■お艶の恋

■原作:谷崎潤一郎「お艶殺し」,演出:石神夏希,出演:阿部一徳,葉山陽代,たきいみき他,劇団:SPAC
■静岡芸術劇場,2023.12.2-10
■プレトークで演出の石神夏希が次の二点を話す。 「当作品の映画・芝居化が過去にあったが原作の良さを消していた。 今回は忠実に舞台に乗せた・・」そして「江戸時代の人々の魂が船上で芝居をしながら熱帯雨林へ旅をする設定にした・・」。
素朴派アンリ・ルソーの絵に登場するような熱帯植物が舞台を囲み、中央に小舟が置いてあり、・・語り手が派手な鳥姿・鳴声を発しながら飛んでくる。 朗読劇か? ドラマ・リーディングか? いや、ほぼ普通の芝居に近い・・?
ト書きは語り手が担当するが次第に役者も加わります。 原作を読んでいないので科白に集中する。 江戸下町の風景が現前してきます。 さすが谷崎潤一郎、しかし物語はまさかの連続殺人が展開されていく。 驚きです。
エログロナンセンスに近い。 ただしエロはお艶の恋人新助がズボン役のため薄められている。 真面目一途な新助がお艶の心変わりに振り回されていく惨めな姿が哀れです。 終幕に新助の役者が替わったのには混乱しました。 でも芹沢の名前を叫ぶお艶をみれば初代新助も退場するしかない。 殺人は5件(?)もあり異様だが、愛憎とカネの行き違いからくる殺しは日常の裏深さを出現させています。
原作に忠実な舞台は上出来でしたね。 緊張感を持って楽しめました。 熱帯雨林への魂の旅は目と耳が喜びました。 江戸と離れ過ぎているところが舞台の面白さでしょう。