■すみつくす

■作・演出:中村大地,出演:佐藤駿,関彩葉,辻村優子ほか,劇団:屋根裏ハイツ
■こまばアゴラ劇場,2023.12.14-25
■どこかの家庭風景をそのまま切り取って舞台に乗せているような錯覚に陥る。 役者の動きも会話も極めてリアルです。 食事場面は特に驚きです。 芝居とは思えない。 飲み食いが普段通りにおこなわれる。 料理の匂いも客席に漂ってきます。 「静かな演劇」とは違う。 もはや日常そのものです。 「静かな日常」と言ってよい。
そして一人の男が登場すると雰囲気が変わります。 その男の台詞は少し棒読みで、演技は略ジェスチャーだけで小道具は存在しなくなる。 しかも急に葬儀場面を演じ始め、それを取り仕切る。 周りの役者も彼に従う。 この後も男が登場して死者への弔いを繰り返す。 謎めいています。 でも日常には生と死が同居している。
この不気味さも何事もなかったかのように日常に吸い込まれてしまう。 彼岸と此岸の境界を描こうとした? いや、役者と非役者の境界を描きたかったのでしょう。 役者そのものの演技に衝撃を受けたからです。 演劇の原点である境界を複数の切り口から描いた作品にみえました。
*屋根裏ハイツ第8階演劇公演