■能楽堂六月「惣八」「半蔀」

 *国立能楽堂六月普及公演の□2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・惣八■出演:丸石やすし,綱谷正美,松本薫
□能・観世流・半蔀■出演:寺井榮,江崎欽次朗,茂山千之丞ほか
■国立能楽堂,2023.6.10
■「惣八(そうはち)」は就職話である。 求職者の肩書(社会的評価)と本人の得意職種がズレることはよくある。 中世日本のジョブ型雇用制度下で、このズレを持つ雇人の仕事現場が面白く描かれる。 肩書料理人の読経を本物らしくすればもっと良くなる。
「半蔀(はじとみ)」のプレトーク(林望解説)を聴く。 「和漢朗詠集」からの引用が多い為わかり難い作品になっている。 漢詩はメリハリを付ける為だが、謡(発声)はカナが基本なので時代が経つほど誤った漢字が適用されて意味が遠くなってしまった。 それは「この花広林に・・」「草花呂葉として・・」等々に見える。 また「源氏物語」夕顔の冒頭印刷も配布された。 漢詩文と同様に源氏物語からの(イメージに繋がる)引用が多い作品である。
舞台はゆっくりした時間で進む。 謡も囃子もスローテンポだ。 しかし前場はあっというまに終わってしまった。 後場は序之舞が占める。 「源氏物語」を思い浮かべながら観る作品だろう。
プログラムに「雲林院の僧が見た夢」(山中玲子著)が載っている。 ワキ僧が光源氏に重なるように描かれている場面が数か所ある。 しかし「作品全体がワキ僧の夢であり、その夢の中で彼が「源氏物語」を追体験している・・」。 面白い解釈である。 今日は林望と山中玲子に良い意味で掻き回されてしまった。