■能楽堂三月「左近三郎」「采女」

*国立能楽堂定例公演の□2作品を観る.
□狂言・大蔵流・左近三郎(さこのさむろう)■出演:山本則重,山本則秀
□能・観世流・采女-美奈保之伝-(うねめ-みなほのでん-)■出演:観世清和,森常好,山本東次郎ほか
■国立能楽堂,2023.3.8
■「采女」前場は満足度200%だ。 前シテが橋掛かりを歩く、そして舞台に立つ姿、面と衣装の絶妙な均衡、テンポも良し声も通っている。 その緊張感がワキへ、そして囃子・地謡に伝わっていく。 劇的と言ってよい。 久しぶりに痺れてしまった。 観世清和の舞台は見逃せない。 なぜ小書「美奈保之伝」を採用したのか? 観ていて分かった。 小書きで余分な場面を省略し集中力を上げる為だ。
後場に入ると緊張は続くが序の舞が長い。 これについていけない。 緊張疲労が出てしまった。 夢遊病のごとく舞を眺めていたが、観世流の総力が現れていたと思う。
面は前シテが「まさかり」、後場は「小夜姫(さよひめ)」にかわる。 観世元章がこの小書を創案したようだが、やはり世阿弥の世界が充満している。 緊張の中に弛緩が漂う面白い舞台だった。
*追記・・NHKのイリ・キリアン特集で「詩編交響曲」「ベラ・フィギュラ」を観たが、以降の「小さな死」「間奏曲」「6つの踊り」は配信期限切れで見逃してしまった。 「ベラ・フィギュラ」は記憶に残る良い作品だった。 もっと早くに観始めればよかった。