■よく生きろ!

■演出:小田尚稔,出演:加賀田玲,こばやしかのん,小林駿ほか
■こまばアゴラ劇場,2022.12.9-18
■場内でスタッフが「体調がすぐれない人は申し出でて・・」のアナウンを2回も繰り返すので不安が過る。 客数は25人前後です。 しかも不調とは無関係な20歳代の観客が多い。 ・・?
はじめて観る演出家とその劇団です。 若者の貧困を描いている。 ホームレスになり池の魚や蛙を料理する男性、共同住宅で残飯を食べる人々、アルバイト先での些細なトラブル、そして売春をする女性、それを買う男。 幾つかの場面が粛々と描かれていく。
彼らは勝負もしていないのに敗戦者になってしまった? それを恨んでいる。 それは挑発的な態度・行動で示されます。 観客の目を見つめながら「たすけて!」と何度も叫ぶ。 「演劇界をぶっ壊したい!」。 同時に敗戦を受け入れようとしている。 「負けたっていいじゃないか!」「頑張るのをやめよう」。 この鬩ぎ合いに悩んでいるようです。
演出家の言う「エゴイズムと自己犠牲という矛盾した二つの生き方の緊張の中で 苦しみながら生きていく・・」に対応しているのでしょうか?
終幕、ホームレスの男性は蛙の毒にあたり、また売春の女を詰り過ぎて男は殺されてしまう。 途中、女性が池に突き落とされる事件が描かれるがこの結末がよく分からない。
小説を読んでいるような舞台でした。 モノローグが多く入るからです。 各シーケンスの繋がりが練られていないように感じました。 モノローグが原因かもしれない。 若者の貧困を激しく現前させてくれました。 激しすぎて「よく生きるには?」の手段として貧困を使ったようにもみえてしまった。 カーテンコールの拍手が疎らだったのは若者に救いが無かったからでしょう。