■初春歌舞伎「南総里見八犬伝」

■作:曲亭馬琴,脚色:渥美清太郎,監修:尾上菊五郎,出演:尾上菊五郎,中村時蔵,尾上松緑ほか
■国立劇場・大劇場,2022.1.3-27
■舞台に流れるゆっくりとした時間に触れて正月に逆戻りした感じだ。 異類婚姻譚に陰陽と儒教を結びつけたこの作品を初芝居にしたのは総出演ともいえる多数の役者を動員したことにある。 騒がしさの中に正月特有の静けさが出ていた。 犬塚信乃役尾上菊之助もその空間に包まれていた。 七場の舞台美術も場所と風景が多彩で目が喜ぶ。 途中に劇場広告が入りドローンが登場したのは驚いたが・・。 伏姫・八房の場が映像説明で逃げたのは残念。  
この作品は少年文庫で中学時代に読んだ記憶があるが今でも伝奇の面白さは心に残っている。 チケットを購入したときにダイジェスト版を再読して劇場へ行ったが舞台は小説とは似て非なるもの。 作品が持っているイメージやリズムの違いがもろに歌舞伎では現れるからだろう。 それはともかく初春公演が持つまったりした時を過ごせた。
*国立劇場開場55周年記念作品