■チャンピオン

■作曲:テレンス・ブランチャード,演出:ジェイムズ・ロビンソン,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,出演:ライアン・スピード・グリーン,エリック・オーウェンズ,ラトニア・ムーア他
■新宿ピカデリー,2023.6.16-22(メトロポリタン歌劇場,2023.4.29収録)
■ボクシングをどのようにオペラに乗せるのかしら? 興味津々ね。 主人公エミール・グリフィスは実在した人なの、でも知らなかった。 1938年ヴァージン諸島の生まれで母を頼ってニューヨークに移る。 そこでボクサーとして見いだされる。 彼はゲイでもあった。
カーニバル、ボクシング、ゲイバー、・・人が集まる場面は素晴らしい。 衣装などのカラフルな色彩、人物の配置や動き、ダンスの振付等々は濃縮度が高い。 ボクシング場面はスローを取り入れたストップ・モーションで描くの。 これは巧い。 歌唱との相性が良い。 プロボクサーの助言もあり違和感が無いわね。
主人公は老人、若者、子供の3歌手一役。 老人の追懐を劇中劇にしている。 この構造も巧い! 老人は認知症なの。 歌手エリック・オーウェンズはこの役を抑制して歌うから本物に近い。 2年前の「ポギーとペス」では体調不良で酷かったが今日の歌唱は老いの味がでていたわよ。 でも若者役ライアン・スピード・グリーンは特徴の無い声ね。 ボクサー体格へ調整したせいかな? そして指揮者はプッチーニを話題にしたが、もはやジャズ風オペラと言ってよい。
若者エミールは対戦相手ベニー・パレットを試合で死なせてしまう。 老人になってもその罪悪感は消えない。 終幕、老人エミールはパレットの息子に出会い罪から解放される・・。 でも彼の苦悩はそれだけでは無い。 「・・ベニーの件を世界は許してくれたが、ゲイということで世界は許してくれなかった」。 彼の言葉よ。 表裏ある贖罪を表裏ある人生で描いていた。 この素晴らしい新作ができたのはMET総合力の賜物だわ。
*METライブビューイング2022作品
*「ブログ検索🔍」に入れる語句は、ジェイムス・ロビンソン ・・検索結果は3舞台.