■ペール・ギュント

■作:ヘンリック・イプセン,翻訳:毛利三彌,音楽:棚川寛子,演出:宮城聰,出演:武石守正,池田真紀子,石井萠水ほか,劇団:SPAC
■静岡芸術劇場,2022.10.8-11.6
■この舞台は「2010年ベスト10」に推薦したことを覚えている、でも中身は殆ど忘れてしまった・・。  しかもこの作品は上演が少ない。 この12年間では日韓文化交流企画のヤン・ジョンウン演出を観ただけ。 場面展開が多く道具や衣装がいろいろと必要な為かな? 揃わなくても可能だが演出は大変になりそう。 もちろん今回の公演は早くからスケジュールに組み込んでいたわよ。
演出ノートには「自分探しの旅ができるのは男性だけ・・」、翻訳家は「女をほったらかして世界中を飛び回り、したい放題のあげく、死に際になって慰めを求めて女のところに舞い戻ってくる・・」と、男性ペールに手厳しい。
この作品は母息子の関係が強い。 母の子宮から出て再びソルヴェイの子宮に戻る話にもみえる。 これが母娘の関係になると娘の子宮をどう位置づけるかで違ってくる。 また別の輪廻転生物語ができそう。
今日の舞台は旅を双六遊びにして子供たちがペールを動かしていく。 劇中劇ね。 子供をみると時代は日本の太平洋戦争中にみえる。 ゼロ戦で遊んだり、防空頭巾を被っての空襲場面もある。 でも作品との繋がりは弱い。 雑音に聞こえてしまった。 どうしても男性形に拘りたいのね。
そして旅物語で終わらない面白さは悪魔(釦職人)や魔王(閻魔大王)がペールに審判を下そうとする終幕があるからだと思う。 此岸と彼岸の境界まで旅が広がり死が迫ってくるから。 そこではキリスト教価値観を越え観客のカタルシスは倍増する。
衣装は中高生向きだが気にならない。 ソルヴェイが指揮者というのも面白い。 今回もとても良く出来ていて期待を裏切らなかったわよ。
*SPAC秋春のシーズン2022作品