■お國と五平

■作:谷崎潤一郎,演出:神田真直,出演:飯坂美鶴妃,柊木樹,杉田一起,劇団なかゆび
■こまばアゴラ劇場,2022.11.17-20
■能面を付けたお國、鎖に繋がれてお伴する犬の姿の五平・・。 いや、彼は五平ではない。 鎖から逃げてドラム缶に隠れたからです。 再び同じ姿で二人が静かに登場。 黒一色の暗い背景での幕開けは印象に残りました。
友之丞と五平の鎖姿が強烈ですね。 武家社会の掟から逃げられない、そして男女の愛着からも逃れられない。 この二つをなんとか収めようとする3人の藻掻く姿は観る者に迫ってきます。 
しかし友之丞とお國、互いの身体から漏れる心の微妙な揺れが弱い。 仮面を付けて動きの少ないお國を前に、ドラム缶の中で動けないが上肢の動作が大げさな友之丞、くわえて屈託のない喋り方。 このアンバランスがそうさせたのでしょうか。 
これを差し置いても衝撃力はありました。 狭すぎる舞台、能を取り入れた姿や動き、五平のバットの振りと缶の音などなど、身体へ食い込む外からの力は巧い。 ぎっしり詰まった緊張感ある一時間でした。
演出家と佐々木敦のアフタートークを聞く。 ・・「演劇人コンクール作品で原作のカットはしていない」「俳優は動かしてはいけないと言う原作者に従った」「鎖は文楽から、尻たたき(の音)は講談から、仮面は能から、梵鐘はドラム缶で、あらゆる古典芸能を利用した」「岸田國士以降の作者は苦手だ」「ゴドーを待ちながら、しあわせな日々は入っているのか? それは無い」「赤堀雅秋や三浦大輔の流れにみえるが? そうかも」などなど・・。 以上がトーク概要。
観客は約30人、マチネーの為か男性高齢者が8割だった。 みな芝居好きにみえます。 役者と観客の年齢差が大きい。 これは原作目当てか?受賞作目当てか?劇団目当てか? たぶん全部でしょう。
*演劇人コンクール2020年優秀演出家賞受賞作品
*「ブログ検索🔍」に入れる語句は、神田真直 ・・検索結果は2舞台.