■無畏

■作・演出:古川健,演出:日澤雄介,出演:林竜三,渡邊りょう,浅井伸治ほか,劇団:チョコレートケーキ
■東京芸術劇場・シアターウエスト,2022.8.24-27
■主人公は陸軍大将松井石根。 彼は「日支提携・アジア保全を進めたが南京事件の責任を問われ極東軍事裁判で死刑・・」・・。 舞台は上海事件の1937年頃から死刑執行の1948年迄を回想形式で時代が語られる。 タイトルは彼の辞世の句から採ったらしい。 松井役林竜三が熱演でした。
彼の思想であるアジア主義が蒋介石に見放され、また部下にも反映されない苦悩が描かれる。 特に南京での部下の不法・略奪行為に彼は心を痛ませる。
脇道に逸れるが、私の伯父が昭南島で英軍捕虜になった時の話を思い出しました。 伯父は兵士から弁当を貰ったことがあり、その中にはビスケット等々と紙に包まれた煙草が2本入っていたことを興味深く話してくれた。 煙草の入った弁当が兵士に配られていたことに愛煙家の伯父は衝撃を受けたようです。 伯父は既に亡くなっています。
舞台でも兵站(へいたん、ロジスティクス)が話題になります。 日本軍兵士の食料は現地調達になっている。 これが最悪の結果を招く。 調達は軍では徴発だが、混乱してくると徴発は略奪へ強姦へそして殺人へと向かうからです。 「戦争の素人は戦略を語り、玄人は兵站を語る」。 日本軍はアジアで非道に振舞ってきたのがわかる。 なぜなら兵站、特に兵士の食料、を軽んじていたから。 南京事件も同列です。
兵站を論ずる芝居ではないのですが、主人公松井石根の思想が戦場の物欲に飲み込まれてしまった。 悔恨で振り返っても生々しい核心に辿り着くのは大変です。
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