■能楽堂十一月「附子」「大江山」

*国立能楽堂十一月度普及公演の下記□2作品を観る。
□狂言・大蔵流・附子(ぶす)■出演:茂山忠三郎,茂山逸平,茂山茂
□能・観世流・大江山■出演:上田公威,森常好,舘田善博ほか
■国立能楽堂,2022.11.12
■「附子」とは毒草トリカブトのことらしい。 主人が附子と言って隠していたのは実は美味しい蜜菓子だった。 それを召使はこっそり食べてしまう。 主人への頓知の効いた言い訳がオチになっている。
「大江山」のプレトーク「二つのおおえ山と酒呑童子の首」(小松和彦解説)を聞く。 「・・話は丹後丹波の国境のようだが、丹波山城にある老い坂峠(おいのさか)が大江の坂にそして大江山になったとも言われている。 ・・童子の首は宇治に葬られたのか?京までのぼったのか? 諸説ある。 これは王権が揺らいでいたのを元に戻すための作品に違いない・・」等々を語る。
登場人物が多い舞台である。 そのため橋掛りの隅々まで巧く使い人物を動かしていた。 終幕、酒呑童子が源頼光に食らいつき、頼光が刀で切り返す打合働も詞章の一字一句ちがわずに進んでいく。 その前に、童子が寝所(一畳台)から姿をなかなか見せないことに期待が昂った。 ここで面は大童子から獅子口に変わる。 しかし童子の素直な性格は変わらない。 遡り、間狂言の強力と女の結婚話には客席から笑い声も聞こえていた。
力強いストーリーに淀みがなく観ていて気持ちが良い。 能というより歌舞伎に近い舞台だった。