■オセロー

■作:W・シェイクスピア,演出:クリント・ディアー,出演:ジャイルズ・テレラ,ロージー・マキューアン,ポール・ヒルトン他
■TOHOシネマズ日本橋,2023.6.23-(リトルトン劇場,2023年収録)
■ナショナル・シアタのシェイクスピアは歯切れが良くて気持ちがいい。 いつもそうです。 今回はもう一つの驚きがある。 人種差別や女性差別があからさまに語られる。 現代的にアレンジしている?ようです。 でもキャシオのどんちゃん騒ぎ以降はいつものオセロに近づいていきます。
幕間に演出家たちのトークが入る。 「人種差別や女性増悪は社会構造として組み込まれている」「イアゴもその犠牲者」「デズデモーナとオセロがキスをする場面では見兼ねて席を立つ客がいたり、銃を乱射する者もいた」・・。 出席者は「オセロー」の激しさを語っていたが、終幕でオセロの質問にイアゴが無言で返すのも社会構造のため答えられないのでしょうか?
舞台は三方が階段に囲まれていて野外劇場にみえる。 暗いなか激しい照明で照らされると牢獄のようです、生舞台をみないと何とも言えないが。 イアゴが内心を語る場面が何度も入る。 階段に座っている彼の心の観客が自身イアゴに賛同を送ります。 オセロの内面表現は単純です。 このためイアゴはオセロ以上に目立ちます。
外国版シェイクスピアは差別をはっきり描き出しますね。 これも歯切れの良さの一つです。 日本版は差別に修飾物が纏わりつく。 どちらにしても「オセロー」の面白さは変わりません。
*NTLナショナル・シアター・ライブ2023年作品