■泥人魚

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:宮沢りえ,磯村勇斗,愛希れいか他
■Bnkamura・シアターコクーン,2021.12.6-29
■唐十郎作品は台詞に集中しリズムに入り込まないと弾き返されてしまうの。 この作品は入り易いと思う。 でも役者の身体と共鳴しない。 蛍一が中央で動かず科白を喋り続けることが多いから。 それは周囲の大袈裟ないつもの動きとも調和しない。 ブリキ店の床を舞台中舞台にして狭くはしたが、それでも劇場が広過ぎたせいもある。 ブリキ店周囲の美術も目障りだわ。 「風の又三郎」とは違ったアプローチが裏目に出たかな? でもこの広さは初めと終わりの海には効果があった。 それと月影小夜子とヘルパー腰田の声が快く聴こえてきたこともね。
それでも後半は一気に面白くなった。 やすみの熱演が佳境を迎えたからよ。 貯水池の水槽に何人も潜るのはいかにも唐十郎らしさがでている。 でも劇場とのマッチングが悪い。 役者の動きが再び小さくなってしまった。 「下谷万年町」の大きな池とは違い、むしろ水槽が得意の転移21を思い出してしまったわよ。 つまり今日の作品は下北沢の小劇場が似合うということね。
そして科白は唐十郎のいきなり接近してくる言葉で一杯だった。 諫早湾干拓堤防から浦上天主堂、天草四郎、人間魚雷までも、そして義眼から桜貝の鱗へと・・。 「唐十郎の集大成!」とチラシに書いてあったが戯曲としては納得。 やすみ役の宮沢りえは李麗仙の乾いた大陸系の空気を引き継いでいるわね。