■景清

■原作:近松門左衛門,脚本:フジノサツコ,演出:森新太郎,出演:演劇集団円,橋爪功ほか
■吉祥寺シアタ,2016.11.17-27
■人形劇とは驚きです。 しかし等身大の人形はすぐに舞台に馴染みます。 顔がのっぺらぼうだからでしょう。 源頼朝の家臣たちは特に大きく作られている。 権力の移行が分かります。 人形遣いも人形から離れて主張する場面が多い。 柔軟な構造です。 ただし景清とその娘だけは人形を使いません。 景清を演ずる橋爪功は声調が柔らかい。 反してめっぽう力が強い。 悪七兵衛と言われるだけありますがこの差に面白さと違和感を覚えます。
小野姫の手紙がもとで嫉妬した阿古屋を死に追いやってしまう硬さを景清は持っている。 自身の目を潰すのも同じでしょう。 この為か人間関係の思いから来る感動は少ない。 内容より自己の厳しさを表す形が優位にみえる舞台です。
景清の娘は不思議な存在です。 景清が阿古屋の腹を割いて取り出した子であることは物語の途中で分かります。 娘は武士=もののふに殺されたと言っています。 父を訪ねた時には既に死んでいるのでしょうか? 彼女は殺されるとき緑豊かな自然に囲まれた穏やかな風景でなかったことを悔やみます。 再びの別れ際に父も武士=もののふだったことを許したのでしょうか? 幾つかの疑問を持ちながら幕が下りてしまった。 舞台背景に大きく書かれている「南無・・」は武士という固い生き方をしている景清が本当は柔らかく生きたいと願っている言葉かもしれません。
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