■ある馬の物語

■原作:レフ・トルストイ,脚本・音楽:マルク・ロゾフスキー,詩:ユーリー・リャシェンツェフ,翻訳:堀江新二,音楽:国広和毅,演出:白井晃,出演:成河,別所哲也,小西遼生,音月桂ほか
■世田谷パブリックシアター,2023.6.21-7.9
■「戦火の馬」は等身大パペットだったが、今日は・・? 役者がそのまま馬になる! ・・的確に表現されています。 嘶きも、尻尾の動かし方も巧い。 なぜか手塚治虫を思い出してしまった。 その作品名が思い出せない。
トルストイの名も久しぶりに耳にしました。 舞台は「人生は何をもって充足したと言えるのか?」を追求している。 この問いも懐かしい。 馬のホルストメールとセルプホフスコイ侯爵の生まれ出会いそして老年から死までが語られる。 終幕、二人(馬と人ですが)の人生の充足度を比較して幕が下りる。
侯爵の生き方は現代的です。 観察は鋭く資産は有るが愛人と過ごし家族を作らない。 しかし老年は惨めな姿になる。 このような生き方があったとは驚きです。 でもロシアの伝統かもしれない。 プーシキン「エフゲニ・オネーギン」やチェーホフではよく見かける。 またホルストメールが去勢されたときに「風景が一変した!」と語るが、これは男として想像できます。 それより<所有>について疑問を呈する場面です。 所有とは何か? 人生の充足は所有に比例するのか? これを馬に語らせるところが面白い。
舞台は工事現場の様相です。 周囲に足場が組まれ天井からは裸電球が吊り下げられている。 音楽劇のため奏者も役者の位置づけです。 演出家得意の形でしょう。 親密な構造です。 ホルストメールの死が幕開けに演じられるという円環技法が嬉しいオマケです。 帰りにプログラムを購入しました。 でも歌詞が載っていなかったのは残念。 役者の写真がデカ!
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*追記・・「危機の構造」(小室直樹著)をちょうど読んでいるところでした。 50年前の本です。 所有関係を個人から企業・国家まで広げると日本人の<所有概念>は徹底して国際音痴だと書いてある。 例えば、膨大な財政赤字を多くの日本人が許していること等々・・。 財政赤字は私有財産権に対する侵犯です。