■海、静かな海 STILLES MEER

■原作・演出:平田オリザ,作曲:細川俊夫,指揮:ケント・ナガノ,出演:スザンネ・エルマーク,藤村美穂子,ベジュン・メータ他,演奏:ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
■NHK.WEB,2021.3-(ハンブルク歌劇場,2016.1.24-27収録)
■平田オリザの名前があったので観る。 ・・バレリーナだった主人公クラウディアは東日本大震災の津波で夫と息子を失ってしまった。 息子が亡くなったことを今でも受け入れることができないでいる。 彼女には義理の姉ハルコがいる。 夫は日本人だったようね。 そこへ元ダンスパートナーのシュティファンが訪ねる・・。
歌詞は詩的で静かだが力強い。 歌唱もそれに沿って進む。 ドイツ語の中に仏教用語が多く登場する。 例えば灯篭、彼岸、念仏、極楽浄土、そして南無阿弥陀仏・・。 お辞儀をする場面も多い。 日本式の立礼なの。 この動作が舞台を清めて魂を鎮める象徴にもみえる。
後半、放射線防護服に身を包んだ村人たちが墓参りに向かおうとしている。 津波で亡くなった人々の死体の状況が詳しく語られる。 子供は生きている!? クラウディアは発狂しつつも、目の前には不気味で静寂な海が重く横たわっているだけ。 彼女は息子が亡くなったことを受け入れることができたのか? ・・。
あらためて東日本大震災を振り返ってしまった。 舞台には鎮魂の強さが感じられた。