■人形の家

■作:H・イプセン,訳:毛利三彌, 演出:宮城聰,出演:たきいみき,bable,加藤幸夫ほか,劇団SPAC
■静岡芸術劇場,2023.2.11-3.12
■静かさのある幕開けで始まる。 いつもの演奏が無いから? ヘルメルの狂気を孕んだ喜劇的演技と音無しが混ざり合い不思議な緊張が出現します。 この劇場で観たG・ラヴォータンの「小市民の結婚」を思い出してしまいました。 そこにノーラの精神的呆け気味でネアカ的演技が少しだけ加わり、男女代表のような夫婦が出現します。
舞台は1935年(昭和10年)の日本に置き換えている。 演出家も言っています。 当時もそして現代も、作品に一番近い国は日本である。 現政府の女性人権や少子化対策も結果的に「人形の家」を目指している。 それは政治に儒教や天皇制を遠巻きに絡ませようとしているからです。 政治家が統一教会・家庭連合と縁が切れないのもこれに繋がる。
美術や衣装、音響や照明は芸が細かい。 ドアの開け閉めの音は<閉ざされた家>を意識させます。 暗い居間と動かない役者はノーラの見えない世界でしょう。 佳境に入ると床は揺れ動き剝がれ出し、卓袱台は天井に跳ねる。
でもノーラの終幕での決意に驚きはない、19世紀末はセンセーショナルだったようですが。 この作品は何度か観ていますが、今回のようにシュール的リアリズムに基礎を置いた舞台は少ない。 面白く観ることができて、久しぶりに作品の本質にも近づけました。
*SPAC2022秋春シーズン作品