/cinemaseason

■氷の花火、山口小夜子

■感想は、 http://ngswty.blogspot.jp/2015/11/blog-post_0.html

■Ne ANTA ネアンタ

■演出:藤田康城,出演:安藤朋子,山崎広太 ■シアタートラム,2015.11.5-8 ■男がベッドに座っている。 女の男への妬みのある声が聞こえてくる。 声が止み電灯が点滅し窓の外が明るくなる。 男はベッドを離れカーテンを開閉めした途端、上手ドアが開く。 冷蔵庫に女が近づく。 男は女に気付かずドアを閉めてベッドに戻る。 これを何回か繰り返す。 少しずつ背後の白壁が観客に迫ってくる・・。 男の静かな動きはとてもいい。 目つきもなかなかである。 激しく踊る場面もあったが意味に凝り固まっている動きである。 多分女の声を振り払いたいからだろう。 女が冷蔵庫に近づくところもなかなかいい。 まるで「貞子」のようだ。 しかしドアからの登場は現実に引き戻されてしまった。 動きや視線が観客に媚びているからである。 演劇なのかダンスなのか? 男はダンス身体で演劇に近づこうともがいている。 女は演劇にもダンスにも近づけない。 女は演劇身体でダンスに近づきもがくはずだったのでは? しかし辿りつけなかった。 いや最初から声だけなのだ。 * 「ネエアンタ」(2013年) *チラシ、 http://stage.corich.jp/img_stage/l/stage54852_1.jpg?1446762454

■ホフマン物語

■音楽:J・オフェンバック,振付:P・ダレル,指揮:P・マーフィ,出演:井澤駿,長田佳世,小野絢子,米沢唯,M・トレウバエフ ■新国立劇場・オペラパレス,2015.10.30-11.3 ■この作品をバレーで観るのは初めてなの。 でも一幕オリンピアは日常の延長のようで物語に入っていけない。 人形は異次元の扉を開けることができるのにそれをしなかった。 舞台も現実的な庭でダメ。 演出の違いと言えばそれまでだけど・・。 二幕アントニアから俄然調子がでてきたわ。 やっとバレエを観ることができた感じね。 二幕と三幕ジュリエッタは美術も物語に沿っていて素晴らしかった。 でも十字架をあんなに振り回すとは! 日本だからできるのかしら。 そして物語をもう一度思い返せる感慨深い終幕だった。 アントニアとジュリエッタのリフティングは見応えがあったわ。 反省を次回に繋げればどんどん良くなる作品だとおもう。 何度観てもいいかもよ。 *NNTTバレエ2015シーズン作品 *劇場サイト、 http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/15hoffmann/

■BELLE

■振付:D・コルカー,出演:デボラ・コルカー・カンパニー ■神奈川芸術劇場・ホール,2015.10.31-11.1 ■幕が開いて20分間は初めて見る振付に魅了されてしまった。 舞台はE・ホッパーの作品にでてくるようなソファや電気スタンドを背景にバレー技法を取り入れたダンスが舞う。 衣装などにバルテュスの絵に登場する人物が感じられる。 仮面を付けて梯子に上りアクロバットをするなど男性ダンサーは力強い。 途中「 クレイジーホース 」に似た場面があり楽しい。 なんと「昼顔」に触発された作品らしい。 しかしセヴリーヌに辿りつけない。 音楽の強いリズムも表面をなぞるだけである。 むしろ彼女の二面性に焦点をあてその差異を楽しんだ方がよい。 「昼顔」から離れて観たほうが自由の身になれる。 ところでL・ブニュエルは気になる映画監督の一人である。 「昼顔」はとても気に入っている。 *劇場サイト、 http://www.kaat.jp/d/colker

■イル・トロヴァトーレ

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:M・アルミリアート,演出:デイヴィッド・マクヴィカー,出演:A・ネトレプコ,D・ホヴォロストフスキ,Y・リー,D・ザジック,S・コツァン ■東劇,2015.10.31-11.6(MET,2015.10.3収録) ■やはりシーズン初めは皆元気ね。 ネトレプコも機嫌がいいみたい。 楽屋に子供を連れて来ていたし・・。 前回と比較して物語も昇華できていた*1。 幕開きのフェルランドとレオノーラのソロで分かったわ。 歌手の連携の良さもある。 特にアズチェーナが上手く歌い回っていた。 でも弟を殺してしまったことを兄に教えることで復讐したことになるのは時代の違いかしら? マンリーコのヨンフン・リーは初めてよ。 ネトレプコやホヴォロストフスキの「商品としての声」には届いていないけど磨いていけばいいのよ。 序でだけどネトレプコは体形からいって固くて寒系色の服が似合う。 ところで休息時間に他の作品紹介が沢山あると本舞台がシラケてしまう。 もっと厳選してほしいところだわ。 *1、 「イル・トロヴァトーレ」(MET,2013年) *METライブビューイング2015作品 *作品サイト、 http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2015-16/#program_01