■烈々と燃え散りしあの花かんざしよ、金子文子と朴烈の物語

■作:シライケイタ,演出:金守珍,出演:水嶋カンナ,いわいのふ健ほか
■下北沢.スズナリ,2019.8.13-18
■「朴烈事件」を扱った舞台らしい。 無政府主義者朴烈とその妻金子文子が皇太子裕仁への爆弾暗殺を計画した事件である。 舞台は史実に沿って展開するが、主人公は金子文子だ。 チラシの「清水邦夫、シライケイタの女性像に金守珍が挑む!」もこれで納得。
1922年、朴烈との出会いから黒友会の結成、代々木借家での例会、著名人を集めての講演会開催、爆弾闘争による組織内不和、そして関東大震災までを描く。 文子は歌集から数句を詠み刑務所内での自殺で幕が下りる。
文子には虚無主義が混ざり合っている。 朴と同志朝鮮人は祖国独立の為に日本国家と戦う目的があった。 共に戦った文子は国家を何度倒しても同じであることに辿り着く。 日本国家が持つ闇を破壊しなければ主権人権の真の獲得は出来ないと考えた(ようにみえる)。 爆弾を誰に投げつけるかでこの違いが分かる。 朴は政府要所や百貨店などなどに、しかし文子は即座に天皇と答える。
幾つかの場面で貧しい文子の子供時代が挿入される。 彼女の骨のあるニヒリズムを育てた時代だ。 文子の子役が登場するがこれが心温まり詩情豊かにしていた。 タイトルの花簪は文子を女郎へ売るのに見栄えを良くする為に母に買ってもらったものだった。 日本の暑い夏を記憶している舞台だ。
*新宿梁山泊第67回公演
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/101736