■ボリス・ゴドゥノフ

■原作:A・プーシキン,作曲:M・ムソルグスキー,指揮:大野和士, 演出:マリウシュ・トレリンスキ,出演:ギド・イェンティンス,小泉詠子,九嶋香奈枝ほか,演奏:東京都交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2022.11.15-26
■ゴドゥノフの息子の小部屋はA・タルコフスキーの宇宙船内、そして舞台背景に映し出される歌手の白黒映像は悩める研究者達にみえる。 「惑星ソラリス」は原作がポーランドで監督がロシア、でも今日はその逆ね。
それにしても複雑な内容が詰まった楽曲に聴こえる。 それは東ヨーロッパから中国までの風景が波のように押し寄せてくる。 面白い。 しかも歌唱を引き連れた演奏は演劇を強く意識するの。 演劇的オペラと言って良い。
ロシア史に疎いため?ゴドゥノフの深層心理が読めない。 ピーメンやドミトリーの権力志向やシュイスキーの心底も同じ。 人間関係の深みに到達できない。 歌唱で関係を作れなかった。 その関係抜きでも演劇力は強い。 この落差が新鮮に感じるわね。 3幕休憩で席を去った人が多くいたがこの矛盾に耐えられなかったのかも。 この作品は<場面の勝利>といえる。 物語の流れは弱かったが一つ一つの文節に力があったからよ。
*NNTTオペラ2022シーズン作品