■歌舞伎座八月「真景累ヶ淵」「仇ゆめ」「源平布引滝」「伊達競曲輪鞘當」「三社祭」

*歌舞伎座八月公演(第二部・第三部)の下記□5作品をWEB経由で観る。
■MIRAIL・配信,2021.9.2-22(歌舞伎座, 2021.8収録)
□真景累ヶ淵,豊志賀の死 しんけいかさねがふち,とよしがのし
■口演:三遊亭円朝,出演:中村七之助,中村児太郎,中村鶴松ほか
■先ずは第二部「真景累ヶ淵」から・・。 怪談噺だが時々笑ってしまう。 驚しさは無い。 新吉の献身的介護や豊志賀の独占愛が幽霊という異次元にかき消されてしまった。 七軒町隣人の話しぶりは落語そのままである。 多くの場面が落語から逃げきれていないようだ。 このため中途半端にみえる。 落語で聴く方が想像力が働くかもしれない。
□仇ゆめ あだゆめ
■作・演出:北條秀司,出演:中村勘九郎,中村七之助,中村虎之介ほか
■これは楽しい。 狸風ムーンウォーカーもできている。 舞師匠や店旦那に狸が教えるおばた踊り?も笑える。 前作の豊志賀役中村七之助は熟れていなかったが(これは演出?)、この深雪大夫役では動きや表情が活き活きしていた。 後半はしみじみ調になる。 まさに御伽噺舞踊劇だ。
□源平布引滝,義賢最期 げんぺいぬのびきのたき,よしかたさいご
■作:並木千柳,三好松洛,出演:松本幸四郎,中村梅枝,中村隼人ほか
■物語りが展開していくリズムはとても気持良く感じる。 待宵姫の小万への嫉妬、義賢の葵御前や待宵姫との別れなど細かい感情表現もこのリズムに乗っている。 よく練られている。 後半は義賢最後の場面が続き心地よいリズムが消えてしまったのが惜しい。 「戸板倒し」や「蝙蝠の見得」「仏倒し」は嬉しいが、これを入れる為に単調になったのは否めない。 「実盛物語」を続けて観ればこのチャンバラ場面が生き返ってくるのだろう。 今回は二段目のみの上演。     
□伊達競曲輪鞘當 だてくらべくるわのさやあて
■作:四世鶴屋南北,出演:中村歌昇,中村隼人,坂東新悟
■三味線が聴こえる幕開けからウキウキしてしまう。 伴左衛門と山三による「渡りぜりふ」を聴いて再びリズムに乗ってしまった。 作品の選択・順序が巧い。 これは第二部でも言えた。  
□三社祭 さんじゃまつり
■作:二代目瀬川如皐,出演:市川染五郎,市川團子
■この軽快でシンプルな振付は江戸時代の体操舞踊といってよい。 ここまで来ると八月の目玉である第一部もみたくなってしまった。
*八月花形歌舞伎公演第二部・第三部