■タンホイザー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アレホ・ペレス,演出:ハンス=ペーター・レーマン,美術・衣装:オラフ・ツォンベック,出演:妻屋秀和,ステファン・グールド,ザビーナ・ツヴィラク,エグレ・シドラウスカイテ他
■新国立劇場・オペラパレス,2023.1.28-2.11
■硝子それとも金属?のような柱が何本も奈落から立ち上がってくる・・。 ヴェーヌスベルクのバレエも新国ならではの出来栄えね。 この劇場は機械的な冷たさがある。 舞台美術もこれに合わせている。 今回も2019年公演とほぼ同じかしら? 保守的な演出が続くがこれも新国らしい。
タンホイザー役ステファン・グールドを含め新国初登場のエリザベート、ヴェーヌスも安定していて物語を邪魔しない。 そして場面転換がとても巧くてリズムが崩れなかった。 時空を駆け巡る4時間はあっという間に過ぎてしまったわ。 ワーグナーは何度観ても飽きない。 キリスト教を超えようとする愛の姿を追求しているからよ。
休憩後に席へ戻る時に迷い子になる、他人席に座ってしまう、このような観客が目につく。 それだけ高齢化が進んでいるということね。 先日「歌舞伎がらがら問題」の記事を読んだがオペラは満席に近い。 能楽もほぼ満席と聞いている。 なぜ歌舞伎は空席が目立つのか? 一つはオペラや能楽が持つ歌唱・謡が歌舞伎には無いこと、二つ目は生死の描き方の違いかもしれない。 歌舞伎では社会的な人間関係に係る死でしかもエンターテインメントに近い。 オペラは原罪としての生と死、能楽は此岸彼岸の迷いを扱いどちらも個人としての切実で芸術的な生死を描く。 劇場へ足を運ぶ高齢者の死への興味は歌舞伎の世界では描かれていないと思うけど、どうかしら? 
*NNTTオペラ2023シーズン作品