■能楽堂十月「野宮」「謀生種」「飛雲」

*国立能楽堂十月度特別講演の下記□3作品を観る。
□能・金剛流・野宮■出演:今井清隆,宝生欣哉,野村万蔵ほか
□狂言・和泉流・謀生種(ぼうじょうのたね)■出演:野村萬,野村拳之助
□能・観世流・飛雲■出演:藤波重孝,原大,原陸ほか
■国立能楽堂,2022.10.29
■地謡やワキのテンポに徐々に近づいていったが、「野宮」の前シテの動きや謡が始まりはとても遅かった。 しかも衣装は派手、面は孫次郎だ。 微妙にチグハグな感じがする。 六条御息所の一つの表現として理解できるが気に入らない。 後場になると違和感が一掃される。 衣装と面がぴたりとハマった。 葵の上との車争いを激しく回想した後に突如として序ノ舞を舞う。 この動静の転換が劇的である。 野宮の風景=御息所の心情を語り再び静から動への破ノ舞に入る。 「火宅の門を出でぬらん・・」。 後場で御息所らしい姿に戻った。
「飛雲」はまるで劇画をみているようだ。 末社来序や舞働などあまり見かけない場面もある。 山伏と鬼神との戦いが楽しい。 面は前シテが笑尉、後シテが顰(しかみ)。 
「野宮」がチェンジアップ高めから入るスローボールなら「飛雲」は内角へ揺さぶる直球だろう(日本シリーズ第六戦を見ながら)。