■あつい胸さわぎ

■作・演出:横山拓也,出演:辻凪子,枝元萌,田中享,橋爪未萌里,爪生和成
■こまばアゴラ劇場,2019.9.13-23
■シングルマザーとその娘、二人の失恋を描いた話です。 日常の出来事や心の動きを大阪弁がコミカルにしていきます。 声を出して笑うほどではありませんが、役者が喋っている間は観客は心から笑顔になっているのが分かる。 次の科白が待ち遠しい。 じゃりン子チエを一瞬思い出しました。 母は東京を知らないらしい。 でも風景の味付けはサッパリしています。 夏の暑さも母の職場も東京の下町と同じですね。  「もう夏や・・」。 天井に張めぐされている赤い糸が意味深です。
母は東京から来た会社上司が気に入ります。 大学に進学した娘は子供時代からの友達が好きだったことに気が付く。 そして母娘が相手から片思いだった言葉を聞かされるクライマックスがやってきます。 二人にとっては厳しい言葉です。
母の同僚が登場します。 上司はその同僚を見つめる場面が二度ほどある。 表情や仕草から上司はこの同僚が好きなんだと思いました。 これで後半のストーリーが想像できましたね。 ・・しかし違った。
娘の友達は心が読めません。 彼は娘の前で(母の同僚との)失恋を話してしまう。 この舞台は母娘の心の襞まで表現できています。 上司と娘友達は、母と娘の些細な心の揺れを感じ取れなかったのでしょうか?  彼らは好かれていることが分かっていたはずです。 母娘は言葉で巧く描かれているのに上司と娘友達は言葉で省いてしまった。 
作品の要である科白の鋭さに頼り切ってしまい、科白の無い時の表情や心の動きを疎かにしてしまったようにみえます。 客席からすすり泣きが多く聞こえましたが、心に刺さる素晴らしい舞台には違いありません。
*演劇ユニットiaku公演
*劇場サイト、http://www.komaba-agora.com/play/8496