■夜鳴きうぐいす  ■イオランタ

■演出・美術・衣装:ヤニス・コッコス,指揮:高関健,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2021.4.4-8
□「夜鳴きうぐいす」,原作:ハンス・アンデルセン,台本・作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー,出演:三宅理恵,針生美智子,伊藤達人ほか
■・・山水画のような風景の中を舟を走らせる漁師と鶯の訪れの1幕は緊張感を引きずるがどこか長閑。 2幕はその真逆で都市風景の皇帝宮殿が現れる。 ハリボテ感が楽しい。 でもロボット鶯を操縦している仮面ライダーには驚き! 目が釘付けになり元に戻るのが大変よ。 3幕の空に漂う大凧のような死神に再び驚き! これも同じ。 漁師の声が山水に響き静けさを取り戻し幕が下りる・・。
山水と都市、漫画(仮面ライダー)と宗教(死神)の対比が尋常ではない。 しかしストラヴィンスキーのパロディはこの対比をものともしない。 さすが新音楽ね。 漁師や鶯は聴きごたえがあったがやはりこの二人は風景かな? 物語を進めるのは皇帝ただ一人、しかも歌唱の量も質も与えられない。 この作品の上演を見ないのは主役のいない構造にある。 逆に想像力でいくらでも面白くできる作品かもしれない。 
□「イオランタ」,原作:ヘンリク・ヘルツ,作曲:ピョートル・チャイコフスキー,出演:妻屋秀和,井上大聞,内山信吾ほか
■盲目とは?肉体と精神の統合とは?等々いろいろ考えさせられる舞台だった。 字幕が充実していたこともあるわね。 2015年METで観た時は強い宗教性を感じた記憶がある。 それは淡々と時間が進む強さと言ってよい。 今回はその強さは無い。 時間が乱れる感情重視にみえる。 たとえば父と娘の愛情が歌唱に表れていた。 二人の声は心に響いたわよ。 終幕の歓喜の高揚もね。 美術は「夜鳴き鶯」と違い平凡だった。 やはりチャイコフスキーだと博打ができない?
*NNTTオペラ2020シーズン作品
*2021.4.8追記・・劇場の「小さなお客様向けのあらすじ」をみて、はたして仮面ライダーや大凧死神の登場した理由が分かった。 作品が童話だったこともあらためて思い出したわよ。 小さな客は何人か見たけどスタッフもここまで気を配るとは大変ね。