■桜の園

■作:アントン・チェーホフ,演出:ダニエル・ジャンヌトー,ドラマツルギー:ママール・ベンラヌー,出演:鈴木陽代,布施安寿香,ソレーヌ・アルベル他,劇団:SPAC
■静岡芸術劇場,2021.11.13-12.12
■役者のマスク姿を見たとたん2月の「ハムレット」を思い出してしまった。 顔半分の表情は諦めるしかない。 それにしても変わった舞台です。 暗みがかった何もない舞台、背景に雲を映し出し、遠方に雷光も、ときどき鳥が飛んでいくのがみえる・・。 この暗さはマスクを意識させない? そして役者の動きと喋り方に間(マ)を効かせ独特な存在感を作り出している。 どこか近未来的ですね。 私の好みです。
しかも舞台の下に字幕があり目の動きが楽に感じる。 横壁は字幕を見るときに舞台から目が離れてしまう。 中央下を標準にして欲しい。 でも舞台を一段高くして距離を取ったので可能になったのでしょう。 コロナ予防にもなり一石二鳥ですね。
今回も神西清訳を読んでから静岡に向かいました。 このため台詞は既知として耳に入る。 しかしロパーピンとワーリャの破談は胸に迫ってこなかった。 当時の階級を意識した舞台だったからでしょう。 帰りの新幹線内で安達紀子の解説を読んで分かりました。 ロパーピンとラネーフスカヤにあった階級の深い溝がそのままワーリャに続いていたということですね。
3年前に演出家の「ガラスの動物園」を観ていますが今回のほうが完成度が高い。 それにしてもチェーホフは本より舞台が何故こんなにも面白いのか? マスクがなければ言うことなしでした。