■エウリディーチェ Eurydice

■作曲:マシュー・オーコイン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:メアリー・ジマーマン,出演:エリン・モーリー,ジョシュア・ホプキンス,ヤクブ・ヨゼフ・オルリンスキ他
■新宿ピカデリー,2022.2.18-24(メトロポリタン歌劇場,2021.12.4収録)
■「オルフェオとエウリディーチェ」の妻にフォーカスをあてた作品らしい。 それは別の角度から<冥府下り>を見たらどうなるか?ということね。 これは必見! ということで早速映画館へ足を運んだの。 ・・結論を先に言うと、物語はイマイチだけど歌詞・歌唱・音楽・美術は文句なしにオモシロイ。
それは、物語にエウリディーチェの父を登場させたから。 ギリシャ神話の親子関係には鋭さがある。 でも舞台上の父娘は日常の延長を演じてしまった。 ここにオルフェオとの三角関係も入り夫婦の愛がボヤケてしまった。 台本担当S・ルールが自身の父娘関係を論じていたのでこのストーリーになったのね。 しかも終幕にオルフェオも冥界に降りてきたので混乱したわよ。
しかし、歌詞・歌唱は日常の語彙とリズムを持っているが散文詩のように耳に届くの。 これに寄り添いそして急がせる演奏も何とも気持ちがいい。 「演出に合わせて作曲した」とM・オーコインが話していたがこの方法が成功したのね。 そしてオルフェオはバリトンとカウンターテナの二人一役にして吟遊詩人を、ハデスは高音域テノールで冥界の王になりきっていたのが楽しい。
舞台美術はシンプルだが物語の核心を突いていた。 忘却の川であるレーテをシャワー室にしたのも巧い。 歌詞字幕を舞台上に修飾表現をして、冥界とこの世の遣取を手紙にしての言葉重視は音楽との愛想が良かった。 でもカーテンコールの拍手が弱かったのは物語の消化不良で観客の感情が高ぶらなかったから?・・
*MET2021シーズン作品