■遠野物語、奇ッ怪其ノ参

■原作:柳田国男,演出:前川知大,出演:仲村トオル,瀬戸康史,山内圭哉,池谷のぶえ,安井順平,浜田信也,安藤輪子,石山蓮華,銀粉蝶
■世田谷パブリックシアタ,2016.10.31-11.20
■説話の一つ一つが劇中劇として演じられます。 語りと演技の計算され尽くした絡み合いが素晴らしい。 劇中劇に入ってから再び戻る時は夢から覚めたようです。 岩手の風景でしょうか? 雪の白、夏の青、流れる雲そして異形の者が現れる赤の、刻々と変化する背景の山の絵も迫力が有る。
しかし物語は分断されてしまう。 標準化を推し進める平地人イノウエと山人を見ることができるヤナギダの論争が背後で展開されるからです。 科学的説明は説得力があるし二人の議論は面白い。 しかし論争がそのまま観客の現実に結びつくので芝居の感動は分散されてしまう。
それでも論争を乗り越え遠野物語が持っている豊かな物語世界に感じ入ることができます。 山人・天狗・河童や死者の世界が身近にある日常はやはり生が充実しますね。 総合力を背景に舞台での語りの面白さを十分に味わいました。
「奇ツ怪,其ノ弐」(世田谷パブリックシアター,2011年)
*劇場、https://setagaya-pt.jp/performances/20161031toono.html